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がん① きほんのき(上)

5年の壁を越えられるか。

 「5年生存率」という言葉も、がんではよく聞きますよね。治療開始から5年後の生存が、がん治療の一つの指針とされています。
 多くの種類のがんでは、治療してもがん細胞や組織が残ってしまうと、たいてい2~3年、遅くとも5年以内に、肉眼でわかる大きさまで成長します。つまり、手術をしても、浸潤などによって目に見えないがんが潜んでいたり、気づかないうちにどこかの臓器に小さく根付いていた場合、ほとんどが5年以内に「転移」「再発」となるのです。逆に言えば、たいていのがんでは、治療から5年以上も経ってからの転移・再発はごくまれで、新たながんの発生頻度と変わりません。
 一方、がんが転移・再発した場合、根治は非常に難しくなります。目に見える大きさに成長しているのですから、根付いてから長い年月が経過しているということ。そうなると、既に体のあちこちに広がっていると考えるのが自然です。もはや全滅させるのはほぼ不可能。発見するたびに切ったところで、終わりのないモグラたたきと一緒です。その間にも体は蝕まれ、急速に体力が奪われていきます。
 以上のような理由から、治療から5年経過しても転移・再発なく生存している場合、「治った」(治癒)と考えてよいとされているのです。つまり5年生存率=「そのがんが治る可能性」というわけです(ただし、乳がんなどゆっくり進行するがんでは10年以内の再発も比較的多いために、「10年生存率」を見るほうが適切とされています)。
 ちなみに当然のことながら、治療法や診断方法の進歩によって5年生存率も年々向上してゆきます。ある時期を境に急に大幅に成績が向上している場合、5~10年ほど遡ってみると、ある年に画期的な治療法や診断方法が導入されていたりします。  
 もし現時点での最新の情報に基づく5年生存率等を知りたければ、まずは主治医にご相談を。何より、一般論としての可能性の話でなく、個々のがんの状況に沿った的確なアドバイスをもらえるはずです。

後悔しない心構えと決断

 さて、そうはいっても実際に転移・再発が見つかったら、その時はその時です。
 残念ながら先にも申し上げたとおり、転移・再発がんは、原則として根治は困難です。だったら、「できるだけQOLの高い状態で、いかに長く共存していけるか」を考えるほうが現実的と言えそうです。
 ただし、治療をしながらの生活は、やはり楽なものとは言えません。人によっては、先が見えない苦しい毎日を過ごすより、「一度の人生、短くても思い切り楽しみたい」と、割り切った決断を下すこともあるでしょう。それもまた人生です。
 そもそも最初に確認したように、歳をとればがんになる可能性は高くなります。がんは老化現象の一つと言ってしまってもいいくらいです。進行の遅いがんの場合、知らないままにがんを抱えて生きている人も実は少なくないかもしれません。昔なら、そのまま「老衰」として亡くなっていった方が、今よりずっと多かったはずなのです。それを念頭に置いておけば、気持ちにもゆとりがもてるのではないでしょうか。
 ただ、後悔だけはしたくないですよね。治療の多くは後戻りができません。早期発見・早期治療は基本ですが、通常のがんでは、発見・診断までに長い年月をかけて育っています。ですから普通、数週間の違いでは大きく結果は変わりません。闇雲に治療を急ぐことより、治療開始前にきちんと情報を集め、よくよく考えて決めたいものです。

5年生存率 ほんとうのところ  5年生存率は、もっと書けば、「がんの治療開始から5年後に、再発している・いないにかかわらず生存している人の割合」です。つまり生存者数には、5年以内に再発した人や、5年経っても抗がん剤や放射線療法などを続けている人も含まれています。また逆に死亡数には、5年の間にそのがん以外の原因で死亡した人も含まれています。 ▽ですから厳密には、5年生存率は「そのがんが治る可能性」とも「そのがんで死なない可能性」とも一致しません。ですが、完治はしていないけれど生存している人と、他の原因で死亡した人は、おおよそ相殺されてしまいます。結果として5年生存率と治癒率は近い値になるのです。
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