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治療が消える 治療を守る⑭

医療機器や医療材料の供給に関する構造的課題を探っていくコーナーです。

機能区分別の問題点

 医療機器の価格を決める際に、「適切な評価の実施」を求めている業界団体の一つ、日本医療機器産業連合会(医機連)の荻野和郎会長は、昨年11月30日の第一回医療イノベーション会議で、「適正な評価」の具体例として、機能区分別収載制度の改善、適用区分の見直し、海外価格参照制度の再検討、の3点が必要だと強調しました。
 分かりやすくするため、皆さんにおなじみの家電量販店の光景を思い出していただくところから始めます。テレビでもDVDでもパソコンでも何でも構いません。製品の一般名を示す札が天井からブラ下がっていて、その下の目立つ場所に新製品(改良品)がドーンと陳列されている状況を思い出してください。脇に、ひっそりと型落ち品が並んでいます。さて、値札に書かれた価格は、改良品と型落ち品、どちらが高いでしょう?
 もう少し記憶を呼び覚ましてください。改良品にも色々なメーカーのものがありますよね。値札は、どこに付いているでしょう?
 恐らく、製品一つずつに微妙に異なる値札が付いていて、型落ち品は、改良品よりも安い値札が付いているはずです。
 ところが、そういう生活実感の当てはまらない世界があります。医療機器の保険償還価格です。もし医療機器の量販店があって同じように売り場を眺めたとしたら、値札は天井から1個ブラ下がっているだけです。つまり、メーカーがどこだろうが、改良品だろうが型落ち品だろうが関係なしに、同じ機能を持つと判定された製品は全部同じ価格になっています。
 これが「機能区分別収載制度」です。

値引きのループ

 当然のことですが、改良品と型落ち品が同じ価格だったら、型落ち品など誰も買いません。ですから実際には、医療機関へ販売される際にお店の人が陰でコッソリ値引きしています。保険から支払われる償還価格は変わりませんので、医療機関にとっては差益が出ることになります。一般論として最新のものを使ってもらいたい患者と、古いものを使った方が利益の出る医療機関という構図ができてしまっているのです。医師の多くは職人気質で少しでも良い機器を使いたがりますので、必ずしも患者にツケが回っているとは限りませんが、構図としては利害が必ずしも一致しないことになっています。
 さらに摩訶不思議なことがあります。型落ち品の値引き価格に引っ張られるように、天井から1個だけブラ下がっている札の価格も2年に1度引き下げられるのです(コラム参照)。つまり、今後出てくるであろう改良品の価格も自動的に下がります。改良品が出てくれば、今までのものは型落ちになりますから、また値引きされ、それが天井からの札に反映されて、というループが発生することになります。
 ただし実際には、そう簡単にループにはなりません。改良品を出せば出すほど自分の首が締まるのですから、メーカーにとってバカバカし過ぎます。当然のこととして、他の国では改良品を出していたとしても、日本では改良品を出さなくなるからです。
 このループを脱し天井から下げる札を新しく作ってもらいたいという場合には、新たな区分設定を求めるC申請をすることになるわけですが、そこに日本医師会の疑義解釈委員会というブラックボックス的組織が立ちはだかっているのは前々回まで説明した通りです。これが「機能区分制」の問題です。
 ただでさえ、日本で使える医療機器のアイテム数は欧米の半分しかないというのに、そのアイテム自体が型落ち品ばかりになってもおかしくない状況なのです。

なぜ製品別でない?

 こんなことになった原因は、荻野会長も指摘するように、かなりハッキリしています。製品ごとに償還価格が付かず、機能区分ごとに付いているからです。そして、C申請が認められるまでの道のりが不透明だからでもあります。
 機能区分別収載になっている理由は、当欄10年8月号で、厚生労働省保険局医療課の佐久間敦・課長補佐(当時)が「医療材料の場合、医薬品に比べて、品目あたりの販売数量等が少なく市場規模が小さいことなどから、価格競争が働きにくい」ためと説明していました。
 保険の費用を社会全体で負担していることを考えると、たしかに少しでも安価に使えた方がよいでしょう。しかし物事には限度があります。もしも制度の行き過ぎで型落ち品ばかり使わされるようになっているのだとしたら、本末転倒ではないでしょうか。しかも薬事法の規制があって、海外でどのような機器が使われているか、メーカーが知らせてはいけないことになっているため、国民は状況をほとんど知りません。状況をきちんと把握したうえで、社会全体の総意として型落ち品で構わないと決めたならともかく、業界内の一握りの人間だけで決めてよいことではないはずです。
 三つ目の海外価格参照制度の問題点まで一気に解説してしまう前に、このコーナーで説明してきたような制度が、実は消滅する可能性のあることだけ、お知らせしておきます。
 菅内閣が推進しているTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)では「2015年までに農産物、工業製品、サービスなど、すべての商品について、例外なしに関税その他の貿易障壁を撤廃する」ことになります。「サービスなど」の中には医療も含まれています。欧米の企業から継続的に非難されている日本独特の制度は当然撤廃の対象になります。
 国民のために制度が見直されるのではなく、外圧で撤廃されるというのは極めて不健全です。厚労省やそれに同調してきた医療関係者は、現在の制度が国民のためになっていると信じるのであれば、TPPに対しても抵抗しないと筋が通りません。

67d.JPGRゾーンによる
 価格調整

 各機能の機器の国内市場での実際の平均販売価格を元に、「市場実勢価格加重平均値一定幅方式(Rゾーン)」で、2年ごとに償還価格の調整を行っています。旧製品の値引き販売が、改良品の償還価格まで引きずり落とすことになります。

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