救急医療の"エピソード"を"データ"化へ-消防庁

消防庁の開出英之救急企画室長は「医療側の琴線に触れるものだったと思うが、実際の数字が出てきて、医療機関から『やってよかった』という声も聞いている」と話す。調査にも関わった有賀徹氏(昭和大医学部救急医学教授)も「実際にこういう状況があるということが分かった。これで次は、医療機関が福祉行政とも連携してどう取り組んでいくかというステージ。そして自分たちでできないところのサポートを国に求める」と話す。見えなかった部分がデータとして示され、課題解決のための次のプロセスに進める土台ができたという。ここからの取り組むかは地域の力であり、それでも足りない部分を支援するのが国の役割ということだ。
来月から実施する調査も、救急医療の中の別のグレーゾーンに切り込むものになることが予想される。
例えば「都会で搬送に時間がかかるのは、救急救命士が医療行為を行っているからで、それがなければもっと早く搬送でき、患者も助かるのでは」とよく言われるが、大いに賛否が分かれている。今度の調査では、「現場出発時間」を調べるため、救急隊の「現場滞在時間」が分かる。救急隊の救命処置内容や患者の転帰も調べるため、「処置」と「搬送」についての効率性を考える素材になる可能性がある。
さらに、心肺停止状態の患者が搬送された医療機関の種類(初期、2次、3次)、「家族及び関係者が傷病者への救急救命処置等を望まない旨、言われた事案」に該当するかどうかも調べる。この項目は、「3次救急は看取り」の現状について議論する際のデータにも成り得る。
委員からも意見が出たため、まだ項目は調整中であり、調査結果としてもどのように出るかは分からないが、少なくとも「心肺停止時状態の患者の搬送・受け入れ」に関してエピソードではないデータが出てくる。ただ、そのデータを使っての議論や、どう今後の政策決定につながっていくかは注視する必要がある。
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