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がん③ 緩和ケア、なぜ大切なのか

69-1-1.JPG がんはつらく苦しいもの、そのようなイメージをお持ちではないですか? たしかにがんの増大や転移、さらにがんに対する治療は、多かれ少なかれ苦痛を伴うことが否めません。しかし、がん医療はこの数年で患者さんの身体と心に優しい医療へと変貌しつつあります。その中心を担っている柱の一つが、我が国で急速に普及しつつある緩和ケアなのです。
監修/向山雄人 がん研有明病院緩和ケア科部長

 まず、がんの緩和ケアが、なぜ大切なのか、答えを言いましょう。適正な緩和ケアを早くから受けることで、がんが再発・転移しても苦痛少なく長生きできるからです。
 WHO(世界保健機関)は、緩和ケアを「生命を脅かすがんなどの病に直面している患者と家族が抱えている身体的、精神的、社会的、スピリチュアルな苦痛を早期に診断し、適正に対応・治療することで、QOL(生活の質)を向上させる医療」と定義しています。
 身近な感染症や軽いケガであれば、しばらく我慢して治療を受けていれば、短期間で健康な身体に戻れます。これに対してがんが転移・再発した場合は、決して楽でない道のりが続くことを覚悟しておかなければなりません。がんが転移・再発した場合、人生の仕上げの時期が思いのほか早く訪れるか、長くがんと共生できるか、それは人それぞれです。
 いずれにしても、がんに伴う心や身体の苦しさを我慢して日々過ごすより、がんと共生しつつ、可能な限り苦痛なく日常生活を過ごすことに異議のある方はいないと思います。
 なお緩和ケアを担当する診療科名には、緩和ケア科、緩和医療科、緩和治療科、ホスピスケア科など、様々な名称がありますが、本質は同じなので、本稿では、緩和ケアで統一したいと思います。

早期から

 WHOは、1990年の時点では緩和ケアを「がん治療が効かなくなった患者に対する全人的なケア」と定義していましたが、その後、2002年の声明で、「がん治療の早期から開始すべき積極的な医療」と、がん治療の中心的存在へ位置づけを転換しています。転移・再発と診断された時点から、抗がん剤治療などと同時に開始すべき医療が緩和ケアなのです。
 世界のがん医療をリードしている、米国臨床腫瘍学会(ASCO)も1998年に「がん治療医は、単にがんだけを見た抗腫瘍治療に囚われるのではなく、がんに罹患した患者に対しては早期から最期まで継続した緩和医療・ケアを行うべきである」との声明を出しています。
 我が国でも、「がん対策基本法」で、がん治療における早期からの緩和ケアの介入と、がん診療に携わるすべての医師が緩和ケアの概念を理解し、緩和ケア研修会を受講して一定レベルの緩和ケア診療技術を習得することが義務づけられました。現在、全国で多くの医師が研修会を受講しており、数年後には、がんのステージや治療の場を問わず、早期から、いつでも、どこでも、切れ目なく、一定レベルの緩和ケアが受けられる国になると期待されています。

早期から始めると延命効果  これまでも、緩和ケアが心や身体の苦痛を改善しQOLを向上させることは各国の研究結果で明らかにされてきましたが、昨年、世界で最も質が高い医学誌のニューイングランドジャーナル・オブ・メディスン(2010.8.19号)で、抗がん剤治療に早期から緩和ケアを併用することで有意な延命効果が得られると証明され、緩和ケアの持つ力が一層の注目を浴びています(詳しくは、こちらをご覧ください)。
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