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治療が消える 治療を守る⑨

医療機器や医療材料の供給に関する構造的課題を探っていくコーナーです。

疑義解釈委員会 出月康夫・委員長に聴く

 前回、医療機器や医薬品などの保険収載の可否について、厚労省から日本医師会(日医)の疑義解釈委員会という所へ諮問が行われていること、しかし委員会の中身はベールに包まれていて日医も取材拒否であることを説明しました。幸い、疑義解釈委員会の委員長を務める出月康夫・東大名誉教授に話を聴くことができました。

いでづき・やすお●東京大学名誉教授。元日本医学会副会長。1934年、東京都生まれ。1960年、東京大学医学卒業、1984年、同教授。日本外科学会名誉会長、日本臨床外科学会名誉会長。


――日医の取材の嫌がり方で、よほど知られたくないことなんだろうと思いました。

隠さないといけないことなんか何もないですけどね。

――そもそも疑義解釈委員会とは何ですか。

日本医師会会長の諮問機関です。新しい医薬品や医療機器なんかに保険を適用してよいかどうかというのを、厚労省から医師会に諮問するわけですね。それを医師会がまた疑義解釈委員会に下ろすので、主として学術的な立場から保険に採用しても大丈夫かどうかということを検討し、その結果を医師会長に答申して、それを厚労省に戻すシステムになっていると思います。古くからある学会を中心に25の学会から保険を担当している先生が、学会の推薦で出てきます。あくまでも学会の意見を代表して意見を言っていただく委員会なんですね。一応は臨床の各領域をカバーできるように選んでいます。

――諮問の事柄は日医の事務局が準備しているんですか。

それは医師会ではなくて、厚労省からですね。いつも医療課と経済課は出ているかな。

――――場合によっては保険収載が認められないこともありますか。

認められなかったものはほとんどないと思うけれど、ちょっと待てというのはありますね。例えば添付文書の記載が十分でないから、ここをもう少しちゃんと書けという、ご意見も出ますね。それから、薬事の方で審議をして有意差があるという風に言っているんだけれど、実際に生のデータを見ると有意差がないよなんてのもありますね。薬事だって、そう言っちゃ悪いけれど、全領域をカバーしきれてないという状況はありますから。ただ、薬事で通したものは保険も通すというのが、原則は原則なんですよね。保険で収載すると誰が使うか分かりませんから、専門家でない人たちでも安全に使えるかということは、かなり神経質にチェックしますね。大体1カ月ほど前に資料をもらって、1カ月を超えない範囲で、意見を出してもらうということになってます。疑義解釈委員会で、保険採用が遅れることはめったにありません。

――適応拡大も議題になりますか。

してますね。大体は適応が厳しすぎるのが多いですからね、現場の学術的に専門の立場から見て適応拡大してマズいというより、むしろもっと適応を拡大しろという要望が学会から出てくるくらいでね。そういう学会からの要望も医師会長に取り次ぎます。

――なぜ厚労省の委員会でなくて、日医にあるんでしょう。

厚労省というのはお役所ですから、そこの委員会にしてしまうと、行政の範囲内でしか議論できませんよね。厚労省は、私も随分付き合いましたけれど、都合のよい意見やデータは大々的に推進しますけど、都合の悪いことは握りつぶしますからね。本当に中立的なサイエンティフィックな立場からものを言えない場合があるんですよ。だからそういうようなことを防ぐためには、医師会がよいかどうかは分かりませんけれど、別の機関でやるべきだと思いますね。薬事は、厚労省の委員会でやっているわけですからね。

――薬事の委員会のカウンターパートナーみたいな感じですか。

そういう感じもありますね。あちらも学会の専門家が集まってますし、疑義解釈委員会も学会の人たちだけで、日医の人は入ってませんからね。

――日医の意見に左右されることはないわけですか。

されません。そう言っちゃ悪いけれど、医師会が何か言ってきてもむしろ反発する先生が多いくらいでね。医師会の担当理事が必ず陪席していて、意見を述べることがないわけじゃないけれど、ほとんど何も言われないですね。

――それで日医にメリットはあるんでしょうか。

日医は学術団体だと称しているでしょう。だから、(傘下の)日本医学会と、こういう学会代表の集まっている委員会は、彼らにとってもメリットがあるわけですよ。そうでなきゃ、学術団体だと言っても誰も信用しないから。

――だいぶ疑問が晴れました。何か言っておきたいことがありましたら。

世界に冠たる国民皆保険なんですが、適用対象を無制限に増やすわけにいかないですよね。新しい技術、薬、そういうものはどうしても費用がかかるわけですから、片っ端から入れてたら、これはいくら医療費があっても持たないですよ。誰だって、新しいもの、よいものをできるだけ早く使いたいというのは、当たり前なんですけれども、それをどこまで保険の制度の中に組み込むかということはね、もう考え始めないと。そういうことを、お役所はある程度分かっているんだけれど、国民の方々がそこまで分かっておられないんだと思います。こんないいものを何で早く使わせないと、それは当たり前の話なんだけれど、ではそれだけの負担を覚悟しますかということを決めてもらわなきゃ。そのためには、もう少し国民、患者さんに情報を正確に出さなきゃいけないですね。厚労省とかマスコミの情報は、かなり偏りがあると私は思いますよ。

――情報を出すと言いますが、疑義解釈委員会も非公開で、議論の内容が全く分かりません。

実は、審議状況というのは公表されているんですよ。誰がどんなことを言ったというのは速記録がありますから。

――それは日医のホームページか何かに出てるんですか。

ホームページに載せてはいないと思うけれど、冊子にして出していて、ほしいと言えば誰にでもくれると思いますよ。ただ、今年審議したものは恐らく3年後とか4年後でないと整理が追いつかないでしょうけれどもね。あることはある、出してはいますよ。

――後から歴史の検証は受けるということですか。

そういうことは、できると思います。

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