文字の大きさ

過去記事検索

情報はすべてロハス・メディカル本誌発行時点のものを掲載しております。
特に監修者の肩書などは、変わっている可能性があります。

がん② きほんのき(下)

がんの「きほんのき」、後半の今回は、実際にがんを疑った場合や、がんと診断された場合に役立つ実践編です。
監修/中川健 癌研有明病院院長

 例えばもしあなたが、「どうもここ最近ずっと調子が悪い。がんじゃないか」と、医療機関を受診したとします。しかし初めて行ったその日に、「がんです。さあ治療を始めましょう」となることはありません。まずは数日から数週間かけて検査を行うことになります。
 なぜそんなにも検査が必要になるのでしょう。
 「さっさと治療してくれ」と言いたくなるかもしれませんが、まずは「がん」かどうかを決める確定診断を得ることが大切です。さらに進行度を判断する検査や、手術など体への負担が大きい治療になるなら体力検査も必要です。一口に「がん」といっても、年齢・体質や発生部位、進行度によって性質は千差万別、最適な治療法も違うからです。
 そして、がん治療はどれも、いったん始めたら途中で治療前の状態に戻して他の方法でやり直すことはできない一発勝負なのです。さらに、体にダメージを与えたり(「侵襲」と言います)、生活に制約を与えることも多いものです。
 ですからがんを全滅させる「完治」が望める時は、きっちりやっつけて少しでも再発リスクを低くすべきである一方、全滅が望めない時にはがんと共存してゆく治療を選択すべきです。もちろん、どんな状況でも治療が軽く済むに越したことはありません。
 なお、自覚症状が出てがんが見つかった場合、たいてい既にステージ後期で、現実に治癒率も下がりますから、治療方針が決まったら開始が早いほうがよいのは確かです。ただ実は、一刻を争うほど進行の早いがんはごくわずか。もし「治療を直ちに始めるべき」という場合には、担当医がそう判断して早めに治療の手続きをするなど、適切な対応を取りますのでご安心を。
 以上のような理由から、治療すべきか否か、治療方針を立てるためにも、しっかり検査して病状を把握するのです。その上で治療のメリットとデメリットとを天秤にかけるわけです。

最適治療には検査が重要

 まず心にとめておいていただきたいのが、検査には限界があり、すべて事前に分かるものではないということ。それでも少しでも精度を上げられるように注意事項を守ることはもちろん、治療法を決定することを念頭において、何を調べているのかを理解することも大切です。不明な点は医師や看護師などにどんどん質問していきましょう。
 検査は大まかに分けて、肉眼で見える大きさのものを見つける検査法と、肉眼では見えないものを数値で推測する検査法とがあります。
 目で見るものとして最も広く普及しているのが、単純X線検査です。ご存知「レントゲン」ですね。他にもCT検査、MRI検査、PET検査、RI(ラジオアイソトープ)検査、超音波検査、内視鏡検査などがあります(表参照)。しかし、全身の臓器すべてを目で見て確かめるのは時間や費用の点からも現実的でないため、がんが疑われる部位と転移しやすい部位に留めるのが普通です。
68-1.1.JPG
 一方、数値で推測する検査は、主として血液の中に放出された「腫瘍マーカー」というものの量を見ます。腫瘍マーカーは、がんに関連して血液中に増加してくる目印(抗原と言います)の総称です。ただし、がんでなくても、体質によってはもともと異常値が出る人もいて、目で見る検査等なしに、がんであると決めつけることはできません。残念ながら特殊なもの以外、早期がんの発見には適しておらず、また本当にがんであっても異常値を示さない場合も多いのが実情です。治療前に値が高かった人が治療後に下降した場合には、その後の再発転移の兆候を捉える目的に使えます。また再発の時に異常値になっていれば、先々、治療の効果を測定する簡易的な方法として用いられます。

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
  • 「認知症 それがどうした!」電子書籍で一部無料公開中
サイト内検索
掲載号別アーカイブ