「地域医療がドミノ倒し的に崩壊」 ─ 中医協公聴会で窮状を訴え
■ 「診療報酬の引き上げを行う環境にはない」 ─ 健保組合
私は福島県福島市にあります東邦銀行健康保険組合の石井でございます。意見発表の機会を与えていただきましたことに御礼を申し上げたいと思います。平成22年度の診療報酬改定について、保険者である健康保険組合の立場から意見を述べさせていただきます。
現下の厳しい経済情勢の中で、保険組合は医療保険制度の安定的な運営に向けて日々努力しておりますが、保険収入の減少である高齢者医療制度に対する支援金、納付金等の過重な負担等により、健保組合全体では平成20年度決算で3060億円の経常赤字となり、21年度予算でも当初6100億円超と見込まれておりました経常赤字が、さらなる保険料収入の減少で7千数百億円にまで拡大するなど2年連続の巨額な赤字を計上し、危機的な財政状況に直面しております。
当福島県の健康保険組合も全国と同様の厳しい財政状況でございまして、20年度決算でございますが、8組合で3億5700万円の経常赤字でございます。21年度の予算は当初、6億9600万円の経常赤字の見込みでございますが、この状況下でさらに拡大する勢いの状況でございます。
社会経済情勢とか、国民生活の状況、保険者財政等を考えれば、診療報酬の引き上げを行う環境にはないわけですが、平成22年度の診療報酬改定におきまして昨年末に改定率が決定されております。
今後、具体的な点数設定等の議論が進められることと思いますが、その際にはメリハリを付ける形で、必要度の高い医療に対しては大胆かつ重点的な評価を行う一方、限られた財源を効率的かつ効果的に配分し、国民、患者に納得・理解が得られるような改正になるようお願いいたします。
これまでの検討状況については、現時点の骨子を見ますと、喫緊の課題であります病院勤務医の負担軽減や、産科、小児科、救急医療等の急性期を中心とした医療についてさまざまな対応を講じることや、医療機能の分化や連携の観点から在宅医療の充実や、地域における医療連携体制の評価を図っていく措置を講ずることは大変評価でき、期待しているところでございます。
また、個別の項目について、骨子の中で3点について私の立場から申し上げたいと思います。
1. 診療所の再診料
まず1点目は再診料でございます。同一サービスは同一の報酬にすべきであることや、病院と診療所の格差を是正するという観点から統一する方向で検討することとしておりますが、その際には配分を大きく見直し、診療所の点数を引き下げ、病院の点数を引き上げる形で統一を図るべきであると私どもは考えております。
2. 後発医薬品の使用促進
2点目は、医療の効率化の余地がある領域については適正化すべきという観点から、後発医薬品の使用促進については、さらなる促進を図るためにさまざまな取り組みを実施することは評価できますが、その効果や使用状況については検証し、実効性のある見直しをお願いしたいと思っております。
3. 明細書の無料交付
3点目は、診療報酬改定に当たりましては、国民・患者にとって分かりやすいものとする観点から、診療報酬体系の簡素化、合理化を図っていく方向で取り組むべきであります。
また、患者が医療に対する理解や関心を深めるためにも、明細書の無料交付を義務付けるようにぜひ要望いたします。
このほか、保険者の立場から申しますと、医療の透明化や審査の充実、支払いの効率化を図る観点から、レセプト様式の見直しや、当初の方針から後退してしまいましたレセプトの電子化など、医療保険実務のIT化を推進すべきと考えております。以上でございます。よろしくご検討くださいますようにお願いいたします。
【目次】
P2 → 県医師会理事 ─ 「診療所の再診料を下げて統一することに反対」
P3 → 歯科開業医 ─ 「初診料・再診料の大幅な引き上げを」
P4 → 病院薬剤師 ─ 「24年度改定で薬剤師の病棟配置に評価を」
P5 → 訪問看護師 ─ 「日ごろから制度にとても矛盾を感じている」
P6 → 公立病院長 ─ 「地域医療がドミノ倒し的に崩壊」
P7 → 開業医団体 ─ 「再診料引き下げは医療サービスの礎を崩壊」
P8 → 健保組合 ─ 「診療報酬の引き上げを行う環境にはない」
P9 → 連合福島 ─ 「医療過疎が極めて深刻な事態」
P10 → 透析患者 ─ 「先進国たる日本で医療の状況は異常」