救急患者の受け入れ・搬送ルールガイドライン、月末に都道府県に通知へ
総務省消防庁と厚生労働省は16日、「傷病者の搬送及び受け入れの実施基準等に関する検討会」(座長=山本保博・東京臨海病院院長)を開催し、改正消防法が施行する30日までに都道府県宛に通知する救急患者の受け入れ・搬送ルールのガイドライン案を大筋で取りまとめた。ルール策定に関する議論の場が、国から都道府県に移ろうとしている。(熊田梨恵)
■「救急搬送・受け入れルール」とは何か、なぜ策定する必要があるのかなど、詳細はこちら。
今回の会合はガイドラインの内容を了承するために開かれた場であるため、医療機関のリストアップや搬送・受け入れ状況の調査・分析など中身に関する議論はこれまでの会合でほぼ出尽くした。このため、ガイドラインの内容を知りたい方は、こちらやこちらを参照。検討会自体は存続し、新しい協議会の設置状況やルールの策定状況などを調べ、情報共有する予定。
消防庁は10月30日の改正消防法施行に向けて、近くガイドラインの内容を都道府県に通知する。搬送受け入れ・ルールの実施に向けて、具体的な議論の場は国から都道府県に移ることになるが、自治体関係者からはルール策定に向けて不安の声も多く聞かれている。会合中に川部英則委員(香川県防災局長)は「レアケースや重要な課題について、全国と情報共有を図りたい。文書だけでなく意見交換の場を設けて頂きたい」と述べ、都道府県担当者の情報共有の場を今後設置していくよう求めた。
消防庁救急企画室の開出英之室長も、今後の課題は都道府県がいかに実効性あるルールを策定していくかにかかっているとの見方を示す。会合終了後、「地域によってかなり取り組みの差があります。法律ができて国からの情報も届き、これを受けて都道府県は策定していきますが、その実効性をいかに持たせるか。"魂"を吹き込んでいくか」と話し、国として情報の周知や、ルール策定状況など情報共有の方法を工夫していきたいといた。
また、小児救急医療の啓発活動などを行っている阿真京子委員(「知ろう!小児医療 守ろう!子ども達」の会代表)も会合中、「どういう背景で、どういうルールなのかを、どう伝えればいいかと考えていた」と前置きし、自治体からの情報提供の方法を提案。保健センターや消防機関で行われている様々なテーマの住民向けの公開講座などで、講師が短時間でもこのルールについて情報提供できれば情報が伝わるとして、「住民に説明する機会がある人に講習しては。キーになる人が各地で場を持っているので、患者会や私たちのような団体に理解してもらうよう説明していくといいと思います」と述べた。
大阪府健康医療部保険医療室医療対策課の金森佳津氏(笹井康典委員(大阪府健康医療部長)の代理出席)は会合終了後、「根本的にとても難しいことだから、今ある医療資源を使って何とか良くしていこうというのはどの都道府県も切実に思っています。ガイドラインで示されなくても都道府県も何らかやっていたとは思いますが、こうして全国ベースで示されて浸透していくのは良いことだと思います。地域によって実情はかなり違いますが、救急医療はどこにいても一定の質が担保されるべきものだとも思うので、こういうガイドラインが示されるのは良いと思います」と話し、都道府県はルール策定について真摯に取り組んでいく姿勢だとした。隣接している都道府県との情報交換についてはまだほとんど行われていないとしたが、大阪府でもドクターヘリでの搬送など今後は救急医療の広域が進むとして、今後は行政も搬送・受け入れルールについて近隣の自治体と情報交換をしていくとの見方を示した。ただ、救急医療体制は地域によってかなり差があるとして、「医療資源が十分にあって組織体制も整っている地域ならいいと思いますが、そうでなければ大変なところもあると思います」と述べた。