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がん⑧ 放射線治療なぜ効くのか

74-1-1.JPG 「がんといえば手術」、そんな固定観念を覆す治療法として、前回までに広い意味での抗がん剤をご紹介してきました。しかし、忘れてはならない3大治療のもう一本の柱が、放射線治療です。
監修/小口正彦 がん研有明病院放射線治療科部長

 放射線で治療をする――そう聞いて、どことなく違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。特に先の震災以降、「放射線」は〝恐ろしいもの〟というマイナスイメージも先行しがち。放射線治療にまで漠然と不安を抱いてしまう方もいらっしゃるようです。
 しかし、そんな今だからこそ、放射線治療について正しく理解しておきたいもの。このところの放射線治療の技術革新には目覚ましいものがあります。治療効果が飛躍的に向上し、これまでは手術で切除しないと治癒は不可能と考えられていたがんでさえ、根治も可能となってきています。副作用もより軽減されてきました。こうした恩恵は、できるものならきちんと享受したいですよね。
 そこでまず、根本的なギモン。放射線とは何者で、どう治療に使うのでしょう?
 端的に言ってしまえば、放射線とは「電離能力を持つ電磁波と粒子線の総称」。粒子線については後ほどご説明するとして、とりあえず従来の放射線治療で主に使われてきた「電離能力を持つ電磁波」についてお話しします。放射線治療の主役であるX線も、この電離能力がある電磁波の一種です。
 電磁波とは「電気と磁気の両方の性質を持った波」。その実体は、質量がゼロの「光子」と呼ばれる粒子が、波を描いて空間を進んでいくもの(光子線)です。
 この波頭と波頭の間の距離を「波長」と呼びます。波長の長いのが様々な「光」や「電波」です。電磁波と聞くと難しそうですが、かなり身近なもの。必ずしも人体を直ちに害するものではないんですね。ただしガンマ線とX線はエネルギーが大きく、物質を構成する原子の中を通過したり、当たった原子を壊れやすくする能力を持っています。原子や分子が持っている電子を叩き出す「電離能力」があるためです。

どうして治療できる?

74-1.1.JPG では、これらをがん細胞に当てたら(「照射」と言います)どうなるでしょうか。まず細胞に含まれる水分子などから電子が電離します。その電子は居場所を求めて無理やりDNAのどこかに入り込もうとします(直接作用)。また、水分子を構成していた原資も電子を失って不安定な状態になり、DNAから電子を奪って安定しようとします(間接作用)。その結果、DNAやその配列が原子・分子レベルで切断、破壊され、正常な複製・増殖が妨げられるはずです。ただ、影響を受けるのはがん細胞だけでは済みません。放射線が通り抜けていくすべての正常細胞に影響は及びます。
 それでも、がん細胞は細胞分裂を際限なく行っているために、正常細胞より放射線の影響も受けやすいと考えられます。DANは通常、2本の鎖がはしご状にペアになってらせんを描いていますが、それが細胞分裂時にはほどけて1本鎖になります。1本鎖だとダメージを受けやすく、修復の能力も低いのです。がん細胞は、常にそうした不安定な状態にあります。つまり、正常細胞よりも放射線による影響が大きく、受けたダメージを修復しにくい傾向がある、ということです。
、この時、照射するエネルギーを強めれば、当たった範囲のがん細胞を壊すことができます。しかし、本末転倒にならないためには、放射線が患部に到達する時に通り過ぎることになる正常細胞への影響も考慮しなければなりません。伝統的な放射線治療は、適切な量を何回にも分けて照射する(分割照射)ことで、正常細胞がダメージから回復するのを待ちつつ、がん細胞を壊すことで成り立ってきました。もともと放射線は、細胞一つひとつを狙うこともできるほど細いビーム(粒子の流れ)です。あとは照射の方法、精度、放射線の種類や発生のさせ方(線源)如何というわけですが、技術開発は容易なことではありません。
 治療用X線装置のリニアックでは、高圧の電磁場で電子を加速させ、それを金属にぶつけた衝撃でX線を生み出しています。スイッチ一つでX線の発生を制御でき、広く普及しています。
 ガンマ線については、後ほどご紹介します。

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