接種間隔⇒撤廃へ動きそうです

投稿者: 堀米香奈子 | 投稿日時: 2012年10月13日 02:15

前回に引き続き、「欧州製薬団体連合会(EFPIA)ワクチン・メディアセミナー 2012欧州・日本における予防接種スケジュールとその課題」の報告。今回は、新潟大学大学院教授の齋藤昭彦氏の講義です。内容的には昨年のワクチンフォーラムと重なるところが大部分だったのですが、接種間隔撤廃へ動き始めていることが、ここ最近のニュースかもしれません。


齋藤氏の講演は、主に、日本小児科学会推奨の予防接種スケジュールと、日本の予防接種制度の話でした。同氏の昨年のワクチンフォーラムでの講演は何度かに分けてこのブログで報告していますので、重複部分はリンクを張ってあります。内容的には今も変わらず重要なものですので、是非改めてご確認ください。  


(予防接種スケジュール)

●2008年~2012年11月の4年間に、8つのワクチンが新たに国内導入。

●日本小児科学会の推奨スケジュール最新のものは、2012年8月5日版。IPVの導入をきっかけに改定された。

●もともと、2011年1月の「同時接種に対する考え方」に基づき、多くのワクチンを限られた乳幼児期に接種してもらうために作成された(初版は2011年6月発表)。

国の定める接種スケジュールとの主な違いは、Universal B型ワクチンの接種と、みずぼうそう(水痘)、おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンの2回接種を推奨している点。


(B型肝炎ワクチン)
以前のブログ【2011年ワクチンフォーラム報告③】もあわせてご覧ください。

●B型肝炎は母子感染は減少中。一方、残る3分の1は母子感染以外の感染ルートで、とくに父親からの感染が全体の24%を占める。

●感染者の体液(唾液、涙、汗、尿)からも感染しやすい。保育園の保育士から子供や同僚に感染した例もある。

●海外と違い、日本では生後すぐ免疫グロブリン注射を行い、その後ようやく生後2ヶ月の段階でB型肝炎ワクチンを接種する。その間に、感染してしまうと考えられる。

●男性の急性B型肝炎患者数は25~30歳がピークだが、それがちょうど子供を持つ年齢と重なっていることも、感染源になりやすい理由のひとつ。

●日本は発生頻度の高い国々に囲まれ交流が進んでおり、しかも魚介類など生食文化がある点で、同じくB型肝炎ワクチンが国のスケジュールに入っていないヨーロッパとは、危険度が異なる。

⇒一刻も早く、全ての子供を対照とした定期接種化を!さらに、接種期間を逃した子供も10歳代で接種できるようにすべき。


(水ぼうそうワクチン)

同じく【2011年ワクチンフォーラム報告③】をご覧ください。


(おたふくかぜワクチン)

【2011年ワクチンフォーラム報告②】をご覧ください。


(任意接種と定期接種)

同じく【2011年ワクチンフォーラム報告③】をご覧ください。

⇒全て定期接種化することが、接種率を上げる一番の方法だが・・・。


(同時接種)

【2011年ワクチンフォーラム報告④】をご覧ください。


(筋肉注射と皮下注射)

【2011年ワクチンフォーラム報告⑤】もご覧ください。

●要するに、筋肉注射が痛いのでなく、痛いワクチンは、痛みを感じにくい筋肉注射にする、ということ。また、昔、筋肉注射から3600名の大腿四頭筋筋萎縮症の患者の報告があって以降、筋肉内注射は避けられるようになったが、これは予防接種でなく解熱剤や抗菌剤の連続投与の場合であって、予防接種との因果関係は一切認められていない、ということ。

●抗体のつきやすさは、皮下注射と同等かそれ以上であることもデータが示している。

●今後、新規ワクチンが開発され海外から入ってくるにあたり、筋肉注射をOKにしておかないと不都合が多く生じてくるだろう。


(接種間隔撤廃の動き)

●日米とも、同じワクチン同士の接種間隔はそれぞれ規定されている。

●日本では、不活化ワクチン→不活化ワクチンor生ワクチンの場合は6日以上、生ワクチン→不活化ワクチンor生ワクチンの場合は27日以上、間を空けることが予防接種法で規定されている。

●米国では、生ワクチン→生ワクチンのみ27日以上間を空けるとされている(ただし経口投与の場合は規定なし)だけで、あとは規定なし。

●日本小児科学会は、2012年9月21日、厚労省に接種間隔の規定を米同様に(ほとんど撤廃)するよう、意見書を提出。齋藤氏は「個人的には、いい方向に動くかもと考えている」とのこと。(接種部位と同じく、今後の新規ワクチン導入に向けた下地づくりのひとつ)

⇒齋藤氏は、子供にとってのワクチン接種を、車のチャイルドシートに例えます。「万一に備えるものだが、100%の期待は出来ない。しかし、技術向上とともに効果は上がっている。それに伴い、価格も徐々に上昇。それに応じてより安全性も高まるが、しかし使用に際するリスクはゼロではない。同時にすべての装備をして(同時期に全てのワクチンを接種して)、最大限の効果が確保される」という点が共通しているからです。


なお、齋藤氏は岡部氏と共著で以下の論文を発表したそうです。

Saitoh, A.; Okabe, N.
Current issues with the immunization program in Japan: Can we fill the ''vaccine gap''?
Vaccine, Volume 30, issue 32 (July 6, 2012), p. 4752-4756.
ISSN: 0264-410X DOI: 10.1016/j.vaccine.2012.04.026


以上が齋藤氏の今回の講演でした。


そういえば接種間隔の問題についても、このブログで以前書きました。要するに、なんのためにそんなに日数を空けるのか、ということです。真に子供のため、子供を安全に病気から守るため、という原点に返って今ある制度を見直していけば、なくすべきいらない規制は簡単に明らかになりそうなものです。遅ればせながら、その一歩が踏み出され始めた、という理解でよいでしょうか。


次回は、岡部信彦氏(川崎氏衛生研究所所長、前・国立感染症研究所感染症情報センター長)を座長としたパネルディスカッション・質疑応答を報告します。

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「欧州・日本における予防接種スケジュールとその課題」と題して行われたメディアセミナーの中から、演者とメディアとの質疑応答の模様をご紹介します。 続きを読む

コメント

貴誌9月号で出された予防接種同時接種への慎重論にコメントします(どうやってコメントして良いのか分からなかったのでここに投稿しました、すみません)。同じ内容は自分のブログにも出しています。http://georgebest1969.typepad.jp/blog/

北里大学北里生命科学研究所の中山哲夫氏が、ワクチンの同時接種に慎重な意見を表明しています。同時接種の安全性に吟味が十分ではない点、欧米で行なっていること「そのもの」を日本で行う根拠にしてはいけないという点はそのとおりで、氏の論考は傾聴に値するものだと思います。

http://medg.jp/mt/

 それを踏まえて若干の反論もありますので、ここで述べさせていただきます。
 氏は北里研究所でワクチンを開発・製造し、市販後調査を行い、インフルエンザワクチンなど2億もの販売を行なってきたが、死亡例は一例もなかったといいます。そして、それを根拠に有害事象が発生した同時接種に安全性の懸念を表明しています。
 しかし、私はむしろ逆に、これまで「一例もなかった」ことが不自然だと考えます。
 肺炎球菌ワクチン、ヒブの同時接種後に死亡例が出ていますが、その原因の一つに乳幼児突然死症候群(SIDS)や感染症の発症が考えられています。
 厚労省によると、SIDSの発症率は日本で出生4000あたり1人。日本では毎年100万人くらいの赤ちゃんが生まれていますから、ざっと考えると毎年250人くらいの発症になります(SIDSの発症は生後2ヶ月から6ヶ月に多いので、概算ですがそう外れた数字ではないと思います)。平成19年においては158人の赤ちゃんがSIDSで死亡していますから、その死亡率はかなり高いものです。2,3日に1人はSIDSで亡くなっている計算になります。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/sids.html

 予防接種に詳しい方には周知のことですが、ワクチン接種後の死亡報告は「ワクチンを打った後に死亡した」という意味で、「ワクチンを打った『から』死亡した」という意味ではありません。他の原因で死亡する可能性だってあるわけです。中山氏が外国のデータを引用して、「10万人に0.2〜0.5人」の死亡は決して少なくないと述べています。それが「ワクチンが原因で」死亡した場合はそうかもしれませんが、因果関係が明確でない有害事象のデータでは、この数字のみでワクチンの安全性をどうこう断ずることは困難です。
 さて、2億も予防接種を行い、その後の「有害事象」として死亡例が「ゼロ」というのはSIDSの発症を考えてもかなり不自然なことと私は考えます。SIDS以外の病気、例えば感染症のリスクなどを考えると、さらに不自然になります。
 私は感染症の専門家ですが、「院内感染が起きていない病院」「耐性菌が出ていない病院」というのは一番恐ろしい病院です。ハザード・ゼロとは、ハザードが本当に起きていないのではなく、きちんと報告されていない可能性が高いからです。犯罪ゼロの国が仮にあったら、そこはおそらく警察がきちんと仕事をしていないのです。2億もワクチンを打っていて有害事象たる死亡例がゼロというのはあまりに不自然です。調査が十分ではなかったと考えるのが普通です。
 アメリカの予防接種後の有害事象報告システムですら、underreporting、報告漏れの存在が指摘されています。

https://vaers.hhs.gov/data/index

 主治医が予防接種との関係性を想起しない場合、有害事象として報告がされない可能性は十分にあります。肺炎球菌、ヒブ共に(不幸なことに)日本では比較的新しいワクチンで、同時接種も新しい概念でした。有害事象報告に対するインセンティブは従来のワクチンに比べて高いのは当然です。
 また、今回の同時接種後の死亡例では基礎疾患があった方が3名いました。これまで日本では基礎疾患のある患者へのワクチン接種にはとても消極的でした。ワクチンの副作用のリスクを恐れたからですが、それは同時に感染症に弱い基礎疾患を持つ患者が感染症に苦しむことを看過する態度でもありました。このように、「副作用が起きなければ、感染症で苦しむのも仕方がない」態度のために、日本ではワクチンによる副作用は起きにくかったのです。それが全体としては、子どもの健康、幸せには寄与していなかった可能性が高いのですが。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r985200000167mx-img/2r985200000167oe.pdf

 同時接種について、これからもデータを集積していくことは私も大事だと思います。しかし、中山氏が述べる、「これまでの日本のワクチンは単独接種でよかったのに」という論拠は、上記の理由で弱く、説得力を欠くものなのです。

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