全医連が各政党に公開質問状送付-医療費などの政策について回答求める
全国医師連盟(全医連、黒川衛代表)は8月6日、30日に投開票される衆院選に向け、各政党の医療政策を問う公開質問状を送付した。医療費や医師の労働環境、アクセス制限、医療事故調査委員会などに関する回答を求めており、17日には全医連のホームページ上で結果を公表する。(熊田梨恵)
自民、民主、公明、共産、社民、国民新、改革クラブ、新党日本の8政党に同日付で送付した。次の緊急提言の内容に対する回答を求めている。
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【持続可能な医療体制を実現するための全国医師連盟の五つの緊急提言】
国際的に評価の高い日本の医療は、崩壊のまっただ中にあります。そして、医療崩壊は、日本社会に様々な悪影響を及ぼします。医療現場が疲弊する一方で、医療制度の矛盾は、長年放置されてきました。日本の医療は直ちに修復されなければなりません。全国医師連盟は、ここに持続可能な医療体制を実現するための緊急提言を発表します。
1.医療費を先進国並みに増額し、医療を大幅な雇用創出の場にすべきです。保険診療の診療報酬は、医療関連職の技術を含め人的資源にかかる費用を重視して、緻密なコストの積み上げで決定することと、その過程を透明化することが大切です。
2.医療の需要は、現場の対応能力の限界をはるかに超えています。現場の医師がこれ以上疲弊しないために、国はこの問題を直視し、急性期医療機関への受診を適正化するなど、医療の需要を制限する緊急避難的な施策を真剣に検討するべきです。
3.医療従事者が過剰労働で医療を支えている現状では、医療の安全は守られません。国と医療機関の開設者は、病床あたりの勤務医師数を大幅に増員するよう努力し、労働環境の適法化に真剣に取り組む必要があります。
4.医師の計画配置は、過酷な労働環境が放置されたままでは不可能です。このような医療の現場に医師を強制的に配置することは、医師を消耗させ、結果的に医師の診療能力の低下を、ひいては医療供給の減少をまねきます。
5.医療の場で不幸な事態が起こったとき、捜査機関の介入に先立ち、刑事手続に付すことの相当性を検討する調査委員会の設置が必要です。また、医療事故補償基金を創設し、患者(家族)救済を図る必要があります。全国医師連盟の緊急提言は、逼迫した医療現場からの切実な訴えです。医療崩壊は、旧来の方法では解決できず、緊急に抜本的な対策をとらなければなりません。
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黒川代表は質問状の内容について「医療の需要と供給、予算、医療安全調査委員会の制度に関する医療法や医師法など、『お金、法律、人』について聞きたかった。各政党はあれもこれもやるというのではなく、どこまで深く考えているか。逼迫した職場からの声を届けたいと思った」と話す。全医連内部で行ったアンケート調査では、会員820人の3分の2が「政権交代に期待している」と回答したという。
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