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梅村聡が斬る③ 介護保険を廃止して 医療保険に一本化が理想

介護保険について、自己負担の増額や特養入所要件の厳格化など、利用者にとって厳しく聞こえる改革案がニュースになっていますが、私はこのような痛みを強いる改革で制度を延命させるより、原則的には医療保険に一本化すべきだと考えます。

 介護保険制度で、特別養護老人ホームへの入所を「要介護3」以上の人に限る案、「要支援」と判定された人をサービス対象から外して市町村に委ねる案などが、今開かれている臨時国会に提出されています。加えて、収入が一定以上の人が介護保険サービスを利用する時の自己負担額を1割から2割に引き上げる案が、来年の通常国会に提出されそうです。妥当な改革案なのか、検証してみましょう。

保険原則に立ち返れ

 まず特養入所要件の厳格化は、特養不足の現状を考えれば、いつか出る話だったでしょう。問題は、約42万人の待機者を抱える特養不足の方です。日本では核家族化が進んで夫婦共働き世帯も多く、いくら国や専門家が在宅介護を進めても、施設を必要とする人は大勢います。それなのに特養が増えないのは、介護保険が市町村単位に運営されているため、特養を多く作ることによる財政の圧迫を市町村が嫌がるからです。

 原因の一つは、介護保険で使える施設が特養と介護老人保健施設(老健)、有料老人ホームの3種類しかないことです。老健は在宅復帰が前提の施設なので、"終の棲家"として考えるなら特養か有料老人ホームです(グループホームは認知症の人が、療養病床は慢性疾患で長期療養の必要な人が主な対象なので除きます)。しかし、要介護5でもほぼ10万円以内の自己負担で収まる特養と(施設によって差あり)、入居金だけで数百~数千万円することもある有料老人ホームとでは、金額に差があり過ぎます。財政が厳しい中、経済的に余裕のある人には多く払ってもらうようにしないと制度を維持できません。特養と有料老人ホームの間ぐらいの利用料で、機能的には特養と変わらない新しい施設分類を作る必要があると思います。

 「要支援」を介護保険のサービス対象から外す話も、要支援のサービスが本当に利用者の健康度や幸福度を向上させているかチェックできていない現状では、仕方ないと思います。サービスを受けることによって介護予防できている人もいれば、逆に本人の能力を奪って要介護状態に近づけてしまっている場合もあるでしょう。「要支援」という判定を受けた人が、本当に買い物など日常生活の支援が必要なのか、そこまで見極められるケアマネジャーは少ないと思いますし、チェックする仕組みもありません。

 一方で、自己負担の増額に関しては、私は反対です。現在の案では収入が280万円か290万円以上の人が対象になりそうですが(2013年10月時点)、高齢者は入院など突然お金が必要になることもありますので、サービス利用を控える人が出てくるかもしれません。特にギリギリで2割負担になったような人は、その傾向が強いと思います。保険料を払っているのにサービスが使えないのでは、保険制度として破たんしています。余裕のある人に払ってもらうという考え方には賛同しますが、利用時の自己負担増額を今ここで採用すべきではないと思います。

介護は非営利で

 そもそも私は以前から介護保険制度そのものに疑問がありました。現場にいれば分かりますが、医療と介護は密接に関わっていて、そもそも切り分けられるものではありません。医療のみ、介護のみ必要な人というのはごくわずかでしょう。制度が別々になっているせいで、医療保険と介護保険の両方に訪問看護やリハビリがあって価格や利用上限が違ったりするなど、サービス提供側にも国民にとっても、非常に複雑で分かりにくい制度になっています。

 介護保険と医療保険は一本化されている方が、国民にとって分かりやすく、利用しやすいのではないでしょうか?

 介護保険制度創設の裏には、膨張し続ける医療費を抑制したいという国の思惑もありました。そして国は、医療保険で医療を、介護保険で介護を賄うよう機能分化を進めました。しかし、一方で現在、介護と医療の連携を強調していますから、矛盾していますよね?

 もちろん介護サービスが身近になったり、便利で安価なレンタル福祉用具が増えたりしたことなど、制度創設には多くのメリットはあったと思います。しかし国全体の介護給付費は、当初約3.6兆円だったのが今では約8.9兆円と倍以上です。

 なぜ、こんなことになったかと言えば、営利団体の参入が可能になった一方で、良質なサービスを提供しようとすると手間とお金がかかってあまり利益が出ず、手を抜いた方が儲かるような制度になっているからです。劣悪なサービスを大量に提供する事業者もありますし、サービス付き高齢者向け住宅に訪問診療をあっせんするビジネスが出てきたりもしました(ロハス・メディカル92号参照)。これに対して自治体からの指導監査によって事業者の不正請求などが発覚し、返還されるのは年間たった約2億円です。

 悪質なサービスを規制する仕組みもないまま営利団体の参入を認め、国の隠れた狙いだった社会保障費の抑制につながったのかも疑問です。

 また、ケアマネの作る「ケアプラン」が利用者の健康度や幸福度を向上させる内容になっているか、チェックする仕組みがありません。多くの国民は介護や介護保険制度の素人です。お任せ状態になる人が多いのは仕方なく、特定の事業者のサービスばかり勧めるケアマネが一部にいるように、当然モラルハザードが起こります。

 利用者の状態を見ながら、心身ともに状態を向上させていくことに責任を持つ人が必要だと思います。私は、何かあった時に免許はく奪や医業停止など処分を課される可能性のある医師が、患者の医療にも介護にも一定の責任を負うのがよいのではと考えています。もちろん医師は一層勉強する必要がありますし、外部からチェックする仕組みも要るでしょう。そのためにも医療保険と介護保険が一本化されていて、非営利前提になっている方が分かりやすいと思います。

 介護事業に関わる営利団体には、経済的に余裕のある人が保険外にプラスアルファで受ける介護サービスを競って充実させてもらえばよいと思います。

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