「地域医療がドミノ倒し的に崩壊」 ─ 中医協公聴会で窮状を訴え
■ 「先進国たる日本で医療の状況は異常」 ─ 透析患者
郡山市の岡部と申します。人工透析を受けている患者でございます。今年で28年目になります。本日も、これから帰って夜間透析を受ける予定となっておりますが、私のような者に大変貴重な時間を賜りまして厚く御礼を申し上げます。
透析医療についてお話ししようかと思いましたが、皆さん、報告書を読むと(透析医療について)ご承知のようですので、福島県の地域医療の問題について今般、話させていただきたいと思います。
福島県では、地域医療の崩壊が危惧されております。これを患者自身が痛感しているという現実が非常に大変な問題と思います。この先進国たる日本において、マクロの理論で言うところの政治的要求や安全の要求が、それさえ得られていない。そういう医療の状況は異常であると言わざるを得ないというふうに思います。
そういう観点から本日、2点を提案・要望させていただきたいと思います。
1. 地方と都市部の広範な相互支援システムを
その1ですが、福島県は特に医療施設が存在するにもかかわらず、医師やスタッフの撤退から大切な診療科が閉鎖されている事態が特に公的医療機関に続発しているという現実は、いつでもどこでも安心できる医療を提供すべき公的医療機関の社会的責務を果たしているとは到底言い難いというふうに思います。
しかし同時に、現体制の下ではその高邁な理想の実現が困難であろうという現実も理解しているつもりです。長期スパン的な解決手段として、まず地域医療を保障するという欠落、考え方、それを実現すべき制度をもう一度再構築して、それを診療報酬体系の中でしっかり担保していく必要があると考えています。
確かに、社会保障費は国家財政の中で大きな部分を占めておりますし、非常に注目されております。しかし、急速に高齢化した日本において、このような財政体系になることは自明でありましたし、それを削減、あるいは圧縮することは人間の基本的尊厳を破壊させる危機を露呈するのではないかという危機感を感じます。
そういう危機感の中で、地方、都市部の格差はありますが、双方からの「医療創造支援システム」を構築し、これだけ交通網が発達しておりますので、かなり広範な支援システムが組めるはずでございます。
そういう中で、地域に住む者、地方に住む者にとっても安心して生活できる医療体制の構築をしていただきたいというふうにお願いしたいと思います。
2. 在宅、通院、介護体制などの体系的な整備を
2点目ですが、在宅医療の推進という基本方針がございます。具体的に療養病床の削減とか、そういうところも出てきておりますので、こういう在宅医療の推進というのはこれからの日本の医療を俯瞰すべき姿であろうというふうに思慮されます。
しかし、在宅医療の推進のためにはその前提として、在宅期にある患者が安心して在宅し、そして医療を受けることのできる体制、ハード面、ソフト面、両方合わせて整備して、その後に在宅医療に移行すべきというふうに、患者としては希望します。
特に我々、1日おきに通院しなければならない透析患者などは、通院の問題は医療そのものと同じように重要な問題となっております。この通院支援制度を医療として位置付けるか福祉として位置付けるかというのは、私どものような素人が判断すべきところではありませんが、在宅医療の推進基盤としての通院手段の確保、いわゆる「在宅の安心感」という概念を医療の中で考えていただきたいというふうに思います。
ここで1つの例として通院の問題を提起しましたが、本来、今後、医療という範疇には医療行為そのものと、いわゆる在宅の在り方、通院行為、そして自宅での介護体制など、これらを体系的に整備してはじめて、人間の人格をきちんと守った幸せを語ることのできる医療、そういうものを理想として、これからの医療体制を整備していく必要があるのではないかというふうにご提案させていただきたいと思います。
この辺の要所もご賢察の上、よろしくお願いしたいと思います。ご静聴、ありがとうございました。
【目次】
P2 → 県医師会理事 ─ 「診療所の再診料を下げて統一することに反対」
P3 → 歯科開業医 ─ 「初診料・再診料の大幅な引き上げを」
P4 → 病院薬剤師 ─ 「24年度改定で薬剤師の病棟配置に評価を」
P5 → 訪問看護師 ─ 「日ごろから制度にとても矛盾を感じている」
P6 → 公立病院長 ─ 「地域医療がドミノ倒し的に崩壊」
P7 → 開業医団体 ─ 「再診料引き下げは医療サービスの礎を崩壊」
P8 → 健保組合 ─ 「診療報酬の引き上げを行う環境にはない」
P9 → 連合福島 ─ 「医療過疎が極めて深刻な事態」
P10 → 透析患者 ─ 「先進国たる日本で医療の状況は異常」