医師の労働環境を改善し、医療崩壊を打開したい-植山直人全国医師ユニオン代表インタビュー
インタビュー 植山直人全国医師ユニオン代表(老人保健施設みぬま施設長)
「医療崩壊の中心は、勤務医の過重労働など医師に関する問題。地域住民の理解を得て、ともに医療を正常化していきたい」-。国内に初めて誕生した、医師が個人加入する労働組合「全国医師ユニオン」が設立して約3か月が経った。まだ手探りの活動が続く中、医師の労働組合という存在が患者の利益につながっていく可能性を植山直人代表に聞いた。(熊田梨恵)
――ユニオンが発足して3か月が経ちますね。医師が個人加入する労組はこれまでなかったこともあり、活動は困難が予想されていましたが、活動状況などはその後はいかがですか。
最初は「医師の労働組合なんてなんだ」と思われるかと思っていましたが、みなさんの目が以外と温かい。活動に協力したいと言ってくれる弁護士の方もおられますし、寄付もいただいています。自治労や医労連、東京管理職組合や日乗連(パイロットの組合)など他の労組の方とも情報交換するなどよい関係が築けています。勉強会を開催したり、シンポジウムに呼ばれて講演したりすることもあります。会員はまだ18人と少ないですが、今はまだ実際に活動していくための地盤固めの段階です。
――なかなか会員が集まりにくい状況のようですね。目標を1年間で最低300人として、まず全国医師連盟(全医連)の会員から呼び掛けていくということでしたが。
会員になっておられる方は、意外に副院長など管理職クラスの方が多いのです。みなさん「何か協力できることがあれば」と言って下さいます。ユニオンへの問い合わせも中間管理職の方から院内の労組を作るにあたっての相談があったりします。やはり現場で最も忙しく働いている勤務医にはユニオンの話も伝わらないし、実際に活動するような時間もないでしょう。このため、会の具体的な活動として「医師の労働と権利についての基礎知識(仮タイトル)」を9月下旬には出版、販売する予定です。こうした冊子を休憩室などに置いてもらって見てもらい、興味を持ってもらうことから始めていきたいと思います。実際に現場で働いている方は労働基準法など知らないと思いますから。やはり、院内に支部を作るような形にしていかなければ広がっていかないと思います。
――何か提言などの活動を具体的にしていく予定はありますか。
まだ提言とまではいきませんが、11月には定期大会を開き、日乗連や、過労死弁護団の方々とシンポジウムを行う予定です。また、全医連で国内の病院の36協定(時間外や休日の労働に関する協定)に関する調査を実施しました。いわゆる過労死ラインと言われる1ヶ月の時間外労働80時間を超えた120時間の協定を結んでいるようなところがありましたが、労働基準局側がどうしてこのような協定を認めたのかということは問うていく必要があると思います。こういう実態調査から現状を訴えていきたいと思います。
このほか、ユニオンが軌道に乗れば医師の労働に関する調査研究活動も行っていきたいと考えています。医学教育の中で医師の労働問題が扱われることも重要だと思いますので、そういうことも視野に入れていきたいと思っています。