「日本におけるワクチン・ギャップ」
13日のがんセンター講演会。ディスカッションの前に行なわれた高畑紀一さんの講演内容を簡単に再現する。(川口恭)
私たちは、ずっとワクチンの導入を訴えてきた。しかし、これまでワクチンに光が当たることはなかった。それがここに来て、新型インフルエンザワクチンのことが連日報道されるようになり、世の中の関心も高い。新型インフルエンザというのは喜ばしいことではないけれど、今を絶好の機会と捉えて情報発信しているところだ。
私たちの会は、2006年10月に細菌性髄膜炎に罹患した当事者や支援者で立ち上げた患者会。当事者相互の支えあいとワクチンの定期接種化を求めて活動してきた。今日は、この後者の活動で学んだことをお話したい。
細菌性髄膜炎とは、こんな病気。
ただし早期診断が非常に難しい。症状から確定させるのは不可能で、唯一確定できるのが随液検査なのだが、それを早期からやる開業医はいない。早期診断・早期治療が難しい。
この子供は、診断がついた時には、3分の1の確率で死に、3分の1の確率で重度の後遺症が残ると言われた。幸いにして完全復活して、今は元気にサッカーしたりピアノを弾いたりしている。実は私の息子だ。
この時、私はパニックになり、そしてイヤな思い出として記憶から消そうとしていた。
ある時、新聞にヒブワクチン承認という記事が出ていた。これで予防されるようになるんだな、よかったと、その時は思った。でも実は、はるかに昔からワクチンはあったし、予防接種をしておくのが世界標準だった。世界標準の接種で行なわれていれば、私の子供も罹患しなかったかもしれない。
正直ウソでしょと思った。ちょっと熱を出して1本打ち損なっただけでスケジュールが狂ってしまうほどギチギチに組まれた日本の予防接種は、世界のトップレベルなんだと、国がちゃんとやってくれているんだと信じていた。実はそうではなかったと知って大変なショックを受けた。それが原点だ。