「まず助産所の嘱託医との連携を」-スーパー総合、助産所からの搬送ケース
助産所での分娩を希望する妊婦がいる一方で、医師がいない助産所での分娩は一定のリスクを抱えることにもなる。都のスーパー総合周産期センターでの受け入れが必要になったケースでも、助産所からの搬送があった。(熊田梨恵)
助産所では医師がいなくても、正常分娩であれば助産師がお産を取り扱うことができる。助産師単独では医療行為を行えないため、助産所には嘱託産科医と嘱託医療機関との連携が義務付けられている。ただ、助産所と医療機関の在り方は助産所によって差があるとの声がある。綿密な連携の下、医療が必要になった妊婦が適切に医療機関を受診できているケースもあれば、連携がうまくいっておらず、大量出血や胎児仮死など重症な状態になってから周産期母子医療センターに搬送されるようなケースもあると言われる。
日本産科婦人科医会の報告書によると、2005年にあった助産所からの搬送301件(うち54件は新生児搬送)の中で、救命処置が必要だったなどの重傷ケースが29.9%あった。妊婦が死亡したり後遺症が残ったりする状態になったのは9.7%。新生児搬送で救命処置が必要だったのは26.0%あり、死亡や後遺症が残る状態などになったのは26.4%だった。嘱託医を介さない搬送が約8割を占めた。
関東圏の周産期母子医療センターの産婦人科医は自身が経験したケースを語る。「助産所で破水して全開した後ほとんど一日放置されていて、胎児仮死になって運ばれてきたケースがあった。羊水もどろどろの状態で、緊急帝王切開したが赤ちゃんは脳性麻痺になった。なぜそうなる前に連絡しなかったのか。こういうケースは表に出ないので、最後に受けたセンターが患者や家族からも悪者にされてしまう。助産所のリスクについて妊婦に知らせていくべきだと思うし、妊婦も『自然のお産』というような"助産所信仰"に惑わされないで責任を持って自分の出産を考えてほしい。助産所もきちんとしているところはあるのだから、もっと情報開示して透明化されてほしい」と話す。
国立成育医療センター周産期診療部の久保隆彦産科医長は「多量出血で助産所からセンターに搬送されるというようなことはよくあることで、どんな状況でもリスクはある。日本の妊産婦は250人に1人は死亡に至る可能性がある。これは国際的に見ても低い割合で、日本のお産はとても安全。だが、それを高いと捉えるか低いと捉えるかは本人次第」と話す。