村重直子の眼13 大西睦子・ハーバード大学歯科医学校研究員(中)
村重
「医者どうしも、他のコメディカルも、スタッフはたくさんいるんですけど、それこそみんなギリギリ精一杯の所で生きているので余裕がなくて、患者さんに優しくなれないんですよ。患者の立場からすると日本の方が絶対にいいですよね。私が日本人だからそう思うのかもしれないですけど」
大西
「私は、アメリカの医療は、かなり病院による格差があるように思います」
村重
「もちろんありますよね。周辺の病院から送られてきた患者さんを診て、びっくりするようなこともありました。患者にとってはアクセスが悪いんですよね。アメリカのほんの一部はたしかに実験的で先進的で進んでいる医療を受けられる、そういうものが存在するのは確かなんですけど、じゃあどれだけの国民がそこにアクセスできるのかって言ったら、ほとんどがアクセスできないうちに一生を終えるんじゃないでしょうか。日本のようにアクセスが良いのと、どっちがいいのかと思いますよね、本当に。でも、日本の歴史や国民性に合わせてできてきたものなので、日本人にとってはその方がよいのでしょうね。アメリカ人とは求めるものが違うから」
大西
「本当に情報も分からないし。隣の州に行ったら」
村重
「違う国みたいですもんね」
大西
「そう、ラボのメンバーも次々と変わっていきます。遠くに移動してしまうと、引き継ぎは大変難しくなります。アメリカにきて、決別という言葉の本当の意味を知った気がします。私が日本を離れた日は、帰国すれば必ずまたみんなに会えると思っていましたし」