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がん① きほんのき(上)


だからこその早期発見、早期治療。

 ところで、細胞の塊があっても、ずっとその場(原発部位)に留まって浸潤も転移もみられない場合は、「良性腫瘍」と呼ばれます。それでも脳腫瘍など、発生した部位によっては身体の機能にかかわったり、ともすると生死に直結しますから、そんな場合にはできれば速やかに切除することになります。
 一方、「悪性腫瘍」つまりがんは、放っておけば普通は遅かれ早かれ命にかかわるようになってきます。がん細胞は1個が2個、2個が4個と倍々に分裂して増え、1cmになるまでは10年ほどかかるのが普通ですが、そこから命にかかわる大きさになるまでは数年しかかかりません。
 「命にかかわる」とはどういうことか。それを握っているのが、がんの特徴であり、治療をより困難にしている「浸潤」「転移」という二つの性質と、その結果としての「再発」です。

やっかい者兄弟、浸潤と転移

 最初の「浸潤」というのは、普段の生活ではなかなかお目にかからない言葉ですよね。がん細胞が周囲の組織を破壊しながら、まるで浸み込むように広がっていくことです。そうなるとがんを切って取り除いてしまおうにも、境界がはっきりしません。そればかりか、実は目に見えている範囲を超えて、正常細胞の中までがん細胞が散らばって広がっていることも珍しくないのです。その場合きちんと切除できたと思っても、残っているがん細胞が先々大きく成長してきます(「局所再発」といいます)。
 また「転移」とは、体の離れた部分にがんが飛び火して広がることです。ただし火の粉が飛んでいっても、そこで着火しなければ「転移」とはなりません。飛んだ先に新しく腫瘍を形成して初めて「転移」成立です。しかも肉眼で見える大きさまで成長してようやく「転移」と認識できます。ちなみに、がんが発見された時点では目に見えない微少転移も含めると、7割のがん患者に転移があるとされています。ただし初期の段階では免疫が打ち克ったり自然に死んでしまって、大きくならずに済むことが多いのです。
 というわけで、がんは浸潤によって組織の間に浸み込んだり、また血管やリンパ管を経由して知らない間に体のあちこちに転移して、体を急速に蝕んでいきます。早期発見とは言えない、ある程度進行したがんだと、手術でがん細胞を取り除いたように見えても、微少ながんが局所に残っていたり微小転移がある可能性が高まります。そして後々はっきりしてくる「再発」が怖い、ということです。
 いずれにしても、がんは放っておけばおいただけ成長して、せっかく切除できても再発のリスクも高まり、治療が難しくなっていきます。早期発見、早期治療に勝るものはないのです。

がんの顔つきも重要です  一般に、がんの「進行度」を表すにはステージ分類が使われます。がんの種類ごとに細かい内容は違いますが、概ね、Ⅰ最初に発生した場所(原発巣)に留まる「限局」、Ⅱ近くのリンパ節への転移、Ⅲ近くの臓器への浸潤または少し離れたリンパ節への転移、Ⅳ遠くの臓器への転移、の4段階。治療方針を決める上で最も大切な分類です。 ▽と同時に、がんの振る舞いの悪さ(悪性度)を示す「グレード」も重要な指標です。これは、腫瘍の大きさや、がん細胞やその並び方がどれほど正常細胞とかけ離れているか("顔つき"の良し悪し)といった複数の観点から、増殖速度や転移のしやすさ、患者を死に至らしめる能力等を推し量ってランク付けしたものです。 ▽さらに患者の体力や年齢なども加味し、総合的に予後を予測した上で、治療方針は決定されることになります。
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