村重直子の眼11 薗部友良・VPDを知って子供を守ろうの会代表(下)
村重
「ニュージーランドでは2005年の法改正で、医療事故の補償において過失を探すための調査をしなくなり、他の「無過失」補償のスキームに並んだということなので、因果関係についてもゆるい認定なのかもしれません」
薗部
「グレ-ゾーン症例の場合が難しいですね。最新の科学のエビデンスを認定基準に用いるのか、それとも昔のままの緩い基準を継続するのか、悩むところですね」
村重
「補償金を払うかどうかというときの因果関係の判断には、社会的な要因が大きく影響しますよね。因果関係のグレーゾーンは、どこまで行っても科学的にはグレーゾーンなので、パチっと線引きするのは社会的な要因で決まってるわけですよね。そういう時にどちら側に判断が傾きやすい周りの環境(社会的要因)を作ってあげるかだと思います。無過失補償・免責制度があれば、因果関係がグレーゾーンであっても幅広に認めて補償金を払ってあげていいわけです。日本の現状は、過失を前提としていて、免責制度がないので、補償金をもらってもさらに裁判で誰かの責任を追及しようということになり得るのが問題なのではありませんか。補償金をもらうのと、裁判で賠償金をもらうのと、両方はダメよ、どちらか一方にしましょうという国民の合意形成ができればよいのですが」
薗部
「原因がワクチンであれ、そうでないであれ、重い症状が出た方々が不幸であることには違いありません。アメリカから帰国した小児科医によると、科学的に認められるものは当然に認められて、アメリカでも科学的に認められないものでもある程度の重篤性があれば認めるというのがあるそうです。問題は、日本でもそういう方をどこまで認定するかというのは議論することが大切ですが、認定された方の中にはグレーゾーンの方々が含まれているということを皆が知るようになれば、ワクチンの安全性の誤解が少し解けると思います。ワクチン訴訟の判決を含めて、成熟した社会にあった報道になってほしいと願っています」
村重
「データをきちんと出させないといけませんね。現状では、線引きできない所を社会的な要因で無理やり線引きしているにもかかわらず、そこに科学の仮面をかぶせて、まるで科学的に線を引いたかのような、そういうメッセージが国民に伝わってしまっています。情報の公開の仕方をかなり気をつけないといけないですね」
薗部
「そういうものがあれば、実際の副反応は少ないんだということが言いやすいです。しかし今の日本では接種後の有害事象を医師に無理矢理判断させて、医師が否定出来ないとしたもの(常識的に言えば関係ないもの)も総て副反応として記載されます。世界中どんな医師でも、ショックや局所反応以外の症状は、真の副反応かどうかの判断は不可能なはずです。添付文書に記載するに当たって、科学的に正しい真の副反応以外は、アラート(警告)として、このような有害事象報告があるが、実際に真の副反応かどうか不明であるので、今後の発生数の動向などから判断していくと記載してほしいと思っています」