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ニュース〜医療の今がわかる

「地域医療がドミノ倒し的に崩壊」 ─ 中医協公聴会で窮状を訴え

■ 「医療過疎が極めて深刻な事態」 ─ 連合福島
 

 連合福島の執行委員をしております二瓶(にへい)と申します。福島県福島市で、福島中央市民医療生活協同組合に従事しております。職場の労働組合の執行委員長も担っております。
 今日は、国民の安心の大きさである医療の報酬を討議する重要な会議を福島で開いていただき、このような発言の機会をいただきましたことに、関係者の皆様に感謝いたします。本日は、連合福島を代表して患者の立場、被保険者の立場、そして医療スタッフの立場から意見を言わせていただきます。

1. 医療供給体制が不十分でアクセスが困難
 まず、地域における医療供給体制の維持と確保についてであります。医療は私たちが安心して暮らすため、欠かすことのできない条件です。安心の医療が提供されない地域で暮らすことはできません。
 しかし、その基盤が揺らいでいます。全国的に、医療機関、診療科、医師、看護師等の偏在が進む中、福島県内でも地域によっては診療科がなくなってしまった、そういう地域も出ています。
 南会津の地域では、医療過疎が極めて深刻な事態となっています。南会津地方には産科がなく、出産ができません。会津若松まで1時間以上の時間を掛けて通院し、出産しているのが現状です。

 また、出産が近くなると早期に、今の冬季の......、雪の道路事情なども考慮し、早めに入院する、そういう事情も出てきます。また、南会津は高齢者の人口が多く、移動が困難なお年寄りがたくさんいらっしゃいます。こうした地域で医療供給体制が不十分で、医療へのアクセスが困難となっているのが実情です。基幹病院と地域の医療の連携、あるいは訪問看護の評価をしていただきたいと思います。

 また、県内どの地域に住んでいても救急医療が受けられる体制を整備するため、救急体制に貢献する医療機関や、夜間・休日診療を行う医療機関に対する医療機関に対する評価も行っていただきたいと思います。

 また、福島県は全国的に見れば比較的出生率が高い県ですが、子どもを産み育てたいと願う市民、勤労者が安心して出産・育児をすることができるよう、新生児を含む周産期医療、小児医療への重点評価もお願いしたいと思います。

2. 明細書の無償発行の義務化
 次に、医療機関における明細書の発行についてです。患者の立場からすれば、自分が受けた医療の内容と、医療費の内訳を知ることは当然の権利です。医療費の一部を窓口で負担する際に、何にどれだけお金がかかっているのかということを明細書の形で交付することにより、医療機関と患者の間の信頼関係は格段に高まると思います。

 ですから、医療の内容がレセプト並みに分かる明細書の発行について、本人が不要としない限り、すべての医療機関において無償で発行することを義務化していただきたいと思います。

 もちろん医療機関の中には、既に体制が整えられている所もあると思います。明細書無償発行の義務化を方針として掲げて、既に体制のある医療機関から段階的に実施されています。次期報酬改定の2年後には完全実施化されるようなスケジュールを決めるべきと考えてます。
 なお、改正整備のために電子請求の評価による診療報酬上の電子化加算や、財政上の支援措置などを併せて行うことが必要と考えてます。

3. 医師、看護師の勤務環境の整備
 最後に、医師、看護師の負担軽減について述べます。勤務医、看護師の加重労働は深刻です。看護師を例にとりますが、月8回から9回の夜間シフトは過酷です。
 妊娠、出産、子育ての両立は困難ですし、多くの看護師が健康不安を訴えています。現場は既に人材不足の状態にあります。医療の現場が疲弊して患者への丁寧な対応ができなくなったり医療ミスが発生することは、患者、医療関係者双方にとって不幸なことです。

 医師や看護師が魅力ある仕事をして、若い人々の目に映らなければさらに人材不足に陥ることも懸念されます。医師、看護師の安定的確保と処遇を改善するために、可能な限りの環境整備をお願いします。
 子どもを育てる、あるいは体力に限界がある、そうした状況の中で、職場で労働組合に従事していて相談を受けます。まさに今、そういう意味で、職場からの改善が目に見えるような、そうした環境整備をお願いしたいと思います。

 また、中医協では入院基本料に関する月平均夜勤時間の72時間要件の緩和が議論されましたが、安心の医療のためにはむしろ64時間以内に引き上げ、夜勤も月8回以内で済むよう改善することが重要なポイントだと思います。

 そのためにも重要なことは、人材をどういうふうにつくり確保するかということです。医療スタッフの社会的な増員をどう図っていくのか、このことも大変重要になっていくと思います。現在の72時間要件を一時的にも緩めるような方向は、人材確保、安心の医療に逆行することになると思います。以上、意見を表明させていただきました。ありがとうございました。
 

【目次】
 P2 → 県医師会理事 ─ 「診療所の再診料を下げて統一することに反対」
 P3 → 歯科開業医 ─ 「初診料・再診料の大幅な引き上げを」
 P4 → 病院薬剤師 ─ 「24年度改定で薬剤師の病棟配置に評価を」
 P5 → 訪問看護師 ─ 「日ごろから制度にとても矛盾を感じている」
 P6 → 公立病院長 ─ 「地域医療がドミノ倒し的に崩壊」
 P7 → 開業医団体 ─ 「再診料引き下げは医療サービスの礎を崩壊」
 P8 → 健保組合 ─ 「診療報酬の引き上げを行う環境にはない」
 P9 → 連合福島 ─ 「医療過疎が極めて深刻な事態」
 P10 → 透析患者 ─ 「先進国たる日本で医療の状況は異常」

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