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ニュース〜医療の今がわかる

情報の洪水 悪意か故意か 一つ一つ見極め必要 がんセンターシンポ


 鈴木
「おっしゃる通りだと思うし、恐らく9割位の方もそうだなと思っているだろう。しかし結局新型インフルエンザも学校で接種できないかと検討、組閣前の政調副会長の時に検討したけれど難しいということになって、それは日本の今のあり方が全部そうなんだけれど、受けたくない家庭の子女がいます、と、学校で皆で受けることにするとプレッシャーがかかって受けたくない家庭の子女の人権が、と、こういう話になってしまう。日本の民主主義が陥っているほとんどの問題がこの構造だ。マジョリティの便益と、多様な考え方があることは悪くないが、その多様な意見の行使の結果として誰も決めることができず決めないまま時間切れになってしまう。ここをどう突破するのか。

 現状、日本のメディアにも日本の行政にも日本の国会にも統計学がない。それより分かりやすいエピソード、物語が必要とされる。現実の社会はもっと複雑で微妙で、言うなれば51対49の拮抗するものの中で判断するようなことが必要とされるのだろう。それでも最後にはやはり決めなければいけない。そういうものなんだということが十分にシェアされないこと、そこに悩んでいる。

 医学はサイエンスで、医療はサイエンスだけに限らないかもしれないが、しかし少なくとも医学界にはサイエンスのリテラシーある人が集まっていると信じている。政策決定に関して試行錯誤していかなければならない、そのトライアルに対してサポートする人がいなければ誰もこのようなバカげたトライをしなくなる。私自身はご縁のあった仕事でこのトライをしていきたいとは考えている。同時にありとあらゆる人が努力できる可能性がある。東大が入試にはしかの接種を義務付けた。こういう積み重ねが大切なんだろう。東大の取り組みに敬意を払って評価しつつ、同時にレビューもする。そういうことを繰り返し繰り返しやることに尽きるだろう」

 足立
「厚生労働省は義務接種というのは、なかなか言わない。国民に努力義務を課すのはハードルが高いと言う。私なりには、これまで輸入ワクチンは安全性に疑問があると表現されていたので、そうじゃないだろう書き直せ、と。有効性と安全性が国産と違うかもしれないと書くのが正確。輸入ワクチンにはアジュバントが入っているのでひょっとすると1回接種で済む可能性もある。それは重要なメリットだ。プラスもマイナスも両面について情報公開して国民に情報共有してもらうことが大切だと思う。

 訴訟提起権の制限に関しては、無条件補償するには必ず入れないとダメだというのが民主党の考え方だ。訴訟をするか補償を受けるか選択できることにすれば、制限しても問題ない。その場合、訴訟をしなくても実質的な補償が行われるためには、相当額の給付を速やかにということが条件になるだろう。その方式で米国やフランスでも訴訟の制限が行われている。この方向で見直していかない限りワクチンギャップは解消できない」

 VPDを知って子どもを守ろうの会・中谷
「民主党のマニフェストに肺炎球菌ワクチンの接種年齢拡大というのがあった。これは乳幼児の7価ワクチンも含まれるのか」

 足立
「もちろん7価も含まれる。高齢者の方と両方だ。要望の中で定期接種化というのがあったが、最初からはハードルが高い。国が助成をしていかに自己負担を少なく出来るかというところからだろう。民主党がマニフェストに書いたワクチンとはヒトパピローマウイルスとヒブと肺炎球菌ワクチンだ」

 土屋
「話は尽きないが時間が来たようだ。私どもの領域では5月に米国臨床腫瘍学会ASCOというのがある。毎年、大勢が行っているのだが、ことしはちょうどインフル騒動に重なってしまった。感染制御の専門家もウチにはいるので、その意見も聴いて、行って構わないという対応にした。ところが、あっちこっちのがんセンターや大学病院から『お宅はどうするんだ』と次々に問い合わせが来てビックリした。自分のところで判断しようという気がない。某大学に至っては、ホームページ上に帰国後10日は出てくることまかりならんと堂々と書いていた。

 私どもの所では、まず自分たちでしっかりと情報を集めて自分たちで考える、そのうえで本省と協議をし、もし助けていただくことが必要であれば国会議員にお願いする。自分の足で動くので、もし風当たりが強い時にはご支援いただきたい」

(了)

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