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がん低侵襲治療② 肺がん


傷口を小さくする

82-2.4.JPG 低侵襲治療には、切除範囲を狭める縮小手術だけでなく、病巣に至るまでの切り口(傷口)をできる限り小さく抑えようというアプローチもあります。胸腔鏡手術です。
 胸腔鏡は、先端に小型の映像カメラのついた棒状の医療機器です。具体的には、胸の数カ所に2cmほどの穴を開け、肋骨と肋骨の間から胸腔鏡、自動縫合機(手術部位を切ると同時に自動的に縫いあわせる大きなホチキスのような器具)、鉗子(組織を引っ張ったり持ち上げたりする器具)などを差し入れて、モニターを見ながら手術を行います。
 胸腔鏡手術は、自動縫合機が発明されてから急速に発展してきたそうです。とはいえ、目で見て直接臓器に触れる開胸手術とはまったく異なる技術が必要ですし、術者の腕に依存する部分が大きいとも言えます。
 また、胸腔鏡を使った手術の利点は、あくまで傷口を小さくできることで、肺をどれだけ切除するかは別問題です。奥村部長も、「がん研有明病院では、肺がん標準治療の4割ほどが胸腔鏡下で行われています。術後早期は、開胸手術に比べて傷の痛みが少なく、また肺機能の低下も少なくて済みます。しかしながら、胸腔鏡手術のための数カ所の傷口が合計10cm以上になるのと、開胸1カ所を6cmの小さな傷口で済ませた場合と、どちらが低侵襲か。意見が分かれるところだと思います」と説明します。

がんの大きさでは決まらない

 がん研有明病院では、1人の医師ではなく、関連する分野の医師が多く集まって検査データを検討し、術式を決定します。
「がん研では現在、胸腔鏡手術の適応は、『1期で3cm以下、非充実性※の腫瘍』としていますが、これだけで一律に決まるわけではありません」。がんの進行、性質、部位、広がり等を見た上で、標準治療と縮小手術、開胸手術と胸腔鏡手術、それぞれのメリットとデメリットを考慮して最終判断されることになります。
「例えば薄くふわふわと広がっているがんの場合、胸腔鏡の適応ではあっても、あえて開胸したほうが確実と考えることもあります」と奥村部長。また縮小手術にしても、「腫瘍が小さくても部位によっては肺葉切除と判断するケースもあり、逆に、腫瘍は大きくても区域切除で済む場合もあります」。なお、お年寄りや喫煙者では肺機能が低下しているなどの理由から、肺を少しでも多く残すため部分切除を選ばざるを得ない場合もあるそうです。
 いずれにしても、まずは局所再発の防止、その上で、患者にとって最も負担の少ない術式となるよう十分検討されている、というわけです。

※初期の肺がんはCT上で淡い雲のような、はけで掃いたような「すりガラス様陰影」をしていることが多く、進行するにつれて、「充実性」と呼ばれる、中身の詰まった固いがんになると考えられています。

縮小手術はなぜ標準治療にならない? 現在、区域切除や部分切除などは肺がんの国際的な標準治療としては認められていません。これは、米国での手術データをもとに、「肺葉切除と比べて局所再発率および予後が不良」と判断されたためです。しかし中には、進行度から判断して日本では行われないような部分切除例なども含まれていました。一方、検診体制の確立した日本では早期の小さな肺がんが多く発見され、縮小手術が行われています。成績も良好なのですが、まだ標準治療とするにはエビデンス(効果を証明する症例)の蓄積が足りません。そこで日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)という非営利研究組織が中心となり、多施設共同臨床試験を行っています。
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