「標準医療の底上げで、救える命を救う」森臨太郎氏インタビュー③
■保険者と被保険者を一致させ、当事者意識を
熊田
「なるほどですね、それぐらいの単位が考えやすいと。今は当事者意識と言いますか、『社会=自分』と考える意識が薄いように思います。それが例えば、今問題になっている教育とか農業とか食とか、どの分野でも共通した問題だと思います。みんなが参加していく意識ができてこないと、どんなに政権が代わろうと、日本は変わらないと思っています」
森
「納税者の視点を持たないと、事業は膨らむだけで話になりません。未来の子供に負担を圧しつけているだけで、社会保障は重くなる一方です。ですからさっきお話しした、保険者と被保険者をグループとして一致させないといけません。そうでなければ当事者意識は生まれません。日本国だと広がり過ぎだから、見える仕掛けにするためにもある程度地方に降ろさないといけません。投票行為として参加しているところがないといけないです」
熊田
「イギリスでは医療の中でどの分野にどれぐらいお金を投資するのか、そういうのは決められていたりするのですか?」
森
「ある程度はありますが、医療は縦と横の割り方があるのでそう単純ではないですね。横軸に制度やシステム、医療提供体制があります。そして縦軸に小児や高齢者......など、トピックごとにあります。これはマトリクスなのでこうお金を使うとはなかなか言えません。もちろん国として政治判断で、子どもを大切にとか、高齢者を大切にとかはあるので、予算をその方向にシフトするというのは当然あります。日本でもそうですよね」
熊田
「日本はその時話題になっているものとか、予算が付きやすいところに付くようになっていると思います。ただ、その時々の情勢に左右されるやり方では限界がありますし、お金さえあれば医療を尽くせるようになっています。でも財源は限られていて、国民は医療にどこまで求めていくのか、医療界はどこまでやっていくのかと、考えていかないといけないと思います。なかなかできないとは思うのですが」