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食中毒の予防には熱湯消毒が一番早い~それって本当?

食中毒の危険性が高まる季節です。食べ物の見た目や臭いや味では、食中毒するかどうか判断できません。食中毒菌を食べ物に付けないよう、手や調理器具への衛生意識を高めましょう。
専任編集委員 堀米香奈子(米ミシガン大学環境学修士)
 細菌による食中毒の予防3原則は、原因菌を食品に「付けない」、付いてしまったら「増やさない」、そもそも増える前に「やっつける」です(2015年11月号「新・大人も知りたい保健理科」参照。ロハス・メディカルのサイトで読めます)。

 今回は、このうち「付けない」にポイントを絞ります。

調理器具を消毒

 代表的な原因菌である病原性大腸菌O-157やカンピロバクター、サルモネラなどは、元々は牛や豚、鶏などの腸内などに棲みついていたもの。それが、店頭に並ぶまでの加工段階で肉などに付着し、隙間に入り込んでしまいます。ですから、肉などは適切に取り扱わないと、調理器具や手などを介して別の食べ物に病原菌が付き、それが増えて食中毒を起こします。

 これを防ぐため、調理器具はこまめに消毒して清潔を保つ必要があります。どのようにすると良いでしょうか。

 東京都福祉保健局の実験では、例えば0-157の除菌に一番即効性が高いのは熱湯消毒でした(表)。煮沸はもちろん、まな板や布きんなら、熱湯をかけるだけで殺菌効果を得られます。薬剤では塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)の効き目が早く、酸素系漂白剤やアルコールだと、時間がかかったり効きにくかったりします。

 ノロウイルスの二次感染予防に使われることから、「塩素系漂白剤が強力」といったイメージが広まりましたが、煮沸・熱湯消毒や、日差しが強ければ日光による紫外線消毒など、昔ながらのやり方も捨てたものではなさそうです。

 また、まな板や包丁などは、できれば肉・魚用と野菜用を別に用意すると良いでしょう。

 日本大学環境資源科学部食品衛生学研究室の荻原博和教授は、「生肉を調理したまな板や包丁で生野菜サラダを作り、食中毒が発生することもよくあります。同じ道具を使うなら、先にサラダを作りましょう。まな板の傷の黒ずみはバイ菌ですから、木製よりも除菌しやすい樹脂製がお勧めです」とアドバイスします。

必要以上に触らない

 調理器具などを消毒したからといって油断はできません。黄色ブドウ球菌など、ヒトの皮膚に普通にいる原因菌もいます。荻原教授は「特に傷口や化膿部分に多くいるため、蓄膿症の人が鼻を触った手や、傷があって絆創膏を貼りっぱなしにしている指での調理は、食中毒リスクを高めます」と注意を促します。

 調理する人も食べる人も手を洗うのは常識ですが、原因菌を完全に落とすことは難しいですし、シンクや食器用スポンジなどは細菌が付着・増殖しやすく、何気なく触って再び付いてしまうこともあります。口に入る直前の段階の食品に素手で触れるのは最小限にとどめることが大切です。

 特に気をつけたいのがお弁当作り。すぐ食べず常温に置いておくことが多く、原因菌が付いてしまえば増えるリスクは高いからです。実際、黄色ブドウ球菌による食中毒の一番の原因食品は「おにぎり」です。おにぎりを入れるならラップの上から握り、おかずも含めて湿気が容器の中にこもらないよう、よく冷ましてから清潔な箸で詰めましょう。キャラ弁やデコ弁など創作を凝らした弁当は、たしかに子どもが喜んで食べてくれるかもしれませんが、こだわるあまり素手で食品に触れる回数が増えると、危ないですよ。

(コラム)冷蔵でも菌は増える
 食中毒の原因細菌の多くは室温(約20℃)で活発に増殖し始め、ヒトの体温程度で最も速く増えます。しかし、冷蔵庫の中でも細菌は生き続けるため、過信すると、食中毒のリスクを高めます。

 買ってきた肉や魚、卵などは、すぐに冷蔵庫にしまい、庫内の温度が上がらないよう開閉はできるだけ少なくします。まだ温かい料理を入れるのは論外として、詰め込み過ぎも庫内温度が上がる原因に。未開封の瓶詰め、乾麺、レトルト食品、砂糖・塩、たまねぎやじゃがいも、バナナなど、冷蔵の必要がないものまで入れないようにして、冷気が庫内の隅々まで行き渡るよう隙間を作ります。

 定期的に清掃して、庫内の清潔を保つことも重要です。「特に血液は細菌の大好物ですから、生の肉や魚からドリップ(汁)が漏れないようビニル袋で包むようにしましょう」と荻原教授。生卵は稀に殻にサルモネラ菌が付いているため、パックのまま奥の棚にしまいます。

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