がん研究費には仕分けが必要だ 土屋了介・癌研顧問
若干脱線しますけれど、癌研は民間で本当に頑張られたんだと思います。ここに来て早々に中川健・病院長の案内で1回、それから厚生労働省の若いお役人が見学に来た時にも同行して、もう1回、事務系職員の案内で病院と研究所を拝見しました。実によく工夫されています。
がんセンター中央病院も臓器単位とか工夫しましたけれど、癌研は5年後にできたというのもあるにせよ、さらに洗練されていて、機能と構造について、考えられたことのかなりの部分が具現化されていることがよく分かりました。何より事務職員がしっかりしているのにビックリしました。腰掛けでないという点も大きいのでしょう。厚生省のお役人を案内した時も、我々医者が気がつかない所を事務の方が自分の病院として気を遣って作られたということ、それを自分の言葉で的確に説明できることがよく分かって驚きました。築地の中央病院ではあり得なかったことです。
話を戻しますと、4月から国立がんセンターが独立行政法人化されて、3つの研究費をどうやって配分するのか、まだきちんと定まっていない状況です。がん研究助成金については、独法化前に本省の厚生労働科学研究費の担当者やがんセンター運営局で総長中心に話し合って、がんセンターが国から委託されている課題の解決を果たすために使う研究費であるという解釈で、総長が研究班を組織して研究を進めるタイプに衣替えしました。ですから、この19億円は、がんセンターの通常の予算の中にあります。本当にそれでよいのか、今後、おそらく問題になるだろうと思われます。
中でやられている研究課題が、果たして本当にがんセンターに全部下ろすべき課題なのかどうかという問題もあります。例えば、さっき話に出た国のがん対策に関する政策立案のようなことがどれだけやられてきたかというと、独法化の話が出てから慌てて運営委員会でやっと粗造りした程度です。それまでは、どちらかというと、全がん協を維持するための班会議でお茶を濁していました。全がん協のすべてが先鋭的な病院ばかりではないし、全がん協に属していない80大学病院の中にも、がん研究をやっている病院はたくさんあるんで、全がん協を中心に考えるというのは、やはり疑問を持たざるを得ません。廣橋前総長が4月からの方針として考えていたのは、都道府県ごとのがん診療連携拠点病院を中心にすれば、がん対策基本法にも則るんじゃないかということでしたけれど、そもそも診療連携拠点病院そのものについて、指定要件の問題とか、一体何をめざしているのかも分からないというような批判もありますから、これもやはり考え直す必要があっただろうと思います。
以上が助成金の話で、それ以外の2つの研究費は、独法化に伴ってファンディング・エージェンシー機能を本省に戻した形になっています。ただ、国立がんセンターの時も実務は事務官が本省から来てやっていたので、実質は何も変わっていません。何も変わってないはずなのですが、あちこちから「変わった」と不満の声が聞こえてきます。従来は、総長と担当審議官で仕切っていました。以前は安達さんが、がんセンター運営局長兼審議官でしたけれど、今の麦谷さんは色々と担当をたくさん抱えているので、事実上、がん対策推進室長が仕切ることになっていて、漏れ聴くところでは、嘉山先生に相談することもなく、かなり彼のワンマンぶりでいじくろうとしているようです。