「スーパー総合」受け入れケース、現在はなし
東京都が3月から開始している、24時間重篤な症状の妊婦を受け入れる「スーパー総合周産期センター」について、該当する救急搬送ケースがこれまでは発生していないことが分かった。都は21日に開く周産期医療協議会で、センターの今後の運用について見直しも含めた議論に着手する。(熊田梨恵)
「スーパー総合周産期センター」は、脳や心臓に重篤な疾患があるなど緊急の救命処置が必要な妊婦に限定して24時間体制で受け入れる施設で、日赤医療センター(渋谷区)、昭和大病院(品川区)、日大医学部附属板橋病院(板橋区)の3病院が指定を受けて輪番を敷いている。地域の周産期医療ネットワークでの受け入れが難しい場合、かかりつけ医などが東京消防庁を通じて受け入れを要請する仕組みで、3月25日からスタートした。
東京都などによると、これまで「スーパー」としての受け入れに該当するケースはなかった。都の担当者は、「病院からは『スーパー総合』があるという安心感があってかその前の病院ですべて受け入れてもらえていると聞いている。そうなると、行政側からすれば実績がないなら予算を付けなくてもよいかという考えにならざるを得ないが、『スーパー』は必要なものだからそうはいかないだろうし、これでなくなって元の木阿弥になってはならないと思う。『必要』ということをどうエビデンスを取っていくかということが、医療は難しい」と話している。
都は5月21日に、このスーパー総合周産期センターの設置を決めた周産期医療協議会の初会合を開催する。同協議会は都が毎年度2,3回の頻度で開催しているもので、都内の周産期医療体制の整備について議論する場。これまでは都が敷いている周産期医療ネットワークについての報告などが主だったが、昨年度は脳出血を起こした妊婦が8つの病院から受け入れを断られるという問題が起こったため、イレギュラーに5回の会合を開いてスーパーセンターの設置などを議論した。このため、今年度の協議会は都の周産期医療体制に新しく加わったスーパーセンターの運用状況や、既にある総合と地域の周産期母子医療センター、母体搬送の現状などを検証、評価していく必要がある。周産期医療の需要と供給に関するデータなどを出し、ネットワーク体制の運用に改善が必要な場合は必要に応じた見直しも図っていく。
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