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ニュース〜医療の今がわかる

「わが国の医療費の水準と診療報酬」 ─ 中医協・遠藤会長の講演 (1)

■ 医療費の負担について明確な議論が十分されてこなかった


 次はですね、しばしば出てきます「外国との比較」です。(中略。総医療支出の対GDP比の推移について、OECD加盟諸国との比較を示した上で、日本の医療費の伸び率が低いことを指摘)

 要するに、もともと日本のGDP当たりの医療費というのは低いわけですが、その伸び率も低いということが言えるのではないかと思います。それは、さまざまな(政策で)医療費の上昇に対する抑制をかけてきたことの結果だろうと思います。

 次のこれ(スライド)は......、これは余計かもしれませんが、先ほどは医療費のGDPに対する割合が80年からどう変化したかを見たものですが、これはGDPの割合ではなくて実質的にどれぐらい(医療費が)増えてきたか。(中略。OECD加盟諸国と比べて日本は低い水準にあることを説明)

 ということで、医療の過少が問題になっている。とりわけ、2000年に入ってからの医療費の増加の抑制というのは、さまざまな形で医療の現場、あるいは患者さんに対して影響を与えているんだろうと私は理解しています。
 やはりその原因というのは、何度も申し上げますが、きちんとした医療提供体制の在りようというものが議論されて、そのために必要な医療費はどのぐらいなのか、それを人々がどれぐらい負担しなければいけないのかという明確な議論が十分されてこなかったということが大前提だと思います。

 そうでなければ、その辺がはっきりしていなければ、とりわけ財政当局は無秩序に増えてしまうであろう医療費を抑制しようと考えるのは当然の話でありますし、また所管官庁であります厚生労働省はその枠の中で、できるだけ医療の質やアクセスに影響を及ぼさないような方策をめぐらせながら、できるだけ医療費の増加を枠の中で抑えるのは、財政政策を行う上では当然のことでありますので、そうしてきたということだと思うんですね。

 そういう意味で、もっと明確に医療の制度はどうあるべきか、そのためにはどう費用が掛かるのかということを国民に問うて、その負担についての合意を形成するということをしてこなかったことが、結果的にはこうなってきているんだろうと思っています。
 これが大体、医療の過少についてのお話であります。次は、中医協の話をします。 → (2)に続く
 

【目次】
 P2 → 国民所得と医療費の伸び率をリンケージさせる政策は限界
 P3 → 明確な医療ビジョンが特になかった
 P4 → 社会保障費の配分という点からも、医療は割を食っている
 P5 → 医療費の負担について明確な議論が十分されてこなかった

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