患者の「知る権利」と「知りたくない権利」 ─ 明細書で激論
■ 「正当理由ない限り、全患者に無料発行」を提案 ─ 厚労省
[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
(総会開催から約4時間半が経過して)それでは、本日最後の案件でございますけれども、「明細書発行の推進及び処方せん様式等の見直し」について議題といたします。事務局(保険局医療課)から資料が出ておりますので、事務局、まず説明をお願いしたいと思います。
▼ 資料本文はこちら(PDF:445KB)。
[保険局医療課・渡辺由美子保険医療企画調査室長 ]
はい、保険医療企画調査室長でございます。それでは、お手元の(個別改定項目を列挙した)「短冊」では32ページからになりますが、その前に少しだけ参考資料をご覧いただければと思います。
▼ 参考資料は、こちら(PDF:774KB)。
1. これまでの議論
「参考資料(明細書関係)」という資料が付いていますが、この資料の12ページ(これまでの議論の整理)をご覧いただければと思います。明細書の発行につきましては、中医協におきましても昨年末(11月27日)、そして今年の年明け(1月15日)にも一度ご議論いただいたところでございます。
1月15日の中医協総会で、1号(支払)側から「全医療機関が無償で明細書を発行するように義務付ける方向で2号(診療)側と合意を得たい」と(いう主張があった)。
また、(明細書発行に必要な)コストなどの問題につきましては、「具体的にどう進めるかについてはまた議論(する)」というお話だったと思います。
これにつきまして、2号(診療)側としても、(明細書を発行するという)大きな方向としては良い。ただ、コストの問題は現実の問題として起こるので、個別の内容のところで議論したい(という主張だった)。
あるいは歯科(の委員)からは、「小規模でレセコンの普及が十分でないので、一度に全部(の医療機関)というのはなかなか現場として難しい」というようなご意見もございました。そこで、13ページでございます。(中略)
▼ 現在、診療所が使用しているレセコンがどのぐらい明細書の発行に対応できているかを説明。資料はこちらの13ページ。
2. 明細書発行の現状
15ページ(明細書発行の一部義務化の実施状況調査)でございますが、これは一度(中医協の)基本小委でもご紹介いたしました。(2008年度診療報酬改定の影響を調査する中医協の)「検証部会」の今年度の調査結果でございます。
今、明細書は(レセプトをオンライン請求している医療機関などの場合には)「患者から求めがあれば発行する」という形になっております。(明細書を)発行している404医療機関のうち、71%が無料で発行しているということでございました。
また、患者調査で「今後の明細書発行の希望」をおききしたところ、約4割が「無料であれば希望する」と回答しています。以上が現状についてのデータでございます。
3. 明細書発行の義務化
「短冊」の32ページ(明細書発行の推進及び処方せん様式等の見直し)にお戻りください。(中略)まず、明細書発行義務化の拡大についての基本的な考え方でございます。
現在、(注射・投薬などの部ごとに費用が分かる)「領収証」については、既に全ての保険医療機関等について、無料での発行が療養担当規則上、義務付けられております。
一方、詳細な個別の点数項目までわかる明細書については、電子媒体あるいは(診療報酬の)オンライン請求が義務付けられている保険医療機関について、「患者から求めがあった場合」に、発行が義務付けられているということになっています。
これにつきましては、(患者の待ち時間の増加や)医療機関の負担増といったことにも配慮しながら、基本方向としては医療の透明化、あるいは患者への情報提供という観点から、明細書の発行を積極的に推進していく。そのために、「具体的にどうしていくか」ということではないかと思います。
4. 「明細書発行体制等加算」の創設
また、これに関連しまして、平成18年度の(診療報酬)改定で、「医療のIT化の推進」という観点で(平成23年3月末までの時限的措置として)創設されました「電子化加算」、これは初診料への3点(30円)の加算ということでございます。
これが実は来年の3月、ちょうど改定の狭間になりますが、「平成23年3月末までの時限的措置」ということで設定されております。
この「電子化加算」につきまして、「IT化の推進」ということも含めまして、「明細書発行の推進」も含めた新たな点数(明細書発行体制等加算)として組み替えをしてはどうかということでございます。
5. 義務化の拡大
33ページでございますが、「明細書発行義務化の拡大」です。(中略) 従来は、「患者から求めがあった場合に明細書を発行する」ということが原則でございまして、例外的に全員に出している所もあったわけですが、(今回の提案は)いわばこの原則と例外をひっくり返す形で、「レセプトの電子請求を行っている保険医療機関等については、以下に掲げる正当な理由のない限り、すべての患者に対して明細書を無料で発行することとする」という形にしてはどうかということでございます。(中略)
▼ 例外規定について説明。原則は、①全員に対して発行 ②無料で発行─の2つ。ただし、「正当な理由」に該当する場合には、①(全員)の例外として、「求めがあった場合」のみで可。②(無料)の例外として、「有料」でも可。つまり、「正当な理由」に該当すれば、現状の取り扱いに戻る。
「正当な理由」の考え方(案)34ページの(2)でございます。レセプト電子請求が義務づけられていない保険医療機関等につきましては、現状でも明細書の発行義務は課されておりません。
① 発行関係
イ 明細書発行機能が付与されていないレセコンを使用している保険医療機関等や、付与されていてもその発行に一定以上の時間を要するレセコンを使用している保険医療機関等である場合ロ 自動入金機を活用しており、自動入金機で明細書発行を行おうとした場合には、自動入金機の改修が必要な保険医療機関等である場合
② 費用徴収関係
上記①のイ又はロに該当する場合▼ 原則は無償。ただし、「上記①のイまたはロに該当する場合」は徴収できる。
「DPCに関する明細書」について
DPCに関する明細書については、入院中に使用された医薬品、行われた検査について、その名称を付記することが望ましいものとする。▼ 同日の意見交換で勝村久司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、「望ましい」との記載を「原則とする」に修文するよう求めた。
上記の正当な理由に該当する場合には、保険医療機関等はその旨及び希望する患者には明細書を発行する旨を院内掲示で明示するとともに、地方厚生局にその旨の届出を行うこととする。
また、各保険医療機関等は、明細書発行の手続き、費用徴収の有無、費用徴収を行う場合の金額について、院内に掲示するとともに、その内容を地方厚生局に届け出るものとする。
これらの保険医療機関の中には、「そもそもレセコンが入っていない」という医療機関もまだございますので、そういった所の実態、発行体制ということにも鑑みまして、基本的には今回、そこについては大きな変更はございません。
▼ 現在、明細書の発行が義務付けられていない医療機関はこれまで通りで、患者から求めがあっても発行する義務はない。
ただ、従来はそれ(明細書発行)について、「患者に知らしめる」ということを課していませんでしたので、今回の考え方としてはその医療機関での明細書発行についての状況、発行するかしないか、あるいは発行の手続き、費用徴収があるかないか等々についてきちんと院内に掲示するということを、レセプト電子請求が義務付けられていない医療機関についても課していくと考えてはどうかということでございます。(中略)
6. 処方せん様式等の見直し
「処方せん様式等(の見直し)」につきましては基本小委でも報告しておりますが、既に閣議決定でこうした方向が出ておりますので、そこに出ているようなこと(都道府県番号、点数表番号、医療機関コード)を処方せん、調剤レセプトに加えるということ。一定の経過措置を設けた上でこうした見直しをしていきたいということです。事務局からは以上でございます。
[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
はい、ありがとうございます。事務局からこのような案が出ておりまして、これまでの議論ではまだ合意が形成されていないということであったわけですが......、安達委員、どうぞ。
【目次】
P2 → 「正当理由ない限り、全患者に無料発行」を提案 ─ 厚労省
P3 → 「こういう方向でお願いしたい」 ─ 勝村委員(支払側)
P4 → 「個人情報が出てトラブルを生じることを危惧」 ─ 渡辺委員(診療側)
P5 → 「プライバシーが出るリスクが非常に高くなる」 ─ 嘉山委員(診療側)
P6 → 「めちゃくちゃな患者さんが一杯いる」 ─ 邉見委員(診療側)
P7 → 「保険者が全患者に渡すのが一番」 ─ 西澤委員(診療側)
P8 → 「医療内容や価格を教えてもらう権利がある」 ─ 白川委員(支払側)
P9 → 「無理矢理押し付けて渡さなければならないのか」 ─ 鈴木委員(診療側)
P10 → 「いろいろな観点が混ざって議論の収拾が付かない」 ─ 小林委員(公益側)