DPC? 調整係数? なんのこと?

投稿者: | 投稿日時: 2009年04月14日 14:02

昨日の「ニュース~医療の今がわかる」の記事は、「DPC、『調整係数』廃止で大混乱?」でした。しかし医療制度の超ビギナー的には、「私の頭がまず大混乱」となってしまったので、この記事をどうにか噛み砕いていきたいと思います。

まず、記事の冒頭でDPCとは「入院費の包括払い」とあるのですが、これを「自分が入院したら、費用は全部まとめて支払わなきゃいけない」と読んでしまった私のような方は、ぜひ、このブログの続きをお読みいただければと思います。

あるいは、「調整係数?なんのこと?廃止されて自分に何の関係があるんだ」と思われた方、そしてそれにお答えいただけそうな方も、ぜひ続きをどうぞ。

さて、DPCが何たるかですが、そういえば以前、ロハス・メディカル本誌でも特集が組まれていました。

それって誰が得するの? DPC
2007年07月号 (vol.22)掲載


これを読んでもなかなかに難しいのですが、要するにDPC(←そもそも和製英語)とは、「どんな医療が行われようが、ついた病名によって支払われる診療報酬が決ま」る制度で、適用されると医療機関に対し、「一般病床への入院(急性期入院)について、1日あたり定額払い」が行われるもの、ということです。ちなみに診療内容については、「何をどこまで提供するか決めるのは、医療機関側の裁量(もちろん患者へ説明のうえ)」とのこと。


というわけで、つまりDPCは「診療報酬」がらみの話。つまり、私たちが医療機関に支払うお金でなく、医療機関が保険診療分のお金を保険者(国や市町村その他)から受け取るのに関係することです。入院の費用の問題なので、とくに、急性期のベッドを多数有する病院にとって重大なことのようです。


なんのためにそんな制度が取り入れられたかは、同記事の2ページ目にありましたので、ぜひご参照ください。ひとことで言えば、医療費抑制を目論む厚労省が、「一人の患者さんに対する医療行為を極少にして早く治した方が医療機関にとって得になる、そんな制度にして競争原理を働かせようと狙っている」ということらしいです。


さて、最初のページにあるコラム「診療報酬は前年実績で決まる。」によれば、入院基本料、検査料、投薬料、薬剤料など患者によってあまり差が出なさそうな部分は定額だけれども、それでも医療機関が適用により不利益を被らないよう、各機関の前年実績を参考に微妙に異なる金額に診療報酬が設定されているのだそうです。

・・・おお!!これぞまさに昨日のニュース記事の「調整係数」の出番ではないでしょうか。おそらく各病院の前年実績を「調整係数」という何らかの数字に落として、それを診療報酬の計算に反映させているのでしょうね。(ちがいますか?)


しかしそれが2010年に廃止され、「新たな機能評価係数」が導入されると。これについて、病院側が不安に思うのはなんとなくわかります。これまでは自分たちの病院の前年度の実績が考慮されていたので、経営実態にそれなりに即した診療報酬が得られていたのでしょう。そうでなくなることへの懸念は当然でしょうね。こうした問題が昨日のニュース記事の2ページ目ではいろいろ議論されているようです(ちなみにDPCが何たるかも2ページ目に触れられていますので、超ビギナーはこちらから読んだほうがむしろわかりやすいかもしれません)。

しかも、記事にもあるように結局、「『調整係数の廃止』と『新たな機能評価係数』との関係は不透明なまま」らしいのです。ただ、そもそも調整係数が具体的にどのようなものかわからない私には、記事にあるやりとりを読んでいても、なんとなく議論が頭の中で上滑りしていってしまいます・・・。結局、何が一番問題なのでしょうか?


ということで、識者の方々の議論はさておき、こちらが気になるのは、「で、結局患者にとっては何がどう変わるのか」ということですよね。


その点、記事の中で見逃せない記述は、「機能評価係数の選定作業が進んでいるが、中小規模の病院が取りやすい「在宅医療」「重症度・看護必要度による改善率」「医師の日・当直体制」など10項目は、データの把握が困難との理由で既に"落選"している」というところ。


そういうデータ把握の難しい部分こそ、患者が一番医療の「質」を感じられる部分だと思うのですが、それが無視されていてよいのでしょうか?!

計算がどうのこうの、細かい分類がどうのこうの言っても、医療を受ける側にはあんまりよくわかりません。どれほど自分に関係があるか、むしろたいして興味が沸いてこないところだったりしませんか? 一方、在宅医療や、医師あるいは看護師の方々がどれくらい付いてくださるか、とか、そのあたりはすごく気になるもの。なのにそこがきちんと評価されないなら、状況がよくなるどころか、なおざりにされそうな気がします。


ちなみに昨日のニュース記事の3ページ目のタイトルは、委員の方の言葉を引用して「医療の質低下につながってはいけない」となっているのですが、何が「医療の質」なのか、国民の希望や期待と、果たして一致しているのか、そのへんが非常に怪しいと感じてしまいました。

というわけで、このままいったらどうなるのでしょうか?国民の知らないうちに、間接的にいろいろなことが国民の願いとは違う方向へ向かっていってしまわないか。けっこうマズい気がしてきました。大丈夫かしら・・・?


また、ニュース記事の最初と最後のほうに「包括評価点数」について触れられていましたが、これがまだよく飲み込めていません。評価係数を使って計算されたDPCの点数(⇒診療報酬)ということでしょうか? できたら、わかりやすく解説していただけないかなあと思います。

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コメント

実に本質の鋭いところを突いているような気がします。
言葉を換えると、関係者の誰もが指摘してほしくないことというか。
私の中では皆が後ろに様々な思惑を持ちつつ
言葉としてはこういうやりとりになっている「禅問答」という理解なんですが
公の場がそんなことでいいのかと言われると。。。
もっと明確に答えていただける方いらしたら、ぜひともご指導お願いします。

まずは建前から
現状の患者から見たいい医者というのは患者がのぞむ無駄な薬だとか点滴、検査
をやってくれるところということになってそういうところがはやったりします。
ただ、本来あるべき医療としてはすべきでないことまでしているんです。
それで、病気の状態に応じて、標準的な医療を行うようにさせようという目的
がDPCにはあります。ですから前年の実績値に基づく係数というのは本来あり
えないわけで、この病気でこの状態の患者だったらこの診療を行うのでこの
値段になるべきなんです。そのために、標準的な医療というものを統計で
さぐっていってるんです。その中には主観的なものや、データの信頼性のかける
ものがまざっているので、それらの10項目は今回外しましたということです。
医療の質が下がるかどうかは、この標準的な治療がどの程度の水準にされるのか
によります。

ただ実際の動きをみていると、金のない人間向けの最低限の治療に設定され
金持ち向けには将来解禁されるであろう混合診療での自由診療になっていま
うのかなと思ってます。

川口様
>禅問答

堀米くんが鋭いところを突いているというのには同感です。
が、あれを禅問答とおっしゃるとどうにも日本語として違和感がw
中曽根元首相じゃありませんが是非参禅経験を積まれることをお勧めしますw

>元レセプト屋さま

解説をありがとうございます。
建前の部分、前年度実績の考慮をしない理由については非常によくわかりました。
しかしやっぱり、外されてしまった10項目(在宅医療他)のことが気になって仕方ありません。

例えば在宅医療も、それこそお金持ちの人だけ享受できるような贅沢サービスになってしまって、一般の人の手に届かなくなったり、あるいは、数少ない気概ある先生がボランティアのようにして細々やっていらっしゃるような状況が目に浮かびます。

的確な最低限の検査と薬をあてがわれることだけが、国民にとって必要な最低限の医療ということになるんでしょうか。

>前々期高齢者様
メディアの業界用語をつい無自覚に使ってしまいました。
たしかに正しい禅問答とは違うようですね。
訂正しますと
表面に出ている言葉の意味とは別の意味のコミュニケーションが話者と聞き手との間に成立している
ダブルミーニング、トリプルミーニングの世界である、と書きたかった所です。

堀米さま>例えば在宅医療も、それこそお金持ちの人だけ享受できるような贅沢サービスになってしまって、一般の人の手に届かなくなったり、あるいは、数少ない気概ある先生がボランティアのようにして細々やっていらっしゃるような状況が目に浮かびます

在宅医療の場合ですと、診療所の医師(かかりつけ医)に担当させようというのが流れです。ですから現在DPCが導入されるような規模の病院の守備範囲外になります。とはいっても現状でも言われているような状況になっている先生が
多いんですけどね。

また、医師の日・当直体制のように現在の状態を元に診療費を決めれば、今話題の残業代問題によって破綻が見えているものもあります。

なので外れた10項目については下手に今のデータを元に決められずにすんで
よかったんではないかと。これらの項目については今後どのようなデータを集
めるのかといったところから国民の目で監視していく必要があります。

>元レセコン屋さま

ご指導ありがとうございます。

けっきょくのところ、在宅医療についてはもうしばらく善意の活動に頼るような状況が続きそうだ、というところなのですね。

また、10項目の件については、委員の方々は実際のところ破綻がわかっているから「把握が難しい」のをいいことに、外してしまったのかなあと思いました。

委員の先生方の間でも利害が一致していたり、それこそパンドラの箱の部分だったり、というところは手をつけずに、差し支えない範囲で細かい議論をそれぞれの思惑にしたがって繰り返しているような光景が目に浮かびました。

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