168か所の公的病院が「過労死ライン」の36協定を締結-全国医師ユニオン調査
大学附属病院や国公立病院など地域の拠点となる国内1549か所の病院のうち168か所が、「過労死ライン」とされる月80時間以上の残業を認める36協定を結んでいたことが22日、全国医師ユニオン(植山直人代表)の調査で分かった。協定を締結する職種に医師が含まれていないものもあることなどから、ユニオンは「全国の公的な医療機関の多くに労働基準法違反がある」との声明を発表。政府与党や厚生労働省に対し、勤務医の労働環境改善や、労基法を順守する医療機関を評価するような診療報酬の創設を求めた。(熊田梨恵)
ユニオンの調査結果は下表の通り。
調査は国内の病院の36協定の内容を調べるため、大学附属病院や国公立、労災、赤十字、済生会、JA厚生連、国保や一部の民間病院など、地域医療の拠点を担う50床以上の病院を対象に、2008年末から行われた。各病院を管轄する労基署に対し、直近一年半の間に締結された36協定について開示請求し、7割を占める1091病院の情報を得た。
36協定の内容で、一日の最大残業時間で長かったものには、「20時間」(大阪)、「16時間」(秋田、佐賀)、「15.5時間」(東京、神奈川、静岡)などがあった。一か月の最大残業時間では、「200時間」(愛知)、「125時間」(山梨)、「120時間」(山形、千葉、東京、滋賀)など。1年間の最大残業時間では「1470時間」(愛知)「1200時間」(東京)「1080時間」(長野)などだった。
「過労死ライン」とされる月80時間以上の残業を認める協定を結んでいた病院は41都道府県に168か所あった。最も多かったのは東京で25か所、次に兵庫14か所、愛知12か所だった。
協定が開示されなかった458病院についてユニオン側は、直近1年半で協定が締結されなかったとの見方を示しており、「36協定はその趣旨から毎年締結することが基本。1年半の間に36協定を締結していない病院が30%もみられることは大きな問題」とした。また、協定の内容について申し立てがない限り、自動的に更新することを認める記載が「月120時間の時間外労働を認めている協定に多くみられる」として問題視している。
また、医師が職種として含まれていない協定があったことを「極めて重大な違法行為」と批判した。さらに、328病院の協定は職種欄が黒塗りされており、「個人情報の公開と全く関係なく、情報公開の趣旨に反する」とした。
このほか、月の残業を「45時間以下」とする病院が594病院あったことについて、「日本では医師の交代制勤務がほとんどみられず、多くの病院の当直業務が32時間連続労働を前提としている現状を考えれば、45時間以内という協定内容は全く守られていない」との見解を示している。