民主党は「医療」でまとまれるのか
「民主党の上の方の人たちは大学病院とかは見ているけど、本当の意味での現場、地域のところは見ていないんだよ」―。民主党の国会議員でつくる「適切な医療費を考える議員連盟」の桜井充会長(参院議員)は1日、現政権が考える医療政策に対する不満をあらわにした。桜井会長は今週末にも医療費増額を求める要望を行い、その後は医療・介護政策全般を幅広く扱っていく考えだ。ただ与党内からは、「議連がうまくやれば身動きが取れなくなっている政務三役を助ける連携プレーになるが、ヘタしたらただの内ゲバ」との声も聞かれる。(熊田梨恵)
同日開いた議連の会合終了後の記者会見で、桜井会長は「例えば医療事故の問題一つ取ったって、元々の政府案、今内閣に入っている人達の案じゃ不安なところがいっぱいある」と言い放った。
桜井会長に「不安なところ」について取材すると、「3次救急の問題じゃないんだよ。2次救急の問題なんだ。2次救急が崩壊しちゃったら、3次救急の問題になっちゃう。在宅で何が問題かというと有床診療所を潰しちゃったでしょう。だから問題なんだ。要するに、民主党の上の方の人たちは大学病院とかは見ているけど、本当の意味での現場、地域のところは見ていないんだよ」と答えた。
加えて、議論が棚上げされたままになっている、厚労省が創設を検討中の死因究明制度についても、民主党案には足りない部分があると指摘。「医師法21条をやめるかどうかは分からないけど、いろんなことを言わせるだけ言わせておいて、今度はそれ(調査報告書)を証拠として使っていいんでしょう。それはないよね。『証拠として使っていいです』と言ったら本当の事を誰も言わないでしょう。普通はそれとこれは別個にして免責にしてもらわないと話にならないと思う。正直に言うからある部分は免責にしてください、ということ」と述べた。民主党案では、遺族が医療事故について納得できない場合、事故原因を調べる第三者機関「医療安全支援センター」に調査を頼める。遺族はここで発行される調査報告書を刑事告発などの手続きに利用することができる。
桜井会長の発言を聞いていると、議連の梅村聡事務局長が発足時に述べた「政務三役を応援する立場」とは思えないような発言が目立つ。これには、厚労省政務三役が新型インフルエンザの問題や予算編成で身動きが動けなくなっているこのタイミングで議連を発足させて、桜井会長が自身の立場を上げようとしていると見る向きもある。桜井会長が党内の医療政策を行っていこうとしていた矢先に、仙谷由人行政刷新相のブレーンでもあり現在は厚労省政務官を務める若手の足立信也参院議員に「ポストを持っていかれた」として快く思っていないというのは永田町や霞が関の医療関係者間では知られた話だ。