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「いいチームになった」 ─ 揺れた中医協の診療側に一体感

■ 「肉体はしんどかったが精神的には楽しかった」 ─ 邉見委員
 

[邉見公雄委員(全国公私病院連盟副会長)]
1. 全体的な感想
 私は(中医協委員になって)3回目の答申になりましたが、今回は肉体は大変しんどかったですね。しかし、精神的には楽しかったです。まず、肉体的にはこのタイトなスケジュール。
 総選挙、政権交代ということで、約2か月弱の(改定審議の)スケジュールが空白になりましたので、それを取り戻すために大変しんどかった。(兵庫から)片道4時間半、往復しまして、いつも「しんどいなー」と思ってました。

邉見公雄委員0212r.jpg 「精神的に楽しかった」といいますのは、まずプラス改定であったこと。これはもう、なんと言っても......、「マイナス」と最初からシーリングがあるのとですね、「プラス」というのは、かなり気分的に違います。これは大きかったと思います。

 次に、今度(中医協に)入られた方々を中心に現場に立脚した議論、建前論でなく、あるいは機関決定でなく、本当に医療の現場からの声が議論に上がったということで、私はこういうふうな中医協にぜひなってほしい。

 さらに希望を言うならば、今回加わられた3人の先生方に、(診療報酬改定の基本方針を決める厚労省の)社会保障審議会の医療部会、あるいは医療保険部会の委員になってほしいというふうに思います。今の社保審は死んでます、もう......。
 (大学病院は死んでいると言った)嘉山先生の言葉をそのまま使えばですね、死んでます。ブレーキとアクセスを一緒に踏んだりしてですね、全く機能がないように私は思っております。僭越かも分かりませんけれども、そのように思ってます。

 そこ(社保審の両部会)が医療政策の大きなことを決めてしまうわけですね。中医協に来るまでに「重要項目」ということで決めてしまうわけですから、それは逆じゃなかろうかと。
 この中医協のように、週に2回も3回も4時間を2回というように......、8時間、9時間やっているのと、向こうは1月に1回ぐらいやって決めるというのは、私はおかしいと。(社保審の両部会は)「中医協準備委員会」というか、「中医協抑制委員会」みたいなもんではないかというふうに思っております。

2. 入院基本料の底上げについて
 それから、病院のことを申し上げますと、(全日本病院協会会長の)西澤先生と一緒にやっております......、もちろん(日本医療法人協会副会長の)鈴木先生もそうなんですが、(11の病院団体でつくる)「日本病院団体協議会」は大きな、「二大要望項目」を出しました。
 
 1つ目は、入院基本料の大幅アップです。これは、「エイヤで上げてほしい」と。少なくても(2006年改定の)マイナス3.16(%)の分ぐらいは上げてほしい。マニフェストでもそういうふうに書いてましたので......、まあ、それは残念ですが......。

 10対1の......、各論になりますが、10対1(入院基本料)の看護必要度加算が5点付いている。あるいは、入院早期の加算が22点付いているとか......。先ほど、(点数が入った改定項目を)見ましたら、かなり全体的に付くようなものがありますので、これは評価したいと思っております。

2. 看護職不足への対応
 2つ目は看護と介護の融合。例えば、看護補助加算。これはもう......、7対1(入院基本料)、10対1(入院基本料)の病棟でも(65歳以上の高齢者が)たくさん入っているということが証明されましたので、これが付いたということも良かったのではないかというふうに思っております。

 また、(月平均)72時間夜勤の要件の緩和ですね。(月平均夜勤72時間要件を満たせなくても一気に点数が下がらないようになったので)これも、少しは(看護師不足に悩む)現場のことを考えていただいたのではないか。
 現場を知らない、教条主義的な考えで物事をやっておればですね、病院崩壊、地方の病院崩壊はどんどん進んでいくだろうというふうに思っておりますので、少し目配りしていただけたかなーというふうに思っております。

3. 次期改定への課題
 それから、悪かったというか......、先ほどの答申の時も申し上げましたが、今回外来の枠が400億ということになりましたので、安達先生が孤軍奮闘みたいな形になりましたので、我々は(同一の日に複数の診療科を受診した場合に2つ目の診療科でも再診料が算定できるよう求める)「複数科受診」ということは、今回は(主張の)順位を下げました。
 これ以上......、我々の共通の目標であります71点以上での病診(統一)、「再診料の統一」ということが一番の目的でしたので、次回からこれをやってほしいなあと思っております。

 それからもう1つ残念なのは、(看護師不足が深刻な地域で施設基準を緩和する)「地域の特性」(を考慮した措置)。これは非常に難しくてですね、「データを出せ」と言われても、なかなか出せないのですけれども、やはり次期改定に向けて地域の特性、何か(データを出したい)......。
 1号(支払)側とか公益(委員)の先生方に納得できるようなデータを出したいとなあと......。これは我々に課された宿題だろうというふうに思っております。

4. 手術料について
 3番目は、「ものすごい良かった」と思うことを2、3、言わせていただきたいと思います。1つは、手術手技です。これは(入院の改定財源)4400億円のうちの3分の1ぐらいが付くと巷間、伝えられておりますが......。

 今日も、もう一度問い質したようにですね、N数が少ないものだけに付いててですね、実際はほとんど上がらないということが過去何回もありました。それで、(今日の中医協で)先ほどのような質問をしたわけです。本当に付くのかどうか(を検証してほしい)。

 今、外科......。今日、足立政務官も「潜在的な崩壊に向かっている外科」というふうなことを言われましたけれども、もう顕在化しておるところは一杯ありますので、これは期待したい。

 (技術料の評価について審議するため、中医協のヒアリングに)外保連(外科系学会社会保険委員会連合)を呼んでいただいたということは......。私は、(ヒアリングで)「製薬業界の顔はしょっちゅう見るのに、外科の代表はなぜ来ないのか?」と会長に問い質しましたら、「あなたが外科だから」と言われましたけれども......。
 私は地方の田舎の病院長で、外科の全体を知っているわけではありませんので、外保連が来て非常にいいプレゼンテーションしてくれたということも良かっただろうと思っています。

5. チーム医療の評価
 それからチーム医療がですね、大分また評価されたり、あるいはいろんな専門職種が評価されたのも良かったかというふうに思っております。

6. 今後に向けて
  今回......、いろんな意味で「エビデンスに基づく議論」とか、「もっと根本的な医療のことを考えよう」というふうな中医協の枠外の話も出ましたので、私はこのような方向が本当に日本の医療(のため)、国民のためになることだというふうに信じておりますので、「今回の中医協は良かったんではないか」と総括いたします。あとは皆さんが判断されて......、することだと思います。(以下略)

 
 
 (この記事へのコメントはこちら

【目次】
 P2 → 「中医協を改革する」 ─ 診療側に一体感
 P3 → 「まだまだ納得できるものではない」 ─ 三浦委員(日薬)
 P4 → 「再診料の引き下げは残念」 ─ 鈴木委員(茨城県医師会)
 P5 → 「誤解の下で議論や対立があったことは残念」 ─ 西澤委員(全日病)
 P6 → 「日本の制度疲労が一番露呈している場が医療」 ─ 嘉山委員(山形大)
 P7 → 「元凶は財務省、越権行為のように踏み込んだ」 ─ 安達委員(京都府医師会)
 P8 → 「歯科の審議が少なく、消化不良だった」 ─ 渡辺委員(日歯)
 P9 → 「肉体はしんどかったが精神的には楽しかった」 ─ 邉見委員(全自病)

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