文字の大きさ

過去記事検索

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。
特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

免疫きほんのき 3

抗原抗体反応の落とし穴。

 抗体の登場は、非自己排除の効率と確実性をぐっと高めた反面、しばしば暴走を起こして私たちを苦しめるようにもなりました。アレルギーです。
 アレルギーの原因となる免疫グロブリンとしては、IgEとIgGが知られています。一般的なのはIgEのほうで、アレルギー喘息、アトピー性皮膚炎、スギなどの花粉症やハウスダストアレルギーなどへの関与がわかっています。元々は体に有害でない物質に反応し、排除しようとした結果、咳や鼻水、目や皮膚のかゆみや炎症といった症状が体に現れるのです。
 どうしてIgE抗体は暴走してしまうのでしょうか? 本来、IgE型の免疫は、寄生虫や吸血ダニから身を守るために哺乳類が獲得したものでした(皮膚が軟らかいのでやられやすかったんですね)。さらに近代化で清潔な生活環境が整備されると、細菌等に対抗するための免疫細胞が以前よりも減り、相対的にIgE型抗体を作り出す免疫細胞が増えてきました。ところが実際は寄生虫や吸血ダニがいません。そのために、寄生虫や吸血ダニの酵素に似た構造をもつ家ダニやカビ、花粉などに反応するようになってしまったのが、アレルギーの原因とされています。
 アレルギー症状に対して医療機関でよく処方されるのが、ステロイド剤です。免疫システムの過剰な働きを抑えて次の炎症を起こさせない「免疫抑制作用」と、いま起きている炎症を抑える「抗炎症作用」があるからです。ステロイド剤が細胞の核の中に入り込んで、ある種の化学反応を阻害する物質を作らせます。しかし、これは本来なら自然に分泌される副腎皮質ホルモンと同じ作用を無理に起こさせるもの。ですから、過剰に使えば副作用も少なくありません。もちろん、うまく使えばアレルギー症状をすっきり抑えることができますから、医師の指導に従って正しく使うことが肝心です。

一日にして成らず

(本文)
 以上、3回にわたって免疫の「きほんのき」を見てきました。いかがでしょうか。「きほんのき」とは言いながら、やはりそれなりにややこしかったかもしれません。それもそのはず。一番初めに申し上げたとおり、免疫には、まだまだ専門家でもたどりつけない未知の領域がたくさん広がっていて、なおかつ複雑に入りくんでいるのです。
 コラムでも触れていますが、免疫に関する事柄のほとんどは、私たちが一朝一夕にどうこうできるものではありません。そのことだけ念頭におきながら、あとは一般に言われるような健康的な生活習慣を日々実践することが、体調管理の王道です。そうすれば、ひょっとしたら「免疫力向上」ということにもなってくるのかもしれませんね。

「体をあたためて」「食べ物で」免疫力UP? そもそも「免疫力」って何なのか、が問題ですね。免疫作用を分解していけば、全ては物理的・化学的作用の連鎖です。ならば体温が高いほうが反応は進むかもしれません。白血球が主役なら、体をあたためて血行をよくするのも悪くないでしょう。また、免疫細胞の材料はたんぱく質、産生にもエネルギーが必要ですから、栄養をしっかり摂るべきは基本です。ただ、「暑いのも我慢」と無理しても体を壊しては本末転倒、「生姜は体をあたためる」とそればかり食べて本当に「免疫力」が上がるかはわかりません。そのあたりを、よくよくお考えください。
  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
サイト内検索
掲載号別アーカイブ