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「医療安全対策」の報酬はいくら?

9月8日の中医協2.jpg 病院の感染症対策など医療安全の取り組みに診療報酬がほとんど付かない。病院運営に必要なコストを計算した上で適切な診療報酬に見直すよう求める声もあるが、厚生労働省の腰が重い。(新井裕充)

 病院に行くと、入り口に総合案内のコーナーがあって、受付の女性が親切に教えてくれることがある。
 また、身体の不自由なお年寄りがトイレの場所を探していると、近くまで付き添って案内してくれる職員もいる。

 しかし、そうした案内行為に対して「受付基本料」や「トイレ案内加算」などという報酬はない。院内の清掃や廃棄物の処理、警備員の配置など、これらに掛かる費用はたいてい病院の持ち出しになる。感染症対策など医療安全への取り組みにも診療報酬はほとんど付かない。

 社会保障費の抑制策が進む中、医療機関の生命線ともいえる人件費が診療報酬で賄われないとの声がある。例えば、院内感染を防止するため専門の看護師などを配置している病院は、「医療安全対策加算」を入院料に上乗せすることができる。しかし、入院初日につきわずか500円という"雀の涙"(2010年度改定前)。

 しかも、算定要件が厳しいので、取れる病院は限られている。全国に8700近くある病院のうち、算定できたのはわずか1522施設(08年)という、まさに"絵に描いた餅"の設定。08年の算定回数は約27万回だったので、この加算に使われた医療費は約1億3500万円。専従の看護師に支払う給与が年500万円とすると、単純計算で27人分の給与しか賄えない。


【目次】
 P2 → 「診療側VS支払側・公益側・厚労省」の中医協
 P3 → 「入院基本料」の議論など優先課題を合意
 P4 → 「積み上げの試算はやりたい」 ─ 安達委員(診療側)
 P5 → 「コスト調査はものすごい手間が掛かる」 ─ 白川委員(支払側)
 P6 → 「診療報酬点数を分析して議論すべき」 ─ 西澤委員(診療側)
 P7 → 「余分な時間があったら、現実的な話を」 ─ 白川委員
 P8 → 「正しい情報を出していく」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P9 → 「あるべきコストは何倍にもなる」 ─ 遠藤会長
 P10 → 「挙証・反証という構造で議論を」 ─ 森田委員(公益側)

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