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薬害とラグ、被害者どうしの直接対話

 厚生労働省の『薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会』第18回会合が16日開かれた。対立の構図で語られることの多かった薬害被害者とドラッグ・ラグ被害者とが、「問題の根っこは同じ」という認識を確認しあい、これまでになく建設的な議論が繰り広げられた。(川口恭)

 この日は、7月に第一提言に対して緊急要望を出したラグ被害6団体を代表して、卵巣がん体験者の会スマイリーの片木美穂代表がプレゼンテーションを行った後に、議論に入った。プレゼンの内容は、医薬品の適応外を制限しないよう強調した以外はこれまでの片木氏の主張と大枠で変わるものではないので、議論の方を優先して報告する。

 間宮清(薬害サリドマイド被害者)
「『はじめに』の直後に言われたことだが、『薬害被害者がいるから薬の承認が進まない』とは一体誰が言っているのだと訊きたい。そういうことを言っている人は確かにいるんだろう。しかし我々薬害被害者だって本当の意味のドラッグ・ラグについては解消させるべきと、繰り返し言っている。そうではなくて何もかも一緒くたに同時に発売しろというのが問題なんであって、たとえばサリドマイドの再承認の時、我々サリドマイド被害者は遅らせようとは思わずむしろ協力したのに、製薬会社が遅れて、あんなに時間がかかってしまった。隣のベッドの患者さんが使っている薬を使えなかったという『悲劇』の話は適応外の保険の問題とごっちゃになっていて、ドラッグ・ラグとは若干違うのでないか。これはお医者さんに訊いた方がよいのだろうか」

 片木
「薬害被害者と対立させようと引っ張ってくれる外野の方がいる。しかし今日それを明確に否定できてよかった。適応症でない疾患に薬を使うと混合診療になってくるので、適応外でドラッグ・ラグも生じる。ただ全く使えないわけではなくて、臨床試験の形とか医師によっては『ウラ技がある』という人もいて、あの手この手でやってくださっているのが現状。でも療担規則違反に問われるとか、患者さんは納得していても遺族に訴訟を起こされたら死んでしまった患者は守ってくれないということもあって、私たちの会でもジェムザールを打てている人もいれば打ててない人もいる」

 清水勝(西城病院理事)
「混合診療との関わりが大きい。たしかにそれを使って儲けようという医師もいるだろうが、多くは良心的。そこの部分を信頼して、原則的には混合診療を認めるべきでないか。それによってかなりの問題が解消する。保険が効かないとお金の問題は残るが、しかし標準的な治療法は併用なんだけど、その中のどれかが適応外で困るというようなこともあって、広い意味での根本的な解決をめざすためにも片木さんの提言されたことを皆で議論しないといけないだろう。

 一つ提言させてもらうと、私も治験などをしたこともあるが、一番イライラするのが、なぜこれが承認を受けられないのか理由が分からないこと。企業が取り扱わないのか、承認申請までこぎ着けても何か問題があるのか、どの段階までプロセスが進んでいて、何の理由で先に進まないのかが分からない。それをハッキリと提示していただくことが大事だ。それを踏まえて、その先にどうすればよいのかの議論も出てくる。何で承認されないのかハッキリさせないと、解決策は見出せないのでないか」

 堀明子(帝京大医学部講師・元PMDA審査官)
「保険のシステムにおいても、個別の患者さん相手においても、グレーゾーンで皆がリスクを負いながらやっている。本人に適応外という同意を取り付けて家族にも説明して症状詳記でやっているような、悪く言えばごまかしながら使っている。薬事承認には一定のハードルがあってデータがあることが不可欠。それはストリクトであり、日進月歩の分野では、薬事承認をタイムリーに下ろしていくのは難しい。だから片木さんの言われたのは、怪しい利益のためのものは除いて保険に入れてしまうという意見だろうと思って聞いた」

 友池暢仁(国立循環器病センター病院院長)
「適応外とは、ある疾患には使えるのに、ある疾患には使えないということ。使った場合に、療担規則とか特別医療指導で摘発されると医療機関失格ということになってしまう。それ以外に保険でなく自己負担なら使えるとか、研究という扱いなら使えるが、しかし医療費全部がそれになってしまう。

 一番最初に承認される時には二重盲検で検討しやすい所からなので、その周辺は適応外。しかし市販後調査で適応拡大されていく。問題は時間的なもの。そこだけ解決すれば現時点でも使えるようになる」

 堀
「会社が薬事上の承認を取ると判断しないと進まない。開発しないと判断してしまった場合にはどうしようもないわけで、そこも含めて例えば保険と薬事を別にするとか議論しないといけない」

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