「標準医療の底上げで、救える命を救う」森臨太郎氏インタビュー③
■集金配分と提供システムの権限を集約し、改革を
森
「大きな仕事したいと思っている人はいるので、フルタイムでしないといけない仕事なら、給料を保障していく事などが考えられますね。日本の場合は、保険という「集金」と、診療報酬の「分配」という集金と配分のシステムがありますが、そこと医療提供体制を担当する部門が大きく違っています。この権限が分断されていると大きな改革はできません。その時にやらないといけないのは、保険の集金配分システムと提供システムなどの権限を集約させるという事です。この地域における医療提供体制や予算配分含めて、一度権限を同じところに戻さないといけません。日本はあちこちに権限があるので、こちらを動かそうとするとあちらもと、同時に動かせないんです。それが日本の今の医療提供体制の問題点です」
熊田
「でも、権限が集約されるともっと怖い気もしますけど......」
森
「権限を集約すると暴走する可能性があるので、そうしないためには国民の直接選挙による監視が必要です。そのシステムを埋め込みながら、権力を集約させる事が必要かと思います」
熊田
「どこに集約されることになるのでしょうか?」
森
「日本でこれをやろうとすると多分道州ごとなんです。例えば近畿州があるとして、その政府下に保健委員会のようなものを置きます。保健委員は政府からは独立していて、その委員を皆で選びます。委員会は保険者と被保険者をまとめ、医療提供体制などにも権限を持ちます。そうするとお金の出方と入り方も変わってすごい権力になるので直接選挙にします。それぐらいの単位で見ていくという事ですね」
熊田
「道州制にする理由は何でしょうか?」
森
「優秀な人の数はそんなにたくさんいないということと、道州より小さくすると都道府県になりますが、それでは現在の生活感覚から言うと狭いです。医療圏は生活圏になるわけですが、その生活圏で考えると大体は関西や関東という枠で皆捉えていて、一つの都道府県に収まっていません。一般的な人が一生そこで過ごそうという生活圏と考えると、道州制は理にかなっています。国や地域によって事情が違うとなると、エキスパートの人が必要になります。実務の人も要るので、官僚が必要ですが」