「民主党のマニフェストでは医療問題を解決できない」 ─ 医療基本法シンポ
■ 「患者団体の統一行動が一番重要」 ─ 伊藤氏
[長谷川三枝子氏(患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会会長)]
私どもは11月が勉強会の月になっておりますので、次のところで、「民主党の医療政策の基本的な考え方を聞く」ということで予定しております。
[埴岡健一氏(日本医療政策機構理事)]
えっと......、というのは、そこで「(医療)基本法」の方針を確かめる......。
[長谷川氏(患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会)]
8項目ぐらい(の質問)を投げ掛けて、それから回答をもらってという形を考えております。
[埴岡氏(日本医療政策機構)]
では、そこでお聞きになれば分かるかもしれないということですね。
[長谷川氏(患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会)]
そうですね。
[埴岡氏(日本医療政策機構)]
はい、ありがとうございます。伊藤さんはどのように考えていらっしゃいますでしょうか?
[伊藤雅治氏(元厚労省医政局長、全国社会保険協会連合会理事長)]
先ほど田中さんからお話がありましたが、「がん対策基本法」のことを考えるとですね、やはり患者、市民の政党への働きかけが一番、今急がれているところじゃないかなと思います。それは与党だけじゃなくて、野党も含めてですね、働きかける、「なぜ必要なのか」を。
恐らく、今考えられている「医療基本法」の中身で言えばですね、与野党、そんなに対立する話じゃないと思いますから、ぜひそういう観点から、長谷川さんがやっているような患者団体の横断的な組織によって、統一した行動というか、それが今、一番重要になっているんじゃないかと思います。
▼ 患者団体を上手にまとめて取り込むということ。医療事故調も同じような構図になっている。国の責任はそっちのけで、「患者VS医療機関」という二者の対立構造に持ち込もうとするワンパターンの政策手法。大手メディアを使って「医療ミスだ!」と煽り立てる。今回も同じような手法でいくのか。そういえば、シンポジウムの休憩時間にトイレから戻ると、椅子の上に「院内事故調査委員会」の演劇シンポジウムのチラシが置かれていた。シンポジストの1人に、あの鈴木利廣弁護士の名前がある。鋭い人はもうお気付きだろう。「院内」というのが重要なポイント。「日本医療メディエーター協会」に対抗して、「院内」を医療問題弁護団が取ろうという動きにも読める。
[埴岡氏(日本医療政策機構)]
はい。渡邊さん、お願いします。
[渡邊清高氏(国立がんセンターがん対策情報センター・がん医療情報サービス室長)]
やはりその、合意できるところをきちんと示して、(論点を整理する)マッピング、政党なり、政策とかを立案していく方に対して訴えられるような形にしていくことが重要なんじゃないかなと思っています。
それから、現場に負担をかけないようにするにはどうすればいいか。あるいは5年後、10年後にどう変わっていくのかということが見えていないと。例えば、1つのテーマ、病気でもいいし、あるいは医療事故をこれからどうしていくのかとか、医療費の負担と給付の割合をどうするかとか、10年後の目指すべき方向性とそのためのロードマップということを分かりやすく示した上で持っていくとなお......。
「1つの法律」ということではなくて、「理念法」ですから、夢を語っていいと思うんです。そこで合意できることは何かということを明らかにすることが重要だと思います。
▼ 将来的な医療ビジョンをつくるべきということ。共感できるが、「法律」とは強制力を伴った社会規範なので、渡邊氏の熱い想いが埴岡軍団に悪用されないことを祈る。電車内でお年寄りに席を譲らないことは「道徳」の世界であって「法律」の世界ではないが、席を譲らない場合に罰金刑が科されるとすれば、強制力を伴った社会規範であり、「法律」で明示する必要がある。
もし、「医療基本法」なるものが憲法25条の生存権の理念を具体化する法律だと言うならば、国の責務を明示する必要がある。なお、憲法学説の中には、憲法25条を根拠にして私企業などの経済的自由権に対する広範な制約を認める見解があるが、依然として少数説にとどまっている。「医療サービスを提供して診療費を徴収する」という点をとらえて、「医療行為は経済活動の一環」などと解釈してしまうと、憲法25条を根拠にした医療機関に対する規制を導きやすいので注意が必要だろう。
[埴岡氏(日本医療政策機構)]
なるほど。小西さんは?
【目次】
P2 → 「巻き込んでいく」 ─ 田中秀一氏(読売新聞医療情報部長)
P3 → 「患者団体の統一行動が一番重要」 ─ 伊藤雅治氏(元厚労省医政局長)
P4 → 「マニフェストに書いてもらう」 ─ 小西洋之氏(総務省)