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ニュース〜医療の今がわかる

「地域医療がドミノ倒し的に崩壊」 ─ 中医協公聴会で窮状を訴え

■ 「初診料・再診料の大幅な引き上げを」 ─ 歯科開業医
 

 私は、福島県会津若松市で歯科医院を開業しております、遠藤と申します。地元で歯科医院を開設している歯科医師として、日ごろ感じている点をいくつか述べさせていただきたいと思います。それをまた、この改定の中で反映していただければありがたいと思っております。

1. 健康とQOLを支える歯科医療の役割
 高齢化とともに、国民の求めるものが多様化しております。医療状況も、従来の救急医療を主体とした急性期医療のみならず、それと共に生活支える医療が重要視されていると思っております。
 生涯にわたって自分の歯でおいしく食べるということは人生の大きな楽しみであり、国民の健康とQOLの確保に欠かせないものと思っております。この健康とQOLを支える歯科医療の役割は今後ますます重要になってくるものと思っております。

 そうした中で、地域において日々診療に当たっておりますと、さまざまな患者さんが来院されます。病状もそれぞれに異なりますけれども、職業、生活環境、価値観、倫理観、また求めるものの優先順位等、さまざまな訴えがございます。QOLが求められる、生活を支える歯科医療においては、こうした患者さんの訴えに応えた治療をすることが重要だと思っております。

2. 初・再診料の引き上げ
 また、在宅診療にも当たっておりますが、いったん寝たきりになりますと、口の中の状態というのは急速に悪化してしまいます。これは、全身状態にも影響を与えるものと考えております。

 ただ、歯科の治療というのは基本的に外科治療でございます。そうしますと、患者さんの枕元でこういった治療をすることは大変な困難が伴います。我々はさまざまな工夫を重ねながら実施しているわけでございますが、これらのことを評価していただくとともに、患者さんにとってより良い治療環境、こういったものを整える、そういった制度ですね。
 例えば、入院によって治療するのか。搬送するのか。また、現在は医療保険と介護保険がちょっと縦割り状態でなかなか運営が難しいのですが、介護施設等の利用。そういったことを制度の中に採り入れていただきたいというふうな要望を持っております。

 またこうした中で、安全で安心できる歯科医療が安定的に提供されるとともに、その時代時代に即した新しい技術というものが導入されなければなりません。このためには、私ども歯科医療に携わる者の自助努力は当然必要なわけでありますが、それと共に医院の経営安定ということが欠かせません。

 しかしながら残念なことに、長年にわたる政府の医療費抑制策により、歯科医療費の総額は10年以上にもわたって横ばい状態であり、1医療機関当たりの歯科医療費は大幅に減少しております。一部の報道等では、「ワーキングプア」というような言葉すら使われております。
 その実態は、経営の現状維持すら困難であり、新しい技術の研鑽や診療設備の更新が困難となっております。適切な歯科医療を提供するためには、経営を維持する基盤である基本診療料であります初診料・再診料の大幅な引き上げを強く要望いたします。

3. 技術料の評価
 また、あまりにも評価の低い多くの歯科の技術料の実態に合わせた見直しをお願いしたいと思います。先ほど述べましたように、来院されるさまざまな患者さんを治療するに当たっては、患者さんとお話し合いをしながら、医学的根拠の下に患者さんの訴えを重要視し、治療方針を決めてまいりますが、実態には治療が進むに従って患者さんの意向も変化してまいります。そういったことはしばしばございます。

 現在の保険診療上のルールにおいては、臨機応変な対応がなかなか困難となっております。患者さんの主訴を重要視した治療ができるように、これらのルールを改善していただければと思っております。
 また、これは指導管理の在り方についても同様で、患者さんの実態に合ったルールにしていただきたいというふうに考えております。

 私たち歯科医療界は国民の皆様と共に、80歳まで20本以上の歯を残すという「8020社会」を目指しております。自分の歯を残して、お口の機能を回復し、維持し、またそのための技術を評価していただき、定期的な指導管理が円滑に運用できるシステム。
 また、在宅における、在宅や施設における療養・介護を受けている方々のための歯科医療の充実が必要であります。生涯を通じて患者さんと共に歩むことのできる、その支障のない制度にしていただきたいというふうに考えております。

 また、歯科においては新しい技術の導入に際してなかなか技術的評価が得られず、十分に普及するには適切な評価をぜひお願いしたいと思っております。

 確かに、医療においては「ボランティア精神」というのは大事であり、我々も十分理解はしておりますが、あまりにも採算性がなければいずれは破綻してしまうと考えております。

 最後に、社会保障制度は国の文化であり、国民皆保険制度というのは国民の宝だというふうに思っております。将来にわたって維持できるよう、我々がその保険制度の中で、日々の臨床において、患者さんの皆様に必要な歯科医療を、患者さん一人ひとりのその実情、実態に合わせて、幅広い解釈の下、十分に提供できるよう、改定に当たっては以上の点をご配慮いただいて進めていただければありがたいというふうに思っております。以上です。
 

【目次】
 P2 → 県医師会理事 ─ 「診療所の再診料を下げて統一することに反対」
 P3 → 歯科開業医 ─ 「初診料・再診料の大幅な引き上げを」
 P4 → 病院薬剤師 ─ 「24年度改定で薬剤師の病棟配置に評価を」
 P5 → 訪問看護師 ─ 「日ごろから制度にとても矛盾を感じている」
 P6 → 公立病院長 ─ 「地域医療がドミノ倒し的に崩壊」
 P7 → 開業医団体 ─ 「再診料引き下げは医療サービスの礎を崩壊」
 P8 → 健保組合 ─ 「診療報酬の引き上げを行う環境にはない」
 P9 → 連合福島 ─ 「医療過疎が極めて深刻な事態」
 P10 → 透析患者 ─ 「先進国たる日本で医療の状況は異常」

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