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研修医が見た米国医療23

マスクを嫌う米国人 花粉症でもしない

反田篤志 そりた・あつし●医師。07年、東京大学医学部卒業。沖縄県立中部病院での初期研修を終え、09年7月から米国ニューヨークの病院で内科研修。

 ニューヨークはすっかり春の陽気です。冬の間はどうも暗い感じがするマンハッタンですが、動物や草木が春の訪れを祝うのと時を同じくして、暖かい週末には「どこにこんな人がいたのか?」と思うくらい、ユニオンスクエアには人が溢れかえっています。週末のみならず、平日の昼でも「この人たちは一体何をしているの? 仕事はないのか?」と思うほど、たくさんの人が日光浴をしています。
 外で日光浴をする人を見かける時期になると、外来では花粉症の症状を訴える人が増えてきます。マンハッタンにはスギ花粉はあまり多くないようですが、カバ、オーク、カエデなどの花粉が飛び交っています。ニューヨーカーにも症状がひどい人はいますが、日本のようにマスクをしている人を全く見かけません。薬局などでマスクを売っているのすら見たことがありません。むしろ米国人には、通勤などでマスクをしている日本人の映像がひどく奇妙に映るそうです。まるでバイオテロでもあったかのように見えると......その感覚も分からないではありませんが。
 外を歩いたら花粉を避けることはできませんから、マスクをしない米国人は他の方法で症状を緩和するしかありません。抗ヒスタミン薬やステロイドの点鼻薬をよく使いますが、最近はいわゆる「鼻うがい」も有効な治療法として推奨することが多いです。ネティポットと呼ばれる急須のような容器を使い、生理食塩水を鼻の中に流し込むのが一般的なやり方です。日本でよく見かける「片方の鼻を押さえて吸い込む」というやり方はあまり推奨していません。細菌の混入を避けるため、生理食塩水は薬局で買える無菌のもの、もしくは煮沸した水に塩を混ぜたものを使用します。
 もう一つ米国でとても人気のある治療法が、アレルギー減感作療法です。英語ではAllergy Shot(アラジーショット)と呼ばれます。アレルギーの原因となる特定の物質(花粉症の場合はスギ花粉など)を薄めたものを皮下に注射し、徐々にその濃度を高めていきます。頻回の通院と長期にわたる治療がデメリットですが、アレルゲンに対する感受性を変えることで症状の緩和が期待できます。最近は注射の代わりに舌下投与や内服投与の治療法もあるようですが、米国ではまだ承認されていません。
 減感作療法を受けるにはアレルギー科の専門の先生にかかる必要があり、そのためには一般外来から紹介状をもらう必要があります。そのため内科外来には多くの人が「アレルギー科に行きたいので、紹介状をください」とやってきますが、「それよりもマスクをしてみては?」と聞いてみると、「そんなの嫌です」と言われてしまいます。米国人にとって、顔を隠して外を歩くのはどうも格好悪いらしいです。鼻が高いからマスクがフィットしないのか、それとも単に好みの問題なのか分かりませんが、アレルギー科に通うよりは楽でないかしら、と思うこともしばしばです。

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