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ニュース〜医療の今がわかる

PMDA近藤理事長が動く 東大医科研・宮野悟教授(下)


宮野
「よく分からないのは、ビデオのVHSとβで競争があって、でも一本化されましたよね。ブルーレイとHDにもありました。最初は競争して、ある程度の所で統合して国際標準にしていくことがビジネスになると思っているんですけれど、電子カルテの市場にそういう力学が働かないのがなぜですか」

近藤
「日本国というマーケットに甘んじているんでしょう」

宮野
「そうしたら、例えばマイクロソフトが電子カルテの標準化に乗り出してますけど、それで一気に勝負が着いちゃったりしませんか」

近藤
「ただ、完璧なものは、まだ一つもできてないんです。それぞれ利便性があって。ただ、そういうメーカーの問題はさておき、患者のため国民のため人類のためということを考えると、医療行為とかのデータはなるだけ尤度を小さくしてデジタル化を徹底して、色々なものに使えるように持って行かないとと思います。それで初めて統合できるのかもしれないんだけれど、今は各医療機関でそれぞれ安い金で中途半端なものを入れています。例えば処方箋を薬一個一個ごとに分けてないんです。処方箋1枚が一つのデータになっているから、将来このデータを使って分析しようとしてもできないと思います。薬の種類、錠剤の数とか、何に使うかとか全部分けた状態にできると、もの凄くいいデータが出るんですけど」

宮野
「基本的には病院の経営者のための電子カルテシステムであって、患者さんの方を向いて開発された、患者さんの将来に向けて開発しているというコンセプトが全く」

近藤
「ない。だから私の前にいた病院(国立国際医療センター戸山病院)で、そういう統合をしようとやってた医師は、潰されてしまいました。彼は、MITにも行ったし世界で非常に高く評価されているんだけれど、性格がちょっとラディカルだったこともあって、色々な所から叩かれて潰されちゃったんです。でも彼の考え方は10年先を見据えていたと思います。だから韓国でも評価されてて、これをぜひ入れたいという風になったんですけれど、メーカーが商品化してくれなかったんです。だから、今、医療センターにはプロトタイプが不完全な格好で入っています。情けない話ですが、日本では革新的なものは、そういう格好で挫折していることが多いですよね。医療のデータベースのあるべき姿だったと思うんですけれど、彼は早すぎました」

宮野
「データベースがどこにあるか気にせずに、ユーザーから見て情報の空間が広がっているような、そういう風になる、それがクラウドですけれど。世界がそちらに向かっている時に、日本の医療システムがついていってない、向こうともしてないということですね」

近藤
「現場のお医者さんは、科学者というより日々のことに追われています。世界人類のための科学という考え方で自分の医療を見ていません。島国すぎるかもしれません。もう少し他国と国境を接している国の方が敏感なんだろうと思います」

宮野
「近代国家で国境というのは、ある水準の生活や社会システムを保証するために必要なものだったんでしょうけれど、今や邪魔に感じる人の方が多いかもしれない。薬なんか特にそうじゃないでしょうか」

(この記事へのコメントこちら)

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