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「医療安全対策」の報酬はいくら?

■ 「診療側VS支払側・公益側・厚労省」の中医協
 

 昨年11月18日、診療報酬改定などを審議する中央社会保険医療協議会(中医協)で、診療側の邉見公雄委員(全国自治体病院協議会会長)が「以前の感染対策や医療安全と今の病院における状況が一変している」とした上で、「各部屋の入り口に消毒剤を置くなど、少々の点数では賄えないぐらい」と訴えた。

 また、鈴木邦彦委員(茨城県医師会理事)も、「うちの病院で1月やっても3万5000円にしかならない。これで1人(安全対策の)専門家を雇えというのは無理」と述べ、「医療安全対策加算」の要件を緩和することなどを求めた。

 これに対し、支払側の白川修二委員(健保連常務理事)は「経営をしている限りはどういう経営体であっても責任を持たなくてはいけない」と一蹴。小林剛委員(全国健康保険協会理事長)も、「医薬品の安全対策や院内感染防止を進める取り組みは非常に重要で法令上求められており、当然進めなくてはいけない」として、病院として当たり前の取り組みであることを強調した。

 こうした議論を踏まえ、10年度改定で厚労省は「医療安全対策加算」を850円と350円の2つに区分。専従の看護師らを配置できない中小病院などでも同加算を取れるようにしたが、たったの350円。厚労省はこの改定をもって、「医療安全対策の推進」などと謳っている。

 医療安全対策に役立たない診療報酬に非難の声もある中、9月8日に中医協総会が開かれた。診療側は病院運営に必要なコストの分析などを求めたが、厚労省はいつものように沈黙を決め込み、支払側委員が強く反発した。

9月8日の中医協.jpg コスト調査について、白川修二委員(健保連常務理事)は「ものすごい手間が掛かる」と厚労省の事務作業量が増えることを懸念。「余分な時間を掛ける暇があったら、もう少し現実的な話をしたらどうか」と退けた。

 これに対し、診療側の嘉山孝正委員(国立がん研究センター理事長)は「正しい情報を出していくという意味でコストを積み上げる。一度出してみないと、何にも工夫ができない」と求めたが、公益委員の遠藤久夫会長(学習院大経済学部教授)が発言をさえ切り、こう言った。
 「あるべきコスト論が入ってくると、『あるべきコストとは何ですか』という話になってきて、そうすると何倍にもなる可能性があるということを周知しておかなければならない」

 医療費抑制策は変わらない。診療側の要望に厚労省が動かず、支払側と公益委員が寄ってたかって診療側を封じるという、"まさに中医協"というシーンを久しぶりに見た。詳しくは4ページ以下を参照。


【目次】
 P2 → 「診療側VS支払側・公益側・厚労省」の中医協
 P3 → 「入院基本料」の議論など優先課題を合意
 P4 → 「積み上げの試算はやりたい」 ─ 安達委員(診療側)
 P5 → 「コスト調査はものすごい手間が掛かる」 ─ 白川委員(支払側)
 P6 → 「診療報酬点数を分析して議論すべき」 ─ 西澤委員(診療側)
 P7 → 「余分な時間があったら、現実的な話を」 ─ 白川委員
 P8 → 「正しい情報を出していく」 ─ 嘉山委員(診療側)
 P9 → 「あるべきコストは何倍にもなる」 ─ 遠藤会長
 P10 → 「挙証・反証という構造で議論を」 ─ 森田委員(公益側)

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