「地域医療がドミノ倒し的に崩壊」 ─ 中医協公聴会で窮状を訴え
■ 「日ごろから制度にとても矛盾を感じている」 ─ 訪問看護師
福島県にあります会津若松市の財団法人温知会・会津中央病院の訪問看護ステーションからまいりました大友と申します。このたびは訪問看護師の立場として、あとは看護師の代表といたしまして、日ごろから制度にとても矛盾を感じていることが多々ありますので、その中で4つほど意見を申し上げたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
1. 訪問看護の回数制限
皆さん、訪問看護と言うと「何をやっているんだろう」ということで、分からない方がたぶん多いのかなと思います。その中でですね、「訪問看護療養費」というのがありまして、医療保険と介護保険の二本立てで訪問看護は提供されております。今回は医療保険のほうですので、「訪問看護基本療養費」というものが算定されることになっています。
この制度で、ちょっと矛盾を感じているところがございますので述べさせていただきたいのですが、訪問看護というのはですね、がんの末期の方と、あとは厚生労働大臣が定める疾病だけが回数制限がないんですけれども、そのほかの疾病の方に関しては回数制限が設けられております。
それは週3回しか......、「訪問看護に行ってはいけませんよ」ではないんですが、「それ以上行っても診療報酬を頂けない」というような報酬設定になっております。
例えば、私のステーションに「強皮症」という難病の方がいらっしゃるのですが、この方は点滴をしなければ生命を維持できないような状況です。しかし、この「強皮症」という病気は厚生労働大臣が定める疾病ではないために、週3回までしか診療報酬を頂けないということになります。
ですので、週4回目からの報酬は訪問看護ステーションは無報酬。結局、ボランティアで訪問させていただいているというような状況になっております。必要なケアを行っているにもかかわらずタダ、ということになっております。
「なぜこのような制度になってしまったのか?」というところを私はですね、根拠をですね、説明していただきたいというふうに思っております。現場の立場からいたしますと、その根拠に納得いかなければぜひ改定していただいてですね、週4日目以降もきちんとケアを提供しているんですから、報酬を頂きたいと思っております。
訪問看護師は日々、本当に忙しく動いております。(入院期間を短縮させる)DPCや7対1(入院基本料)の関係で医療ニーズの高い方もかなり多く在宅に来ておりますので、そういったところもくんでいただければと思っております。
2. 「ターミナルケア療養費」の算定要件
2つ目ですが、「ターミナルケア療養費」というのがございます。これは在宅での看取りを推進するものですが、こちらの算定要件ですが、とても矛盾しているものでして、「死亡日当日を含む死亡前14日以内に2回訪問しなさい」というような制度になっております。
その方が、例えば「1日でも2日でも意識があるうちに自宅に戻りたい」とか、「1日でもいいから自宅でみたい」というご家族の希望をかなえるには、この「14日」という根拠がどこにあるのでしょうか。この「14日以内に2日」という、この根拠をですね、この制度を決めた方にぜひ説明を頂きたいという希望があります。
やはり、入院していて「今じゃなければ帰れない」、「今じゃないと自宅に戻れない」という方がたくさんいらっしゃいます。それでご自宅に帰りまして、こちら訪問看護(ステーション)で在宅の先生方と連携を取りながらその方を看取ります。
しかし、この「ターミナルケア療養費」、訪問看護ステーションとしては頂くことができません。ですので、基本料金やオプションの設定をするしかないというような、本当に矛盾を感じるような制度でございますので、こちらのほうもですね、きちんとした説明を頂けないのであれば報酬の改定をしていただきたいと思っております。
3. 「特別な関係」にある医療機関と訪問看護ステーションの算定制限
3つ目ですが、医療機関と訪問看護ステーションが特別な関係にある(場合に算定が制限される)というような制度がありますが、「特別な関係」というのがですね、「医療機関と訪問看護ステーションの開設者が同じである」ということになっております。
例えば、私どもが勤めております会津中央病院を受診されている患者さんが受診した日、その当日に訪問看護を提供した場合には訪問看護はボランティアになります。これも私、とってもおかしいと思うんですけれども、診察と看護というのは内容が違います。かなり違ったことを提供しています。
先ほどの「強皮症」の患者さんに対してもですね、例えば「今日は受診した日だから点滴を抜いていきたい」というご希望がございました。ですので、朝早く訪問看護師が訪問いたしまして、その中の中心静脈の点滴を抜きます。そして、その方は特に何もぶら下げることなく軽い身支度で受診に行かれる。そこで先生の診察を受けて戻ってきます。
で、「戻ってきたから、看護師さん、点滴をもう1回やってくれないか?」ということで、もう一度刺しに行きます。それは、ボランティアになってしまうんです。そういったことを、どのように皆さんはお考えなのかというところで、やはり、現在業務に当たっている私たちはですね、そういったところにとても矛盾を感じております。
ですので、こういった「特別な関係にある」ということを設けた理由をお聞かせ願いたいと思っておりますので、もしですね、こういったことが私たちの納得のできないことであれば、やはり改定を求めていきたいと思っております。
4. 看護師の労働環境の整備
最後ですが、看護師としての要望になります。私も子どもを持つ立場でありますので、看護師の労働環境ということになります。子どもが小さいころ日勤をやって、また深夜帯に出掛けるというようなことが多々ありましたけれども、これはですね、子どもを犠牲にする、家庭を犠牲にする。
自分の健康も害していきます。24時間寝ないで、育児と看護に随分偏りました。結局、夜中になると頭がボーっとしてきます。かなり体が疲れてですね。看護師は子どもを産み育てたい。そして少子化に歯止めをかけなくてはいけないですし、そういった中で、やはり労働環境の充実とか、パート労働環境を整えていただきたいという辺り。
こちらはですね、もちろん利用者さん、患者さんの健康を守るですとか事故を防ぐというところにもつながりますので、ぜひですね、看護師の労働環境の整備に関してもご意見を申し上げたいと思います。以上になります。ありがとうございました。
【目次】
P2 → 県医師会理事 ─ 「診療所の再診料を下げて統一することに反対」
P3 → 歯科開業医 ─ 「初診料・再診料の大幅な引き上げを」
P4 → 病院薬剤師 ─ 「24年度改定で薬剤師の病棟配置に評価を」
P5 → 訪問看護師 ─ 「日ごろから制度にとても矛盾を感じている」
P6 → 公立病院長 ─ 「地域医療がドミノ倒し的に崩壊」
P7 → 開業医団体 ─ 「再診料引き下げは医療サービスの礎を崩壊」
P8 → 健保組合 ─ 「診療報酬の引き上げを行う環境にはない」
P9 → 連合福島 ─ 「医療過疎が極めて深刻な事態」
P10 → 透析患者 ─ 「先進国たる日本で医療の状況は異常」