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ニュース〜医療の今がわかる

「日本におけるワクチン・ギャップ」


 ちょっと話は外れるが、ヒブワクチンがようやく発売されたのだけれど、全く数が足りない。3ヵ月待ち、6ヵ月待ちがザラで、場所によっては1年待ちということもあるやに聞く。そうなると待っている間にかかってしまう子供が出てくることになる。メーカーも頑張ってくれて徐々に供給量は増えつつあるが、しかしそれでも絶対数が足りないので別の問題が出てきている。

 ヒブワクチンは0歳時に3回、1歳時に追加で1回接種する。到着したワクチンを追加の1歳に使うのか、まっさらな0歳に使うのか、その判断はメーカーと臨床の先生に丸投げされている。ワクチンが国策ならば厚生労働省が指針を出すべきだ。

 そもそも社会システムを守るためと言いながら任意接種で、その費用負担はヒブが3万円、肺炎球菌が3万円、女の子でHPVも打つなら計10万円になる。ちなみに米国では、小児に肺炎球菌ワクチンを接種すると高齢者の肺炎罹患が下がるというデータも出ている。

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  手持ちの弾というのは有効に使うべきだが、日本では高齢者用のワクチンすら手に入らない状態になってしまっている。何でも欧米では国がメーカーに対して全国民分確保してくれとプレッシャーをかけているらしい。日本はそういうことをしていないのでないか。結果として後回しにされて、使える弾すら使えない国になってしまっている。

 詳しいことは、MRICに書いたので、そちらを参照していただければと思うのだが、絶対に一定の確率で起こる副作用に対する対応を誰かのせいにするというのは根本的に間違っている。欧米では、社会を守るためにワクチンを使ったのだから、関係者の責任を問うのではなく、社会全体で補償していこうということになっている。無過失補償と免責の仕組みが不可欠だ。

 聞くところでは、新型インフルエンザの輸入に際して、メーカーから免責を求められたのに賠償の肩代わりで決着させてしまったとか。この二つは似て非なるもの。これでは誰かを悪者なのか訴訟で確定させないと被害者は救われないことになる。メーカーにとっても自分たちが悪かったと言わないと被害者が救済されないわけで、これではますますギャップが拡大する。絶対にやめてほしいと思っている。

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