医療政策に総意形成プロセスを-森臨太郎氏インタビュー②
■「診断」は通過点
熊田
「今回、診断に関する項目を除外されたということですが?」
森
「診断を導き出すためだけの項目は除外した、ということです。ガイドラインの目的は診断の精度ではありません。例えば未熟児動脈管開存症を診断するのに、超音波を使うのと、聴診器とでは、どちらが精度高いかというと超音波に決まっています。医学の世界では多くの場合侵襲的な検査ほど精度が高い傾向にあります。しかしながら、侵襲的な検査をすることによって患者さんにとっては不快なことや有害な影響もありますよね。ある検査をすることによってどれだけ診断精度があり、さらにその結果がどういう治療方針に影響するかという事、そこまで含めて考えた上でどうするか、ということなのです。『こっちの検査の方が精度が高いからよかった』と言うなら、突き詰めていくと患者さんが亡くなって病理解剖をすれば最も正しい診断ができるということになってしまうでしょう。そうすると、患者さん中心の視点が崩れていきます」
熊田
「患者が何を望んでるかとか、治療のゴールをどこに置くかとか。QOLを考えると、治療法も変わってくるかもしれないですよね。そうなると、診断は患者さんがよくなるための過程であって、それが目的になるものではないということでしょうか。診断に重きを置いた日本のガイドラインが滑稽に見えますね」
森
「結果ありきですからね。診断からスタートして治療行為があり、そのプロセスを経て結果まで行って初めて、『こちらがいいね』ということになるわけですから。あくまで診断は目的じゃなくて通過点なんですね」
熊田
「今回のガイドラインはとても画期的だと思います。他の診療科にも参考になるところがあると思うのですが」
森
「新生児医療はご存知のように、日本の医療の中でも端っこの端っこにあるので、このガイドラインを作ったから参考にして下さいとは口が裂けても言えません(笑)。皆様がどう捉えるかですよね。私達としては、社会実験としてこういうものを提示しましたと。それについてその後どう思うかは日本の医療界の皆さんがお考えになったらいい事です。私達は私達でできることを発信していきます。参考にされたいなら喜んで共有します。それはどう捉えるかは、医療界の皆さんがどう考えるかではないかなと思います」
熊田
「医療界自身がこのガイドラインをどう捉えるか......」