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睡眠のリテラシー24

高橋正也 独立行政法人労働安全衛生研究所作業条件適応研究グループ上席研究員

 良い条件に恵まれると、我が国では特に頑健な人でなくとも80歳くらいまで生きられる可能性があります。私の両親はその年代にそろそろ近づいており、私は折り返し地点を過ぎた辺りです。

 幸せに年齢を重ねるにはやはり健康が一番です。無病息災が最も望ましいですが、なかなか難しいので、持病とうまくお付き合いしていくことになります。高血圧や糖尿病などはまさにそうかもしれません。

 年齢が上がるにつれて身体の働きはしだいに衰えていきます。それと同じように、頭の働きも鈍くなっていきます。とはいえ、今のコンピュータやハードディスクが数年しかもたないのをみると、およそ80年もの長い年月にわたって、頭の中でフリーズやクラッシュの起こらないことのほうが不思議に感じます。

 ただ、実際にそうしたトラブルが起きてしまうと、日常生活を送るのが大変になります。ご家族も一緒に苦労します。認知症と呼ばれる脳の病気にかかった場合は、特にそうなるでしょう。

 前回は、睡眠時間の変化(増減)に伴って、その後の死亡率や死因に違いが生じることをお伝えしました。今回はその続きとして、睡眠時間の変化とその後の頭の働きについて触れてみます。

 記憶や判断など頭の中で行われる処理に睡眠が重要な意味を持つことはよく知られています。ですが、睡眠時間の変化が頭の働きにどのような影響を及ぼすかは、ほとんど調べられてきませんでした。

 英国の公務員を対象にした研究では、ある期間に睡眠時間が変わった群と変わらなかった群(全体のほぼ半分)との間で脳の働きを比べました。脳の働きの良し悪しを知るために、記憶、判断、語彙、言語、情報処理、そして脳全体の能力について検査を行いました。

 睡眠が6~8時間から短くなった群(全体の20%)では、睡眠時間が変わらなかった群に比べて、判断、語彙、全体的な能力が低下しました。さらに、睡眠が7~8時間から長くなった群(同8%)でも、記憶を除いたすべての検査成績が低下しました。なお、睡眠が5~6時間から長くなった群は、睡眠時間が変わらなかった群とほとんど同じでした。

 以上より、睡眠が短くなると、その後に脳の調子は悪くなるようです。とすれば、睡眠はまさに脳を守ると言えるのではないでしょうか。

 これに対して、睡眠時間が充分な群でさらに睡眠が長くなると、その後に脳の働きは鈍くなることもうかがわれました。もちろん、長く眠ったから頭が悪くなったという単純な関係ではないはずです。両者の関係は詳しく調べていく必要がありますが、睡眠が必要以上に長くなるのは、しっかりと起きていることが難しくなっている状態を表しているのかもしれません。

 年をとっても頭の働きを保つにはどのような眠り方が望ましいか、超高齢化社会に向けて考えなければなりません。

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