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ニュース〜医療の今がわかる

患者の「知る権利」と「知りたくない権利」 ─ 明細書で激論

■ 「無理矢理押し付けて渡さなければならないのか」 ─ 鈴木委員
 

[鈴木邦彦委員(茨城県医師会理事、日本医療法人協会副会長)]
 (前略)コストに関する件ですが、これ(明細書)はやはり、スーパーのレジとは違うと思いますね。やっぱり、個人情報が詰まったプライバシーですね、非常に......(個人情報を)持った媒体になりますので、これをですね、安易にですね、出すということはプライバシー保護の観点から......。

 それから、コストもですね、紙代もさることながら説明をする人をですね、人件費とかですね、そういうことも考えなきゃいけませんから、それはスーパーのレジのようにはいかないと思いますし......。
 それから、我々のように地方の医療機関では慢性期の(病院)ですね......、毎回毎回、定期的に受診される方とかいらっしゃるわけですけど、そういった方がもし(明細書を)希望されない場合、無理矢理押し付けて渡さなければならないのでしょうか?

 やはりその、資源のですね......、節約というか、そういう観点からも、ペーパーレスというのは時代の流れですから、それに逆行するようなことをですね、あえて強行されるっていうことは、私はちょっと理解できません。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 (苛立ったように)反対だってことですね?

[鈴木邦彦委員(茨城県医師会理事、日本医療法人協会副会長)]
 いや、反対ではありませんよ。(会場、笑い)

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 意味が分からんですよ。(会場、爆笑)

[鈴木邦彦委員(茨城県医師会理事、日本医療法人協会副会長)]
 ただ、ペーパー......、理解できないっていうことです。(中略)

 ▼ 支払側の中島圭子委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)は、明細書の説明に対応するスタッフの配置に対する何らかのサポートを「前向きに対処していかなければならない」と述べた。

[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
 私はこういうのはある理念で突き進むと、別の角度から見たとき、"毒"が出てくるんです。「すべて(の患者に発行)」というところに、私は非常に違和感があるんですよ。もちろん、欲しい人はどうぞ。勝村先生が欲しがっている情報はIT化になって、残りますから。(中略)
 「全部、すべての患者に」っていうところに僕は非常に違和感を感じているんですよ。「本当に皆さんが自分の健康に興味を持っているのかなあ」と、「(興味を持って)いるんであればもうちょっと医療費を上げてくれるんじゃないか」と思っているんですけれども......。

 データは残るし、勝村先生がやりたいことは今、全部できるんですよ、無理にやらなくても。ですから、「すべて」を外して、欲しい人にあげればいい。(中略) いらない人がゴミ箱に捨てればどこにプライバシーが飛んでいくか分からないという問題点もあるので、検証を少ししたほうがいい。(中略) レストランでも(領収証を)全員が持っていくとは思えないんです。ですから、「すべて」「強制」というのは非常に危険な......。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 嘉山委員、そういうお考えはよく分かるんですが......。従って、(検証部会で)検証するということは合意が形成されておりますし......。それを前提にして、今回、この(厚労省提案の)スキームをやることに対しては、ご同意頂けるということなんでしょうか? そうでないのか、その辺のところをはっきりさせていただきたい。

[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
 「すべて」というのは駄目ですよね。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 「すべて」が駄目だということになると、(明細書発行スキームの)基本的な骨格と抵触しますので......。

[嘉山孝正委員(山形大学医学部長)]
 「すべて」のラショナーレ(rationale)というか、根拠がちょっと......、今は電算化の時代でちょっと薄くなっているんじゃないか。

[遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)]
 分かりました。嘉山委員はそういうお考えだということ。勝村委員、どうぞ。

 ▼ この後、勝村委員が致命的な発言。


【目次】
 P2 → 「正当理由ない限り、全患者に無料発行」を提案 ─ 厚労省
 P3 → 「こういう方向でお願いしたい」 ─ 勝村委員(支払側)
 P4 → 「個人情報が出てトラブルを生じることを危惧」 ─ 渡辺委員(診療側)
 P5 → 「プライバシーが出るリスクが非常に高くなる」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P6 → 「めちゃくちゃな患者さんが一杯いる」 ─ 邉見委員(診療側)
 P7 → 「保険者が全患者に渡すのが一番」 ─ 西澤委員(診療側)
 P8 → 「医療内容や価格を教えてもらう権利がある」 ─ 白川委員(支払側)
 P9 → 「無理矢理押し付けて渡さなければならないのか」 ─ 鈴木委員(診療側)
 P10 → 「いろいろな観点が混ざって議論の収拾が付かない」 ─ 小林委員(公益側)

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