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ニュース〜医療の今がわかる

入院期間の評価、「病床規模の差はほとんどない」 ─ 厚労省

■ 「新たな機能評価係数を入れる理由は投入量分布だけか」 ─ 対馬委員
 

[対馬忠明委員(健保連専務理事)]
 (資料)1ページ(診断群分類点数表による評価)について。

 これは、包括化するとある程度ばらつきが出てきて、「平均値だけではなかなか推し量れないよ」ということ。これはDPCに限らず、あらゆる事象において、こういったことが生じると思う。

 それで......、ちょっと、この(資料の)1(診断群分類点数表による評価)と2(各指標の特徴)との関係がよく分からない。1は、(診断群分類点数表による)評価について、2は各指標の特徴について。

 DPCに「新たな機能評価係数」を入れるのが、この(医療資源の投入量のばらつき)理由1つだけなのか。投入量の分布だけ......。たぶん、そうではないだろうと思う。「(新たな)機能評価係数」を入れることの理由付けは、「例えばこういうことが起こるので、こういうことへの対応を図らなくてはならない」ということであればよく分かるが、「これ(医療資源の投入量のばらつき)があるから機能評価係数をつくる」というのは、これまでの議論とちょっと違う。

 これまでの議論では、確かに前年度の実績保証的な意味合いが強かったけれども、それ以外にもいろいろな機能が紛れ込んでいたので、「調整係数」を廃止するとそこが抜けるので、その対応が必要だということ。必ずしも、「平均値とちょっと乖離しているところが問題だ」という議論ではなかったと思う。その質問が1点。

 それから2点目だが、この「効率性指数」。この、「ひげ」みたいなグラフが書いてあるが......。これもちょっとよく分からない。「効率性指数」というのは、平均値を見ると、全体的に「1.00」よりも下回っているように見える。400床以上がちょうど「1.00」ぐらい。それ以外は、全部下回っているように見えるが、これはどういうことを意味しているのか、よく分からない。

 あと、これは「今後の議論」というでよろしいのかもしれないが、ちょっと気になるのは、例えば「がん専門病院」についてお話しされたが、(がん専門病院は)「効率性指数」の平均値を取っても、1.20弱。

 それから、「複雑性指数」の平均値で「がん専門病院」を見ると、1.30弱ぐらいだろうか。ですから、これはたまたまかもしれないが、こういった形で「新たな機能評価係数」の係数を掛けていくと、お互いに打ち消し合ったり相乗化されたりするが、下手をすると、掛け算などをすると「2.00」なんていう数字になっていく懸念もある。

 そうすると、今の「調整係数」というのは、ご承知の通り、「1.00」を平均にすると、プラスマイナスせいぜい2割あるかないかということなので、この辺り、最終的にどういった形で収束されるのか。単純に差異だけを掛け算していくと、とんでもない数値になりかねないという辺りもよく見ておく必要があるだろう。

 特に、それを何年間かかけて「調整係数」との差異を補正していく。しかも、必ずしもこの(次期改定で導入妥当と分科会が判断した)2つ3つ4つの項目だけではなくて、場合によっては、今検討中で、いずれ(新たな機能評価係数の)対象にするかもしれない項目もあるので、非常に複雑になってくる。その辺り、よく注意が必要しながらやっていかなくちゃいけない。多少、感想的なこともあるが......。

[遠藤久夫委員長(学習院大経済学部教授、中医協会長)]
 ありがとうございます。それでは、事務局(保険局医療課)、お願いいたします。

[保険局医療課・宇都宮啓企画官]
 はい、医療課企画官でございます。まず第1点目。すみません、私、説明をはしょってしまったが、「参考資料」(DPCにおける今後の課題)がある。これは、以前(2008年12月17日の基本問題小委員会で)お出しした資料。

(参考資料)調整係数の役割について
 調整係数の役割に係るこれまでの議論の中で、調整係数はDPC制度の円滑導入という観点から設定されたものであり、
 (1) 前年度並の収入確保
 (2) 重症患者への対応能力・高度医療の提供能力等、
    現在の機能評価係数のみでは対応できていない病院機能の評価
という役割を含んでいると考えられる。

新たな「機能評価係数」の検討に当たって(案)
 基本方針
 1 調整係数が果たしていた役割のうち、前記「(1)前年度並の収入確保」については廃止することとし、「(2)現在の機能評価係数のみでは対応できていない病院機能の評価」については、新たな「機能評価係数」として評価できるものを検討する。
 2 既にDPCで評価されている項目全体を整理し、既存の評価のあり方の見直しも含めて、新たな「機能評価係数」について検討する。
 3 調整係数の廃止に際しては、新たな「機能評価係数」の検討結果を踏まえて、激変緩和を目的とした段階的廃止の有無やその方法について検討する。(以上、08年12月17日の基本問題小委員会資料より)

 対馬委員ご指摘のように、「調整係数」の役割として、前年度並みの収入確保と、それ以外の機能を保証するという部分があった。

 下線で引いてあるが、「前年度並の収入確保」については廃止する」が、「現在の機能評価係数のみでは対応できていない病院機能の評価については、新たな機能評価係数として評価できるものを検討する」ということを(基本問題小委員会で)決めていただいた。

 そして、参考資料の2にあるように、(新たな機能評価係数に関する)7つの基本的な考え方(08年12月17日の基本問題小委員会で了承済み)がある。

 この中で、例えば、「医療の透明化・効率化・標準化・質の向上等、患者の利点(医療全体の質の向上)が期待できる係数を検討すべき」とか、「社会的に求められている機能・役割を重視」、あるいは「地域医療への貢献という視点」などを含めて検討せよということで、それはまさにその通り。

 ▼ 厚労省が原案を書いて、それを中医協がただ追認しているだけなのに、「中医協から指示されてしている」と演出するのはやめたらどうか。なお、ここまでは過去の資料の紹介。都合の悪い質問には過去の資料を示し、「ここに書いてある」と返した後、ちょっと言葉を濁すというのが定番の答弁手法。

 今回、お示しさせていただいたのは、つまり......、まあその......、場合によっては、病院によっては、先ほどの分布図の右側の(赤字になる)患者さんを抱えざるを得ない病院もあって、そういう部分も評価するような仕組みも必要ではないかということ。
 それから、「より点数表を精緻に」と申し上げても、この分布......。これは1つの分岐だが、それを例えば、2つ3つと、限りなく分けていくのは不可能ではないかと、そういったことでお示しさせていただいていたということ。

 ▼ 回答になっていない。実際の医療資源の投入量とDPC点数との間に乖離があるということは「調整係数の廃止」には関係するが、「新たな機能評価係数」の導入には直接関係しない。もし、関係するとするなら、「調整係数の廃止」と「新たな機能評価係数の導入」を相関させないとおかしいが、厚労省は、両者を切り離す立場。つまり、「調整係数の廃止」によって生まれる医療費と、「新たな機能評価係数」に充てられる医療費を相関させてしまうと医療費を抑制できないので、両者を切り離して説明しようとしている。今回の資料でも、「それ(調整係数)に変わる新たな機能評価係数」という表現を用いている。
 なお、厚労省は次のような説明をよくするが、論理破綻している。すなわち、「救急などで入院初期に赤字になるケースがある」→しかし、「これまでは調整係数で補正(補填)されていた」→しかし、「調整係数を来年度から徐々に廃止する」→「補填されなくなるので、入院初期の点数を引き上げる(実際の医療資源の投入量に合わせる)」という理屈。確かにこれだけなら納得できるが、「入院期間Ⅰ」の点数を引き上げる一方で、「入院期間Ⅱ」以降の点数を引き下げるので、入院初期の引き上げ分は相殺されて消えてしまうだろう。これに加えて、「調整係数」の廃止が乗っかるので、多くの場合はマイナスになるはず。それなのに、厚労省は「調整係数の廃止によるマイナス分は、医療資源の投入量に合わせる見直しで対応(補填)する」などと説明しているから、空いた口がふさがらない。また、厚労省は「調整係数」の廃止による赤字分を「補填する」と言わず、「補正する」と表現しているのがずるいところ。

 それから、2番目の質問も「効率性指数」について、(全体的な平均値が)「1.00」を下回っているように見えるということだが、これについては、平均値ではなくて、この(箱ひげ図の)太い棒が中央値を示しているので、ちょっとそれは違う。

 それから、3つ目の質問の「ここに示されている数値をそのまま係数にするのは違うのではないか」ということだが、それはその通りで、あくまでも「現時点ではこういった評価の指標が考えられる」ということで示させていただいている。

 これについて、実際の点数などについては当然、今後の改定率などが決まって、全体の医療費の枠組みが決まってから、その中で数値を決めていくのだから、この数字がそのまま係数になるという意味ではない。これはあくまでも最後に調整するということ。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 対馬委員、どうぞ。

[対馬委員(健保連)]
 そこはよく分かった。先ほど、ちょっと聞き忘れたが、(資料)2ページ目の合併症の問題。

(2) 病院毎の医療資源の投入量の差異
 上記のように、医療資源の投入量の差異が生じる原因には、実施される医療の効率性のほか、合併症の有無や治療法の違い、患者特性の違い等が考えられる。
 このため、合併症等で医療資源の投入量が多くならざるを得ない患者を多く受け入れている病院では、DPCにおいては採算が悪くなりやすい。
 確か、(診断群分類の)ツリーの中では「手術あり」「なし」とか、合併症も一応ツリーとして分けているはずだと思うので、「合併症の有無や」と書くと、「それでは合併症は今まで見ていなかったのか」と誤解されかねないと思う。

 正確に言うと、「合併症についても包括評価の中で見ているが見切れない部分がある」という理解だと思う。それでよろしいのかどうか。

 ▼ 最近の対馬委員は、診療報酬の全体的な議論ができるような資料の提示を求める一方で、細かい表現などに関する指摘が目立つ。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 事務局(保険局医療課)、どうぞ。

[医療課・宇都宮企画官]
 医療課企画官でございます。その通りでございます。

 先ほど、口頭では申し上げたが、通常のある病気に対して比較的起こり得る合併症については、大体ツリーの中で手当てされているケースが多いが、それ以外に、高齢者ならある基礎疾患があって、通常であれば合併しないようなケースでも、そういった基礎疾患が合併しているという形で出てしまうとか、そういった通常の合併症とは違うようなもの、どうしてもツリーで見切れないもの等についてをこちらで答えさせていただいているところ。

[遠藤委員長(中医協会長)]
 対馬委員、よろしいだろうか。それでは、藤原委員、どうぞ。


 【目次】
 P2 → 「病床規模による差はほとんどない」 ─ 厚労省
 P3 → 「新たな機能評価係数を入れる理由は投入量分布だけか」 ─ 対馬委員(支払側)
 P4 → 「二重評価に一定のクライテリアがない」 ─ 藤原委員(日医)
 P5 → 「算定式との関係が私の頭では理解しにくい」 ─ 牛丸委員(公益委員)
 P6 → 「新たな機能評価係数の設定と改めて書いてあるが」 ─ 西澤委員(全日病)

 P6 → 「新たな機能評価係数の設定と改めて書いてあるが」 ─ 西澤委員(全日病)


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