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ニュース〜医療の今がわかる

薬害とラグ、被害者どうしの直接対話


 水口真寿美(弁護士・薬害オンブズパースン会議事務局長)
「エビデンスのある治療を受けたいというのがラグ被害者であり、薬害被害者はエビデンスのない治療をされたというのは、片木さんのおっしゃる通りだろう。この場合、要はエビデンスのある治療というのをどうやって見ていくか。エビデンスのあるものは承認得られるのが大原則というのは、この検討会でも議論されていて、その基本をきちんと掲げていくことが大切。副作用の被害救済も対象は適応症のみなのだから。もっとも抗癌剤には被害救済制度がなくて、それも入れていくべきとは思うが、適応外使用は患者さんが大きなリスクを背負っている。

 エビデンスがどのレベルのものなのか患者さんが必ずしも分かっているとは限らない。勉強している人もいるが、適応外であることすら知らない人もいるだろう。何か起きた時に実は救済されないということになりかねない。エビデンスのレベルについて、この委員会では学会が役割を果たせと言った。

 適応外使用の個々の実例について日経メディカルという雑誌で843人に聞いたwebアンケートがある。記事の中で、適応外使用をした時、何を根拠にしたかという質問に対して、「先輩、仲間の経験」というのが61.4%もあった。ランダム化されたエビデンスがある37.1%とか学会ガイドラインによる推奨43.1%とかよりも口コミ的なものの方が高い。治療を受ける側からすると、それでは困るでしょうという話になる。

 ある薬にどの程度のエビデンスがあるものなのか情報提供できる環境が必要。このこともあって日本の適応外処方の実態データがあったら出してほしいとお願いしたのだが、最近のものはないという。そういうデータがないこと自体、実態をちゃんと見て議論するということができない原因だ。あるならデータを出してほしいし、ないなら国の責任でやっていくべきじゃないか。

 私は薬害肝炎弁護団じゃない。日弁連の推薦でこの場に出ている。日弁連は適応外使用はある種の人体実験だと捉えているし、ヘルシンキ宣言の理念を守る、そこを見ていくのは必要だと考えている。適応外と言ってもエビデンスのレベルは段階ごとに様々だと思うので、合わせて議論をしていかないといけないだろう」

 片木
「薬事法上の適応病名は、その病気に有効ということであって、その病気にしか効果がないということではない。エビデンスのある適応外はどうしてもできる。適応外使用に制限をかけるのだったら、まずは適応外使用がどの程度存在して、承認までにどれだけ時間がかかっているのか、その原因は何なのか調査しないとどんどんラグが増えていく。そういうデータは知りたい。

 日経メディカルの記事は私も読んだ。単答式で先輩や同僚の経験が一番だったら確かに問題だが、複数解答可なので論文のエビデンスに加えて周囲のアドバイスも聞いているという風に私はポジティブに解釈した」

 清水
「一般論としては水口委員の言う通り、適応外にも様々な段階がある。ただ片木さんが言われたのは外国では普通に使われているようなものが、なぜ日本では使えないのかということだろう。用量が異なるからスタディが必要というのは理解できるが、そこに時間がかかっているのが一番大きな問題点。同僚や先輩の意見で適応外使用していると批判されたが、患者を目の前にして何とかしたいということは現実にあり、対象となる患者のあり方まで踏まえて検討しなければいけない話で、安直に雑誌のアンケートを信用して議論するのには賛成しかねる」

 大平勝美(はばたき福祉事業団理事長)
「薬害被害者がいるから薬の承認が進まないというのは、薬害訴訟をよく思ってない人たちが言っているのかもしれない。私たちも人為的、作為的に私たちの命が妨げられたのが薬害だと思っている。タイムラグの問題は私たちも全面的に応援したいなと思っている。HIVの場合は欧米で承認されたものはすぐ入ってくるように強く要請し、1ヵ月か2ヵ月で入ってくる。それはその薬がないと生き続けていけないから。

 命を大切にするのが一番。こういった議論は何とかして生きたいという思いを実現する大きな糧になる。この委員会では客観的に議論が行われているけれど、それではドラッグ・ラグか解消されるのはいつになるのかというのは私自身も思っているし、並行してどういう問題があるのかの作業も進んでいかないと私たちの命は守られていかないのだろう。

 適応拡大の問題は、私たちも肝硬変や静脈溜に関して先生方から『通らないんだ』とよく聞く。どういうことが問題になっているのか、行政当局は恐らく知っているはず。患者が要望する窓口もない、それを処理している窓口はどこか、どれ位の規模でたまっているか同時進行で、この委員会からの提起として適切に処理すべきだ」

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