周産期・救急懇談会1(3)

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年11月28日 09:47

ずいぶんと遅くなって申し訳ない。
ハイライト)()(
1回目の報告はこれで全部だ。


岡井
「医師不足の実質を分析していただいたが、その問題は別の検討会でもやっている。小児科の視点からはどうか」


田村
「小児科医でも、女性が増えてフルタイムで働けないのもあるが、小児救急や新生児科のハードワークのところで働く医師が減っている。一方で1500g未満の未熟児は右肩上がりで増えている。10年間でNICUの対象になる新生児は1.5倍になっている。しかしNICUで働く医師はむしろ減っている。産科も1人あたりのお産は横ばいであってもハイリスク分娩が増えている。そういう実態は、数だけ並べると見えてこない」


杉本
「これが事実だという意識で示したのではない。これに基づいて考えましょうということ。産婦人科医についても、実は産科医が減って、婦人科医は増えているのだろう。突っ込んだ議論の中で実態は見えてくるのだろう」


岡井
「実際の現場で周産期と救急の連携で問題があったような具体的事例があれば」


海野
「厚生労働省の周産期医療対策整備事業に関して。総合周産期母子医療センターが、母子救急の最後の砦であるように報道されているのだが、成り立ちの経緯はそういうものでは全くない。整備事業の主たる目的は、胎児と新生児の救急に対応できるだけのもので整備指針にも脳外科がなきゃいけないとは書いてない。産科、新生児、麻酔科の医師を置けばよくて、麻酔科は常勤である必要すらない。それで辛うじて施設基準をクリアしているような医療機関がかなりある。

当直医に関しても、マスコミが調査して2人いないところが多いというようなことを書いているけれど、墨東は別として、大多数の1人当直のところはそれで違反でない。平成8年にスタートした時には複数の当直が条件になっていた。ところが、それだと一般の医療機関では医師が足りなくて施設基準を満たせないという県が多かった。センターが一つもない県がかなりある一方で、でも現場からはセンターがほしいという声も強くて、平成15年4月21日付で厚生労働省の雇用均等・児童家庭局長から通知が出て、NICUが6床以下の場合はオンコールを置けば1人当直でよいことになった。決して悪いことではなくて、それならできるということで、各県の県立中央病院なんかがどんどんセンター化していった。一方で、センターで医師を一生懸命増やそうとしなくてもよくなって、医師不足の問題が放置されることになった。私がいた長野県では2人当直を置いていたのだけれど、通知が出てからは1人でいいんだからと言うことで、当直代が1人分しか出なくなった。私がオンコールに回ったので給料が激減したのだけれど、当直が2人いないと責められても、そういう決まりになっているのだから仕方ない。

もう一つ周産期救急情報システムも問題にされている。しかし整備指針には作れとは書いてあるが、どう運用しろとは書いてない。実際問題、高次医療機関が限られている地域では、端末を見るより電話した方が早いから作っても仕方ない。先ほど話のあった山形のようなやり方が常道だ。そういうところにもシステムだけはお金を使って作ってしまった。一方でNICUの絶対的不足は放置されてきた。今の時点でもNICUを増やすという方向は出されていないし、同様に後方ベッドの問題も明らかにならない。だから整備事業を見直してほしいと、産科婦人科学会では要望している」


池田
「一昨年の厚生労働省科学研究で全国の総合周産期母子センターにアンケートした。母体の脳血管系の救急について10のセンターが『対応できない』と回答した。『どのようにしたら』と質問したところ全ての施設の責任者が、自分のところに受け入れ体性をつくるのは非現実的であり近くの救急病院や大学病院と連携したいと答えた。大阪では昨年から連携会議をもっている。2つの科の間で言葉や考え方がおp持った以上に違ったが、しかしそういうズレは実際に会ってみないと埋まらない」


大野
「私は名古屋大の医局の出身で開業して5年になる。年に550分娩を扱っており、先月も同じような事例を経験した。何の問題もなかったのだが、突然痙攣が始まって、赤ちゃんは瀕死になったしお母さんも死ぬかもしれないと思った。近くの周産期母子医療センターに何とか転送を受けてもらった。幸い母子ともに今は何もなく元気になった。

開業医がセンターから搬送を何といって断られるか、産科スタッフ、満床、NICUが空いてない、脳外科がいない、人手が足りない。愛知県の調査は116分娩施設の100%から回答をもらった。
我々開業医は何か危ないことがあったらセンターが助けてくれると思って門を叩く。しかし愛知に11のセンターがあるが、脳出血あるいはそれが疑われるのは全く受けてもらえない。センターに脳外科がないからなんだけど、そんなこと開業医の側は知らない。断られると次に当たるような余裕はない。センターはERのようにまず受けて割り振りできるべき。周産期医療情報システムもあるが、ホームページを開いてログインしている余裕はない。しかもシステム上は丸であっても断られる。だから意味がない。未熟児センターがいっぱい、それでも受けてもらうのだが、受ける側の責任問題になる。院長裁量や部長裁量で受けてもらっている。今度、資料を出す」


岡井
「最初の成り立ちは胎児、未熟児中心、根本的に母体救急に対応するようにはなってない。ただ産科でも救える部分かなりあって、それは救ってきた。ただ、産科分野以外の合併症あって亡くなる、そういうものに対する対応の重要性上がってきたということなんだろう。池田先生、最近の傾向を調査されていると思うが」


池田
「2000年には78名のお母さんが亡くなって、10万分娩あたり6.3人、これを2010年には半減したいということで活動を始めて、2006年54名、4.8だったのが、昨年は39名、3.6と半減に近付いてきた。世界的に見てもナンバー5に入る。ただし母体死亡の実際の数を表しているかというと、分娩終了後に別の医師が死亡診断書を書いた場合は分からない。他の国の事例などから類推すると約35%増える。それでも先進国ではトップレベル。死因のほとんど脳血管疾患、心血管疾患、直接の死因の塞栓・中毒は下がっているのだが」


岡井
「情報の活用、質を高める一般の救急とネットワークがないというところがポイントになる」


田村
「墨東病院の件は非常にショックだ。我々、赤ちゃんを見てる立場からすると、総合周産期母子医療センターが9つもあってベッドにも恵まれて、そのような東京ですら受け入れ拒否でこんなことが起きた。埼玉は人口700万人でたった1ヵ所しかセンターがない。1200万人に9ヵ所あるのに。それでNICUが必要な人の3割が東京に送られていて、墨東は実によく受けてくれる病院。こんなことが起きて東京が敷居高くして他県から受け入れてもらえなくなったら、埼玉から見ると大変な破局。我々はセンターでありながら、大野先生には叱られるかもしれないが申し訳ないが転送依頼の59%を断っている。計算してみるとNICUが100床足りない。軽い患者さんは県外転送で、墨東とか広尾日赤は最後の頼みの綱でたいていは受けてくれていた。たまたま今回は悪者にされて、しかし埼玉県の赤ちゃん3割行く場所、今は情報を県の中で探しているがいつでも×、役に立たない。都の情報を我々が見ることができれば良いのだが、おそらく都は決して許してくれない。県には都と政策協定を結ぶように言ってきたのだができていない。センターには国の補助金が出ているのだから、舛添さんも石原さんとケンカせずに東京が受け入れてくれないとやっていけない、、、、国民の生命を守るために、、、、きちんと協議して他の県にもオープンにしてもらえるようにして」


岡井
「埼玉から受け入れてもらえなくなるのでないかという心配が示された。東京でもたしかにそうういう自分たちでいっぱいいっぱいという話になったが、しかしそんな度量の狭いことを言うなよとなっているので安心してほしい。ネットワークを広げられるかどうかについては見当が必要だろう。ただ満床であっても受け入れるというのはセカンドベストでしかない。ベストはベッドも医師も空いていることで、そうでないと最善の処置できない可能性はある。地域完結していればそうならざるを得ないのだろうが、本当にどちらがいいかは議論する必要がある。NICUの絶対量が足りないということはその通りだろう」


海野
「神奈川も埼玉と同じ。10%は東京にお願いしている。首都圏は1つの医療圏として考えないととても回らない、搬送手段についても広域のもの考えていただきたいとずっと言ってきた。このようなことは都道府県では動かない。国でやってくれないと」


藤村
「ウチは、この20年ぐらい断った例がない。別に無理をしているというのではなくて、現場に聞いてみると非常にスムーズにいっている。以前は探しまくってたころから電話を受けた所が情報システムを使って探している。センターの当直医がコーディネーターをしている。ネット使いながら、その情報を使いながら電話すると大抵は断られない。大阪はうまいこといっているのは、システムを柔らかく動かすことが大切で、システムの絵を描いてもダメ。大阪は30年やっていて、一回も新聞ネタになるようなことがない。『連携』という言葉が盛んに使われるのだが、その意味がよく分からん。我々は『相互援助』という言葉を使っている。助け合いという気持ちがないと動かない。地域に応じたソフト面、ローカルな面を出していくべきじゃないか」


嘉山
「この事件は根本的にはシステムエラーだ。なぜならばセンターの成り立ちが脳出血を診られるようになっていない。現場を把握していない人間、医学知識のない人間がシステム設計をしたとしか思えない。命にかかわる診療科全部がそろってなければ、受け入れられないものが出てくるのは当たり前。センターに全部そろえるのが無理ならば、現場に即したネットワークをシステムから支援する方策が必要。センターのありかたを再考しないと同じ問題が起きる。ウチでは全員受けている。救急で受ければ次に転送することもできる。都は通いの医師が多いから大変ではあるだろうが。救急のネットワークに生命に関連する科を全部入れなければダメだ。これを大臣に答申したい。脳外科を入れない限り受けられない」


岡井
「システムの構造上の問題だという指摘だが、かつてはもっと大きなポイントがあって、それに対応するために構築したシステムが現状とズレてきているので頑張ろうということ。救急は全部含めたものじゃないといけないということだが365日24時間稼働するには、規模大きくないと無理。ベストは満床なんてあり得ないし、医師も余裕がある、そういうところが必要だろう。将来的な理想ではあるが」


嘉山
「センター化するには十分な人数が要る。今足りない所に無理やりセンター化したら回らなくなる。何も1つで完結しないでいいので、地域地域に応じた形でやるしかない」


川上
「うちの病院は近隣の大学まで30分かかるところで、年1000件の分娩を扱っている。システム構築も大切だし、必要な科そろってこそできることとは言うが、今回断った病院だって通常ならできること、たまたまこういうことが起きた。東京自体の発言は大きいが、100%救うような構築ができるのか疑問。NICUないけど運べないから仕方ないからということだが、たとえば分娩が重なったとか、脳外科が手術中とか、麻酔科医が不在とかなら断らざるを得ない。都の端末でいくらOKが出ていても同時に2件目が起きたらどうなるのか、人を増やす、システム構築も必要だが、杉本先生のお話があったが使える人を増やす、活用するのがもっと早い。しかし、そういう人を増やすには、周産期や救急にお金をつけても病院全体でそこの部分にお金を回せる余裕ないと。病院には各科あって利益が上がれば配分できる」


杉本
「今回はフリーだからあれだけど、産科の問題は産科の中で自分たちで始末するというようなことをやっている限り不可能。全診療科でやらないと、そういう風にやっていこうとした時、役所も医学会もタテ割りが変わらないとできない。連携やってみても3件目をかけられない。交わって、大阪のは医師会も行政も入っている。ずっと30年ぐらいディスカッションしているから、産科の状況は何となく分かっている。どこでも地域医療協議会ができているだろうけれど全く機能していない。院長出てきても現場を知らないので表面的な話にしかならない。現場で働いている者が交われるような場が必要だ。要は、今のシステムの中で問題を考えるのでなくて、交わって苦労することがなかったのを交わってみるとお互いにディスカッション、もう少し広げてもそんなに難しいことじゃない。ただし救急は地域地域でずいぶん事情が違うので、大阪の方法をそのまま移植してもうまくいかないのかもしれない。山形には山形なりの方法があり、愛知県にもその地域なりの方法がある。共通の認識はあるにしても」


阿真
「救急医が不足していると報道されているが実際そこはどうなのか」


有賀
「指導医が今は3000人くらい」


杉本
「ただし誤解されるといけないが、救急医療は全診療科が全員参加しないとできない。年に2400万件ある救急搬送を3000人でできるわけない。その中で重症のものやERのようにその後の割り振り専門にやるような、そこは専門医が担うかもしれないが、救急全体は医師全体でやる」


有賀
「医療全体では役に立たないのと、臨床研修病院と救急指導医の数がトントン。つまり、各病院に1人ずつ辛うじてバラ撒けるくらい。そう思うと足らないかなと思う」


杉本
「圧倒的に足りないことは間違いない」


有賀
「着々と増えてはいるが、しかし一定の修練して試験をやってというのには5年かかる」


阿真
「救急救命士の役割は」


有賀
「別の国家資格で、医師の指導の下で医療行為を行ってもよいという職種。今回この件に関しては無関係。ただ人によっては、救急車の中で分娩してしまうこともあるので、全く無関係ではなかろうが」


岡井
「議論は尽きないところだが、またしても医師不足の問題に戻ってきてしまった。そのための対策は今年に医師を増やそうと厚労省が言ってくださった。大変大きな変化ではあるが、それが実効性を持つまでには、医師不足の中で少しでもいい体制が作れればと思う。私が考えたよりも話が広がってしまった。それだけ根の深い問題であるという現れだろう。次回は対策に話を持って行って、今回もウチはうまくいっているよという話が出たので、そういう事例の話を聞いてみたい。何かあるか」


有賀
「積み残しになるといけないから言っておく。資料3の2頁目、都道府県に対して出した通知の『周産期救急情報システム及び救急医療情報システムの運用状況を確認した上で、必要があれば適切に改善するよう検討を行うこと』という項目について。東京都と東京消防庁との関係であれば何となくイメージできるのだけれど、たしかに厚労省が50年代から都道府県ごとの救急医療情報システムは整備を進めているけれど、しかし全県の救急を一体に運用しているような所はない。基本が市町村消防だからだ。それと全県一体の周産期救急とどうやって連携するというのか。この通知をポンと投げて都道府県に考えろというのだが、どういうイメージで考えろといったつもりなのか。要は、50年代から大きなお金をつけたものが成り立ってなかったということなんだが、だからこの通知の趣旨がよく分からなかった。この件を何とかしようと思えば、厚生労働省だけでなく総務省とも連携しなけらばならないと思う」


岡井
「この問題についても次回議論したい」


田村
「周産期医療システムが悪いような感じになっているが、システム自体は画期的だった。妊産婦死亡が減って世界トップレベルになるのに貢献したし、妊婦さんの求める安全で優しいお産を提供するのにもつながった。そこで心臓や脳を診られないというのはたしかにあるだろうが、それはシステムで対応するよりも、むしろソフトで対応すべき問題と思っている。そのことを言っておかないと、現場で頑張っている仲間に申し訳ないので言っておく」


舛添
「幅広いご意見をいただいた。そのうえで私から4つぐらい疑問点があるので、宿題というか聞きたい。1つ目はセンターのあり方をどうするのか。当直に2人ということを義務付けるのか、厳しくするには金を、、、っていける方がいいのか。宮崎にはセンターがないのに、ない所の方がうまくいっている。だったら、センターない方がいいという結論になるのか、議論してほしい。2つ目は地方のネットワークの核になる協議会の問題、大阪の知恵と呼べるものがあるのかなとも思うのだが、行政との関係について。3つ目はNICUの在り方。墨東では15床のうち12床しか稼働してなかった。看護師がいないから動かない。ハコだけあっても動かない。亀田総合病院に行った時にも同じことを感じたのだが、新生児専門の小児科医をどうやったら増やせるのか。墨東が関東一円から受け入れているということも聞いた。ユニットを増やすには人が必要だ。来年から新木課長に努力してもらって医学部定員を700人増やした。700人なんか大したことないという声もあるが、これでも大変だった。看護師、新生児小児科医をどうしたら増やせるか、これも問題提起しておきたい。4つ目、ログインしている余裕がないという話があったが、改革推進室に経産省からも来ているのだが、iモードのような携帯使えるなら早いんじゃないか。探すシステムに社会全体の技術的な成果が生かされていないのでないか。素人から言うと、千葉へ行った時になぜこんなのデジタル化してないのかと思ったことがある。周辺技術を十分に活用してないんじゃないかと思う。以上4つのテーマについてご議論いただきたい。結論をいただいたならば、行政の方で予算をつけるなり政策として具体化するなりしたい」

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