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研修医が見た米国医療15

なぜそんなに高い 米国での入院費用

反田篤志 そりた・あつし●医師。07年、東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を終え、09年7月から米国ニューヨークの病院で内科研修。

 米国での入院費用は、他の国に比べて高いと言われています。盲腸手術での平均的な入院費用は、保険がきく場合で米国では1万3千ドルほど、日本では30万円ほどです。現在の円高の為替レートで計算しても、米国は日本に比べ3倍以上値段が高いです。
 なぜ米国での入院費用はそんなに高いのでしょうか? これには極めて複雑な問題が絡まりあっているので、実は単純な解答はありません。しかしながら、日本と比べていくつか明らかな相違点があります。
 まず、病院側のコストの違いです。米国の病院には日本と比べて多くの職種があり、働いている人数も多いです。病床数に対する全職員数は日本の4~5倍、看護師の数は3~4倍です。看護助手、医療秘書、ソーシャルワーカーの数も桁違いです。人手を多くかけているので、当然コストは高くなります。
 もう一つ病院のコストを押し上げている要因は、事務経費です。米国で病院の支出に占める事務経費の割合は最低でも25%に上ると言われています。これも単純には説明できませんが、複雑な保険システムに伴う煩雑な書類作業、様々な民間保険会社との交渉など、国による一律の保険制度を持つ日本ではあまり必要でないコストがかかっています。
 二つ目に挙げられるのは、請求書の発行主体の違いです。日本で入院した場合、患者さんが受け取る請求書は病院が発行するものだけです。しかし、米国では病院からの請求書に加え、医師からの請求書が個別に届きます。入院中の主治医からはもちろん、主治医から相談された各専門医など、入院加療に関わったあらゆる医師から請求書が発行されるのです。これは、日本では病院の収入から医師の給料が支払われる一方、米国では医師が直接患者さんに診療報酬を請求する仕組みになっているためです。医師の給料は日本と比べて米国の方が明らかに高く、そのコストは入院費に反映されています。
 人手の多さによって、事務作業が速く進むため、入院期間は短縮します。多くの人が治療に関わるので、濃密なケアを提供しているとは言えそうですが、それが必ずしも良い医療につながっているとは思えません。というのも、多くの人がケアの一端を担うことで、より多くのコミュニケーションと役割分担が必要になり、そのコーディネートがうまくいかない場合、ケアが断片化し、物事がスムーズにいかなくなるからです。
 例えば、担当の看護師さんに水をもらうようにお願いしても、それは看護助手の仕事だと断られ、担当の看護助手さんが休憩から戻ってくるまで待たねばならず、コップ一杯の水をもらうのに30分かかる、なんて嘘みたいな話が実際に起こります。このような事例が色々な場面で生じ、多くの無駄が生じるわけです。コスト高がそれに見合った質の高い医療に反映されているわけではない、これは米国医療の大きな問題点の一つと言えます。

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